ぼやぼやしとると全員ぶっ殺すぞ!!
「まったく、阿呆かおどれは。こがァな見通しの悪いところまで来よって」
ブルーを含め、6人全員が振り返った。
瞬間、白刃が月に反射したかと思うと、ブルーの真後ろにいた男の手から短刀が弾き飛ばされた。
月明かりに、黒服の少女が白鞘の長刀を手に立っていた。その光景に、ブルーは絶句した。先程は悪魔と見なし、あれほど恐れた存在に、美しささえ感じたのである。
野盗たちは、照準をブルーからその少女に転換したようであった。ひと呼吸で、彼女を全員で取り囲む。恐ろしく統制の取れた動き。不思議であるが、そんな状況でも、彼女の口元には笑みさえ浮かんでいるようであった。
「よう、死ぬ気で来いよ、ボンクラども」鋭い口調で彼女は言った。
「おどれらがどう思うとるか知らんが、わしらの渡世じゃよ、いっぺん刃ァ向け合うたら殺るか殺られるかしかありゃせんぞ!」
言い終わるが早いか、彼女の体が宙に舞った。駒のように回転しながら、その遠心力を利用して逆手で刀を振るい、瞬く間に前方の二人を横薙ぎに切りつけた。間もなく、二人は腹から血を吹き出しながらその場に倒れ込んだ。一人などはほとんど胴体がちぎれかかっていた。小刻みに痙攣する彼らに一瞥をくれてから、少女は目線を残りの三人に移した。右手で長刀をくるくると回しながら。
風のような速さで杉林に消えていく盗賊たちを見ながら、彼女は「逃げよったか。意気地のない奴らじゃ」と腰を抜かしたブルーに微笑みかけた。
「とりあえず、気張ったら腹が減ったわ。何ぞ馳走してくれんか。ま、銭は持っとらんがのう。カハハ!」