旅は道連れ
「なんじゃ、その阿呆面は。心配するな、わしらがギンズバーグに着くまで、じゃ。どうもこのブルーいう男は、抜けとるところがあっての。いくらわしがついとる言うても、人手が足らん思うとったところじゃ。おどれみたいな者が何人かおれば、わしが寝とる間でも番ができるじゃろうが。なに、小遣いくらいはやるわい」ブルーは狼狽して、ソルフェに耳打ちした。
「おい、何考えてるんだよ、こいつら、僕達を襲いに来たんだぞ」
「何を考えとるはお前じゃ。これもみんなこんなァのためじゃないの。今日みたいなことが何遍もあってみい。わしの身のほうが持たんわい」ソルフェは肩をすくめる。
「それで、どうじゃ」彼女は棟梁に向き直って言った。
「いや、それは……。命を見逃してもらって、おまけに金まで貰えれば、私らは願ってもないことですが」
「ほんなら、決まりじゃの」
ブルーは渋々ながらも、ソルフェの決定に従わざるを得なかった。自らの不甲斐なさを指摘されてはぐうの音も出ない。
棟梁は頷いた。
「承知しました。そうとなれば、もうひとりを迎えに行ってきます」
「おう、そうせいや。わしらもついていくけん」
一行は住処に向かって歩き始めた。機嫌が良さそうなソルフェとは対照的に、ブルーは浮かない顔をしていた。ソルフェの、自分の意に沿わない言動に対してだけではない。先程の棟梁の弁明に、どこか違和感が拭えない。だが、それは何だ?
昨日と続けて、突然我々を襲ってきたならず者たち。いかに自分たちの縄張りとはいえ、こうも都合よく見つけられるものなのか?その執着にも関わらず、いやにいさぎのいい引き際も気にかかる。そして何より、ソルフェの言葉に、大きく抗いもせず従うその態度。この違和感の正体は――




