久しぶりの再会くらいゆっくり楽しんだらいいのに
棚をひっくり返さんばかりの勢いなので、ブルーは出された茶を飲んでもちっとも落ち着かなかった。
「もう少し静かに探せないの」
「いや、ここらにある筈なんじゃが……、おう、あったあった」
じいさんがブルーに手渡したのは、ギンズバーグシティの通行手形だった。
「これは……」
「手形じゃ。安心しろ、銘は『二等商人』になっとる。ま、二、三質問は受けるかもしれんが、実際に行商しとったお前じゃ、適当に答えとれば難なくくぐれるじゃろ」
「じいさん、これ、どうやって……」
「いや、まあ、こういうときのために持つべきものは友じゃ。いつかこの日が来ると思って、知り合いから譲ってもらったんじゃよ。嬢ちゃんの分までは用意しとらんが……」
ソルフェージュはブンブンと手を振った。
「ええ、ええです。わしのはいらんですわ。もともと考えもあったし」
「そうか。ならよかった。さて、ブルーよ」じいさんは見たことのないほど真面目な顔で言う。
「さっきも言ったがの、ワシはこの日がいつか来ると思っておった。エイプリルが死んでおらんという確信があるからよ。わしがお前を、みんなほど責めなんだのも、その確信からじゃ」
驚きのあまり、ブルーは一瞬ものが言えなかった。唾を飲み、ようやく声を出す。
「な…、なんでそんなはっきり言えるんだよ」
「聞きたいか、それはな――」じいさんはじっとブルーの目を見つめる。
「それは、あの子がとても美人だからじゃ」
ソルフェージュが紅茶を吹き出した。




