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雨霧よ今夜もありがとう

 ソルフェの言葉は、午後には現実となった。あれだけ晴れ渡り、一行をジリジリと照らしていた夏の陽光が、昼を過ぎるとほとんど同時に姿を隠した。じきに冷たい風が吹いて、凄まじい勢いで雨が振り始めた。あまりの激しさに、一同は大木の影に滑り込み、急場をしのぐことにした。


「まったくひどい。なんだか最近災難続きだな」ブルーは思わずぼやく。


「日頃の行いじゃろ」ソルフェが混ぜっ返した。二人のやり取りに微笑みながらも、ガーディンは気を張っている様子だった。


「どうしたんじゃ。そがァに警戒して。何ぞ気になることでもあるんか」


「いやね、この辺を縄張りにしてる、荒天を得意としてる奴らがいるんですわ。雨で視界と足元が悪い中、すべてをかっさらっていくような盗賊どもがね」


「フン、こすい人間どももいたもんじゃの」


「いや、実際あのやり口は見事ですよ。うちの賊も、何度かやられかけたことが――」


「ソルフェ!後ろ!」ブルーが叫んだ。


 ソルフェがとっさにかがんだ瞬間、白刃が雨を切り裂いた。アケミが短刀を投げるが、刺客はそれを悠々とかわし、雨飛沫の奥へ去っていった。

一同の緊張が一気に高まる。ブルーはザックの柄を左手でつかみ、右手で懐のナイフを握った。


「なるほど、こりゃ厄介じゃ」目元のしずくを拭いながらソルフェが言う。「寄ってくる音も聞こえんかったわい」


「我々が行ってきます。おい」ガーディンは傍らの3人に目配せした。


「大丈夫か」声をかけるソルフェに、アケミが頷く。


「うん。ここはあたしたちにまかせて」


「姉御は、ここを守っていてください。こういう状況には、たぶん我々の方が慣れています。行くぞ」


 4人は雨霧の向こうへ飛び出して行った。


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