たまには宴会でも
「それにしても、いやにあっさりついてきたな。白状も早かったし」ブルーが不思議そうに言った。
「まあ、そりゃあそうですよ。我々の稼業、ヤヌアールさんのようなスポンサーに背いたらおしまいですから。兄さんや姉御の襲撃に失敗した時点で、私はお先真っ暗だったんですよ。だからこうやって雇ってもらえて一安心です。むしろ、姉御のような女傑に守ってもらえて心強いというか」
「人をゴリラのように言うな、馬鹿たれ。だいたいまず、その姉御いうのをやめんかい」
「いや、でも他に呼びようもないというか…」
「確かになあ」相槌を打ったブルーを、ソルフェは肘でどついた。
道連れが六人に増えて、半日が経とうとしていた。途中に邪魔が入ったせいで、ほとんど先に進めなかった一行は、無理をせず宵のはじめに野営をすることにした。ガーディンは、思ったよりも気さくで、丁寧な男だった。ソルフェいわく、「無頼漢をまとめつつ、外部と交渉できるような人物はみんなこんなもの」だそうだ。
彼の部下、ブライアンとカルロスは対照的に、寡黙な男たちだった。ガーディンが土産として持ってきた酒の入ったグラスを傾けながらも、少し身体を揺らすだけで何も語ろうとしない。
賑やかなのは、ガーディンと、酒が入ってご機嫌なソルフェ、それからアケミだけだった。アケミは、快活な女の子だった。
「ソルフェちゃんはどこから来たの?」アケミは親しげに話かける。
「どこ言うてもなあ、あちこち旅してきたんで。それこそ北から南から、西へ東へのう。自分の故郷がどこかなぞ、覚えとりゃせんわい」
「それでも、木の股から生えてきたわけじゃないでしょ、お父さんお母さんは元気?」
ソルフェの顔に一瞬影が差したのを、ブルーは見逃さなかった。




