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物語には親殺しが必要だ

「ま、わしが言うのもなんじゃと思うが、子は知らん間に育つもんで。こんなァも、そろそろ子離れ、いや、妹離れするのがええかもしれんの」


「こいつにまともな暮らしをさせてやれなかったのは、本当に悔やんでます。でも、仕方なかった。なにしろ、両親が死んだ時には、身寄りも金もコネもない状況でしたから。そんな中で、幼い兄妹が食っていくには、盗みしかなかったんですよ」


「言い訳せんでもわかっとるわい」ソルフェが言う。「おどれがこの娘ッ子を一番に思うとるのはな。それはアケミもよう知っとると思うで。いまこいつがガタガタ言うて噛み付いとるのはな、遅れてきた反抗期じゃ」


「反抗期……?」


「ほうよ。子供はな、おしなべて父親を乗り越えていくものなんで。ちょうどいい機会じゃないの。なに、嫁入り前の娘に怪我はさせんよ、多分な」


「あら、守ってあげるのはあたしの方だと思うけど」


「よう言うたな、大した女じゃ」


 くふふふふふ、と笑う二人を、しかし、ガーディンはまだ渋い顔で見ていた。

「わかった。好きにしろ。ただし、くれぐれも迷惑にならないように気をつけろ。それと……」ガーディンが真面目な顔で言う。「死ぬなよ」


「死なないよ。だって、こんなに強い女の子が二人も揃ってるんだから」アケミはソルフェと再び目を合わせる。ソルフェがニカッと笑った。

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