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たまには喧嘩でも
「何を考えてるんだ、お前は」ガーディンの怒髪は天を衝くようである。
「ソルフェの姉御はこう言ってくださってるけどな、食い扶持が一人増えるたけで、旅がどれだけ苦しいものになるのか知ってるのか。これまでの道中みたいに人手が必要な状況ならまだしも、ギンズバーグの中ならお前はいらないよ。姉御さえいればな」
「でも、喧嘩だよ?喧嘩するなら一人でも数が多いほうがいいって、兄ちゃんもよく言ってたじゃん。だからあたしたちの賊もあんなに大勢いたんでしょ」
「それはそうだが……」
「あと、食い扶持の話だけど、あたしも単に着いて行ってタダ飯を食べてるだけのつもりはないから。自分のことぐらい、自分でなんとかするよ」
「なんとか、って、お前一文無しじゃないか」
「働いて稼げばいいだけでしょ」
「まともに働いたこともないくせによく言うよ」
「それは兄さんも同じじゃないの」
「どっちでもええんじゃが、早う決めてくれんか。暑くてこたえんわい」一歩も譲らない二人に、ソルエフェは手で顔を仰ぎながら声をかけた。




