寂しい暮らしだな、じいさん
あがっていけ、とじいさんが手招きをするので、二人はお邪魔することにした。まだ日は高い。道中そこまで焦る必要はないだろう、というのがソルフェージュの見立てだった。ブルーもそれに同意した。
薄暗い部屋の真ん中に、こぢんまりと据えられた四人がけのテーブルに、促されるまま並んで掛けた。奥から、ティーカップを二つ持ったじいさんがよろよろと現れたので、二人は焦って受け取った。
「よく来た。ここまで出向いてきたということは……」老人は途切れ途切れに言う。
「ついに助けに行く気になったか、あの子を」
ブルーは唖然とした。その目的は、誰にも言っていないはずだ。なぜじいさんが知っている――
「その顔は図星じゃな。なに、カマをかけてみただけじゃ」
食えんじじいだ、とブルーが思うと同時に、「食えんじじいじゃ」とソルフェージュが口に出して言った。
「こっちの嬢ちゃんは誰かの?」
「わしゃソルフェージュ言います。ブルーの旅の用心棒で」
「そうか、こんな可愛らしい娘がのう。そりゃあよろしく頼む。なにしろこのブルーと言ったら寝小便がいつまで経っても治らなくて……」
「関係ないこと言うのやめろよ!」
「怪談なぞ聞いた時は、男だというのにまっ先にわしの孫娘にすがりついてな、そりゃあ情けないもんじゃったよ」
「だからやめろって……」爺さんはブルーを右手で制した。
「だが、見違えるようだぞ、今日のお前は。もうすっかり大人じゃないか。男子三日会わざれば――じゃな」
「いや、三日どころか、ちゃんと話すのは三年ぶりだぜ、じいさん」
「そうとなれば、あれを渡さなければのう」と爺さんはおもむろに立ち上がり、何かを探し始めた。




