馬の骨だって立派な骨
「一つだけ、いいか」
突然声を発したブルーに、棟梁が振り返った。「何か?」
「あんた達、誰に言われてここに来た?」
「また何を言い出すんじゃ」ソルフェが首を傾げた。
「いいから」とブルーは先を続ける。
「どこか不自然だと思ってたんだ。仲間の仇討ちでないことは、さっきあんたが自分で言ったよな。それに、『たまたま見かけて追いかけてきた』とは言わせないよ。自分の仲間を一瞬で二人殺った、得体の知れない手練なんだ。そうと知って、それでももう一度襲おうと思った、何か別の理由があるはずだ。それは一体なんだ?」
黙っている棟梁を急かすように、ブルーは言う。「相場で言えば、よっぽど金持ちに見えたか、或いはそれに見合う金を誰かに握らされたか、その辺だと思うけど、どうなんだよ」
棟梁は頭を掻いた。「いや、それは…」
「嘘をついてみろ、どんな目に合わされるかわからないぞ、こいつに」ソルフェの肩に手を置く。
「なんちゅう言い草じゃ」ソルフェはため息をついた。
「ハハハハ!」と、棟梁が突然笑い出した。
「凡骨かとおもったら、なかなかどうして。いやいや、いい目をお持ちですね。もういい、洗いざらい話してしまいましょう。我々はね、雇われたんですよ」ブルーの目を見据える。
「おたくの村の村長、ヤヌアールさんにね。あなたがたが大金と、ギンズバーグの通行証を持って旅をしているから、襲って荷物を盗って来てほしい、と言われましたよ。盗りおおせた暁には、金の方を私らにくれてやる、という話でした。ヤヌアールさんは、ときどきそうやって、似たような依頼をわれわれにくれる、いわばお得意さんでしてね。」
「村長に…?」ブルーは固まった。なぜ、村長が僕らがギンズバーグに向かうことを知っている?それに、通行手形のことまで…?しかも、お得意様?いったい、何が起こっている――
「何か様子が変じゃな」ソルフェも不穏な空気を感じ取ったようだった。




