殺されるか、主人公~殺されたらこの物語は終わり~
半里ほども走っただろうか、息を切らしたブルーは杉林の手前で立ち止まった。夜とはいえ、真夏である。全力疾走したブルーの胸元はじっとりと湿っていた。気がつけば故郷の村は、灯も見えぬほど遠くなっていた。
と、風がざあッと音を立てて、肩越しに過ぎ去った。辺りの雰囲気が変わったのがブルーにもわかった。見回すと、一様に鼻から下をスカーフで覆い、短刀を手にした痩せ型の男たち5人が、ブルーを取り囲んでいた。
「兄ちゃん、こんな夜更けにそんなに急いでどこにいくの」中の一人がブルーに話しかける。周りの男たちが一斉に笑った。
――ギャハハハハ!
――ギャハハハハハ!
野盗だ。
エイプリルと商いに出ていた頃には、あれだけ警戒していた存在に、これほど迂闊に遭遇してしまうとは、とブルーは自分の軽率を悔やんだ。
この杉林が山賊のねぐらになっていることなど、周辺に住む者なら子供でも知っている。絶対絶命だ。こいつらに目をつけられれば、生きて身ぐるみを剥がれるか、殺されて身ぐるみを剥がれるか、2つに1つ。いずれにせよ、自分の本意は確実に遂げられない。
ブルーはめまいがした。5人は、狡猾に、周到に、じりじりとブルーとの距離を詰めてくる。彼らに油断はない。ブルーは懐のナイフに手をやりながらも、ほとんど観念し、絶望していた。ここまでか。
「まったく、阿呆かおどれは。こがァな(※1)見通しの悪いところまで来よって」
ブルーの背後から声がした。
※1・・・こんな




