知り合いは多い方が楽しい
「ここです」棟梁が言う。おそらくは林の木を伐採して立てたであろうその家は、なかなかに立派なものであった。仲間の中に、建築に精通したものがいるのであろうか。家の周りには、目付きの悪いゴロツキどもがうろうろしていて、大変に雰囲気が悪い。棟梁は、そんななかをズイズイ進み、入り口にかけてある布を手で払うと、中に向かって叫んだ。
「アケミ!おい、アケミ!なんだ、まだ寝てるのか、いいから早くこっちに来い!」
アケミと呼ばれた女が、よろよろと入り口に現れた。
「なんだい、兄ちゃん。もう仕事は終わったの」
「いや、また新しい仕事だ。これから、この人達の旅についていくことになった。お前も来い」
「えーっ。…めんどくさいなあ。他の人じゃだめなの?」
「だめだ。早く支度してこい」
「まったくもう…」アケミはぶつぶつ言いながら家の奥に消えていった。
「すみません。あれ、私の妹なんです。幼い頃に両親を亡くしたもんで、甘やかしてたらいい加減に育っちまいまして。お恥ずかしい。でも、腕の方は保証しますよ」
「ほうか。……そういえば、こんなァの名をまだ聞いとらんかったの」
ソルフェが興味なさげに尋ねる。
「ああ、これはこれは、申し遅れまして。私、ガーディンと言います。チンケな盗賊一家の棟梁をしております。以後、お見知りおきを」ガーディンは慇懃に一礼した。




