街へ
ギンズバーグの周囲は、高さ二十メートルほどの外壁で覆われ、唯一市外と接している正門も、関所と衛兵で固められている。以前は―ヴァネッサが生きていた時代には、その関はほとんど開け放されていたようなもので、その気風を目的として国内外から大勢の商人や客が集まっていた。その盛況さは先に述べたとおりである。
しかし、ヴァネッサ死後、その自由都市は実権を握ったギリアムにより大きく舵を切った。市長の暗殺を奇貨として、警備を厳重にするという名目のもと関所による他市からの流入を制限したのである。しかも、規制の対象になったのは、もっぱらダリアの国民だった。他国民であるはずのアイリス国民は、害なしとの判断により比較的簡単に街に入ることが出来たのである。
このような屈辱的な状況にも関わらず、ダリア国王は動こうとしなかった。強大なアイリス国軍の実力を恐れているのか、はたまた他の作戦があるのかはわからないが、とにかく国王は静観しているのみである。このような場面にあって、ありがたいのはじいさんがくれた通行手形だ。ただし、これがブルーのものでないと知られた時、その時が文字通り一巻の終わりである。




