問:胴体と首が離れても生きていられるか
「えーと、話の途中じゃったな。なんじゃったかの……。あ、そうじゃそうじゃ。そこで、おどれがそこの坊主を殺したとして、その後どうなるか説明してやろう。まず、あと二歩も進めば、おどれはわしの射程に入る。わしの長くて重い刀は、簡単におどれの首筋に届くぞ。そうなったら、死んだブルーごと、首をちょん、じゃ。ちょん、じゃぞ。ちょん」ソルフェは左手で首をちょん、のジェスチャーをしながら何度も言う。ブルーは青くなった。
「それから、そこの木の上におる奴!」目も向けず、ソルフェは声を荒げる。
「弓はええ作戦じゃがのう、そがァな不安定な足場で、おまけに手が震えとって、命中する思うとるんか。下手打つと、おどれの主人に迷惑がかかるぞ。悪いことは言わん。そこでじっとしとれ」枝の上で、賊が身をすくめるのがわかった。
数秒、ソルフェと男のにらみ合いが続いた。ざあッ、と再び風が吹いた。
「参った!」突然、男はブルーの首筋にあてていた短刀を放り出し、その場にひざまずいた。突然の反応に、ブルーとソルフェは呆気に取られた。
「おい!何してる!お前らも早く武器を捨てろ!殺されてえのか!」
言われて、子分たちもばらばらとナイフや弓を捨て始めた。
「なんの冗談じゃ」ソルフェがうんざりといった様子で言う。
「冗談なんて、滅相もない!いや、本当に、すみませんでした!どうか命だけはお助けください!」
「…いや…、急にそんなこと言われても…」ソルフェは明らかに動揺している。
「その、リーダーの挟持とか、プライドとかは…ないのか?」
「ありません」きっぱりと彼が言う。「命あっての物種ですから」
「身にしみるよ」ブルーが首筋を押さえながら呟いた。
「兄さんにも悪いことをしました。申し訳ない。謝ります。…どうやらまだ納得しておられないようですね。いいですか、我々に、意地とか、盗賊の誇りとか、死んでいった奴らへの申し訳とか、そういうのは一切ありません。あなたのおっしゃったとおり、所詮烏合の集ですから。確かに集団を作って生活しているけど、元をたどれば宿無しの愚連隊ですわ。一人よりは人数が多いほうが追い剥ぎに成功するんで、ただそれだけの理由で集まっているだけ。私だって、今はこうやって頭を張ってますけど、いつ仲間から寝首をかかれるかわからないんですよ。忠実な部下数人を除けば信頼できる奴なんていません」と、少し声を落として言う。
「おおかた話はわかったわい」
「本当ですか、なら――」
「じゃが、おどれを許すか許さんかとは、別の話じゃ」ソルフェは、長刀を彼に突きつける。




