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デレろ!ソルフェージュ!
「クソ!あのタヌキジジイ!年寄りじゃと思うて油断した!こがァにコケにされたんはいつぶりじゃ!クソ!クソ!」じいさんの小屋を出るなり、ソルフェージュは刀をぶんぶん振り回しながら怒り狂った。
「うわ、危ない!やめろ、やめろって、ソルフェ!」
「……それじゃ」ソルフェージュが手を止める。
「なに?」
「さっきから、そのソルフェいうのはなんじゃ」
「いや、何って、愛称だよ。ソルフェージュって長くて、とっさに言い辛いだろ。だから縮めて、ソルフェ」
「ふん、ソルフェ、……ソルフェか、ふふふ」彼女は長刀をぶら下げたまま、にやにや笑い始めた。その姿があまりに不気味で、ブルーは絶句した。
「まあええ、もう疲れたわい。さ、ぼやぼやしとったら夜になる。早いとこ去ぬど」どうやら彼女の機嫌は治ったようだった。その理由はブルーにはわからない。
間もなくして、二人は村を出た。ブルーの心の裏側には、じいさんの言葉がこびりついていた。
――村長が、信用できない?何かを隠している?僕の目には、娘を失って悲しむ親の姿しか映らなかったが……




