夏の午後は血の雨で顔を洗おう
ソルフェはしばらくクックッと笑っていたが「水を吸って、どうも重とうてかなわんわい」と呟き、ドレスの裾、太腿の半ばあたりを掴んで、なんのためらいもなく引きちぎった。ミニスカートのようになった足元を見て、「うん、動きやすくなった」と嬉しそうに言ったかと思うと、「小僧!」とブルーに向けて怒鳴った。
「ぼやッとすんな、馬鹿たれ!死んでも知らんぞ!あとな、そがァに大事そうに荷物を抱えとったら、そこにええモンが入っとるのがバレバレじゃ!ちったァ考えんかい!」
大声でみんなにバラさなくても……、と、必死に金や通行手形を守ろうとしていたブルーは血の気が引いた。
案の定その場にいた全員の目がブルーに注がれた。―ソルフェを除いて。
注意がブルーに向いている間、彼女は長刀を拾い上げると、近くにいた二人に数歩で詰め寄り、胸元を一閃。悲鳴を上げながら倒れる二人に、今度は全員の視線が向けられる。しかし、そこにソルフェの姿はもうない。
今度は林の中から刃を迫り合う音と、悲鳴とが次々に上がった。と思うと、木々の間からソルフェが飛び出してきた。
「まったくどいつもこいつも未熟者じゃな。あっちで声がしたらあっちを向き、こっちに宝があると言えばこっちを向き、キョロキョロキョロキョロ。自分で隙を作っとるようなもんじゃないの。所詮チンピラの集まりじゃのう。ましなのはおどれくらいのもんよ、なあ?」
彼女は、ブルーの背後にいる男に声をかける。ブルーは喉元に短刀を突きつけられて、身動きが取れなくなっていた。
「坊主、お前もなかなか男が上がらんのう」




