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不安定なよそ者

 ヤヌアール・ストーン――タルホ村の村長にしてエイプリルの父――は、もともとストーン家の人間ではなかった。西方から流れてきた浪人で、以前はダリア帝国の騎士であったらしい。そこそこの名家の出だったが、騎士という封建的な職に嫌気がさし、浪人として放浪の旅に出た。あちこちの村を渡り歩くうち、いつしか訪れたホソノ村で、エイプリルの母、ヴァイブラ・ストーンに出会い、恋に落ちた。


 傭兵として従軍した経験があったじいさんと、若きヤヌアールとはすぐに意気投合した。じきに祝言の準備が整えられ、一夜のどんちゃん騒ぎが始まった。そこでのじいさんの活躍といったらなかった。いわば余所者である娘婿のために、眉をひそめている人間を見つけては(しゃく)をし、時にはなだめ、時には()()()()、単なる旅人ではなく、自分の息子である、ということを皆に知らしめた。その姿勢は、宴が終わってからも、数ヶ月に渡って続けられた。


 じいさんの尽力のおかげで、ヤヌアールは比較的すんなりとタルホ村に受け入れられた。それは、もともとの彼のひとあたりのいい性格も手伝ってのことだろう。


 そのうち、まもなく、彼とヴァイブラは娘をもうける。エイプリルである。エイプリルを溺愛(できあい)したのは、父でも母でもなく、じいさんである。その際限のない愛情に、誰よりも鼻白んだ視線を送っていたのは、他ならぬヴァイブラであった。皮肉にも、少女を巡る二人の歪みが、確執(かくしつ)の種となっていく―


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