グロテスクに死ね
彼らを押し退けてブルーが覗き見たその向こうには、先ほどまで女性だった何かが、文字通りその頭脳を、頭部ごとなくして倒れていた。今しがた見かけたヴァネッサと全く同じ服装をしていたそれは、打ち上げられた魚のように体を痙攣させていた。石畳を、夥しい量の血液が流れて、群衆の足元まで流れ及んで来た。血は、異常なほどどす黒く見えた。
あまりにも非現実的な光景に、ブルーは暫しの間呆然と立ちすくむほかなかった。それはそうだ、白昼に、人間の頭部が突然爆発するなんて話、見たことはおろか聞いたことすらないのだ。その死体の胸に、ヴァネッサがいつも身につけていた三連リングのペンダント――亡き母の形見だと言っていたそのネックレスーを認めてから、我に帰った。そして、猛烈に込み上げてくる感情の波を押しとどめながら、その場を離れ、通りの脇にある植え込みに吐いた。
――ヴァネッサが、姉さんが、死んだ?なんで?
真っ白な頭には、膨大な量の疑問符が浮かんでいた。程なくして憲兵が駆けつけ、事態の収拾回復に当たり始めた。群衆と揉み合うようにしながら遺体のそばまで近寄り、一番近くで見ている男に事情聴取をしている。群衆は解散させられるに至り、死体が片付けられたあたりで、ブルーもようやく周りが見えるようになった。
エイプリルが忽然と姿を消していた。




