その少女、凶暴につき
「ほう、ここがこんなァ(※1)のねぐらかい。なかなかええ部屋じゃない」
部屋に入るなり、少女は上機嫌で言った。ブルーは深いため息をついた。覚悟を決めて家を出たというのに、ほとんど離れないうちに帰ってきてしまった。
それもこれもこいつのせいだ――
「まるで疫病神を見るようなツラじゃないの。ええか、わしがおらなんだら(※2)よ、こんなァ今頃雑草の肥やしじゃ。ちったあ感謝せんかい、おう?」
「いや、まあ……。でも、そんな口調で言われても、素直に礼をいうつもりにはならないよ、第一、誰があいつらを殺してくれなんて……」
ブルーは絶句した。彼女が強烈な目線でもって彼を睨んでいるのに気付いたからである。
「あァ?何吐かしとんじゃ貴様。少しは骨があるかと思うたが、アテが外れたのう」
「……なんの話だよ」
「わしが見つけたときのおどれは、まあ確かに目付きは悪かったが、少なくとも腑抜けにゃあ見えんかったぞ。まあ、昔から勇猛な奴ほど早死にするもんじゃが、家から三里と離れとらんところで死にかけるとは、いくらなんでも早すぎと違うか、かかか」
「一体、お前はなんなんだ!僕を見つけたとか、恩人だとか、勝手なことばかり、どっから来たんだよ、名前は?」
「まあ落ち着けィや」少女は部屋の隅にちょこんと腰をおろした。
「まずはこんなァの話からよ。あんな時間に、あそこで何をしとったんじゃ。こんな夜更けに一人で外出すれば、十中八九野盗か熊か狼かにぶち殺されるいうことくらい、ガキでもわかっとることで。何か事情があるんじゃろうが。言うてみい」
「なんで僕がそんなこと」
途端に少女が長刀を取り出したので、ブルーは話すのをやめた。少女はそれをゆっくりと鞘から抜くと、ポケットから薄紙を取り出し、ゆっくりと拭き始めた。
「何か言うたか」
「いや……」
ブルーは観念して話し始めた。
※1・・・あなた
※2・・・私がいなかったら