ブルーの非の打ち所のない計略
「まあ、こんなァの説が正しいとしてで、もう一つ、避けられん問題があるんじゃが」
「まだあるのか」
「嫌な顔せんと聞かんかい。市長が殺されてからこっち、警備の強化を理由に、ギンズバーグの出入りが厳しゅうなっとることは知っとるよな?どがァに偉かろうが、どがァに腕ッ節が強かろうが、街にゃあ関札を持っとらん限り猫の子一匹入れんぞ」
「それならここにある」とブルーは得意げに通行証を取り出し、少女に手渡した。彼女は眼を剥いて驚いた。
「おどれ、これどうしたんじゃ」
「ここを出る前にさ、村長の家に忍び込んで、盗ってきた。よく謝りに行ってたって言っただろ。そのときに、しまい場所を見て覚えてたんだよ。どうだ、この砂を掴んで立ち上がる精神は」
「バカタレ!こがァなもん、おどれのようなどサンピンが持っとってみィ!その場でお縄じゃ!見ろ、ここにはっきり『村長』いう銘が入っとるじゃないの!関所破りは重罪じゃけんの、斬首で済めばええ方じゃ。市長をブッ殺すためだったと知れれば、牛裂きか、皮剥ぎか、鋸挽きか……。いずれにせよ、ロクな目には合わんど」
「いや、殺そうだなんて……。僕はエイプリルさえ帰ってくればそれでいいんだよ」
「市長の城にナイフ持って忍びこめば、殺る気があろうがなかろうが同しことで。とりあえず」少女はあくびをした。
「わしゃもう眠い。おどれはその関札を返してこんかい。先に寝とくぞ。飯は明日でいいけん」
「はあ?ここに泊まるのかよ?」
「ま、ええじゃないの。明日から力になっちゃろう言うとるんじゃけん」
「誰も助けてくれなんて」先程と同じセリフを吐く。
「ガタガタうるさいわい。おどれ、わしがおらんかったらあの森で死んどったんよ。言うなりゃいっぺん失くした命で。死んだつもりになって、わしに命ァ預けてみんかい。なに、悪いようにはせんよ」言うなり少女はブルーの寝床で仰向けになった。




