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じばく男と肉欲処女  作者: 釧路太郎
淫欲八姫

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第36話 大丈夫とは?

 悪夢を見た俺は慌てて飛び起きた。

 自分の腹を切り裂かれて内臓が飛び出ている夢を見たのだが、そんな実感は全くなく汗一つかいていない。悪夢を見たのにいつも通りだという事に自分が強くなったという事を感じていたのだが、横を見ると心配そうな顔で俺の事を見ているアスモちゃんと目が合った。

 悪夢を見て飛び起きたという事が恥ずかしくなった俺はごまかすように微笑みかけたのだけれどアスモちゃんはじっと俺の事を見たまま何も言わなかった。


「おはよう。今日はアスモちゃんの方が早起きだったんだね」

「“まーくん”は大丈夫なの?」

「大丈夫とは?」


 アスモちゃんの視線が俺の顔ではなくお腹のあたりに向いているので何となく察していたのだが、俺が見たのは夢の世界の話ではなく現実の出来事だったのかもしれない。怖くて確かめることは出来ないのでお腹を触ることは出来ないのだけれど、痛みは全く感じていないので傷なんてあるとは思えないが、アスモちゃんにバレないようにそっと布団の中で触ってみることにした。


 お腹は裂けていないし内臓も出ていないのだけは確かなのだが、何か指に引っかかるような跡があるような感触があった。

 アスモちゃんがいなければすぐに服を脱いで確認したいところではあるが、アスモちゃんにこれ以上心配させないためにもここでの確認は控えておこう。


「とにかく、“まーくん”が生きてて良かったよ。もしも、死んじゃってたらどうしようかなって思ってたから」

「ってことは、俺が見たのは夢じゃなかったって事なんだ。でも、あの状態からなんで死んでないんだろう?」

「その辺は魔法で上手いこと治したってだけさ。あの殺し屋が“まーくん”を殺す直前に治してくれたんだよ。ちょっと刺激が強すぎたみたいで“まーくん”は意識を失っちゃったみたいだけど、無事みたいで良かったよ。本当に治るか半信半疑だったからね」

「何とか生きているよ。それにしても、死ぬ前ってあんな感じなのかって初めて体験したよ」


「はあ、死ぬ間際を何度も体験なんて出来ないでしょ。それも貴重な体験だとは思うけど、もう少し抵抗しても良かったと思うよ。“まーくん”を鍛えるために殺し屋を呼んだのにさ、全くの無抵抗でやられちゃうなんてどうかと思うな。殺し屋も本当にいいのかって戸惑ってたんだからね。次からはちゃんと死ぬことに対して抗わないとダメだからね」

「次は無いと嬉しいな」

「ダメだよ。オレが寝ている時にまたサキュバスが襲ってきたらどうするのさ。誰かをオレたちの寝室に入れるのなんて嫌なんだから、“まーくん”がちゃんとしてくれないと困るんだからね」


 アスモちゃんが怒っているのも俺を心配してくれているからなのだろう。これ以上心配をかけないようにそっとお腹の状態を確認したのだが、今まではなかったような傷跡があるという事が触っただけでも理解出来た。

 実際に見たら気を失ってしまうのじゃないかと思うくらいに長い傷が一本出来ていた。

 トイレに行くふりをして確認しようかと思ったのだけれど、こんな時でも俺の息子は元気一杯なもので布団から出る事も出来なかった。もう少し落ち着いてから確認しに行く事にしよう。


「サキュバスが勝手に入ってこないように戸締りはしとかないとね。あの人たちって、鍵がかかった空間には入ることが出来ないみたいだし、毎回ちゃんと鍵がかかってるか確認しとけばいいんじゃないかな。そうしたら、俺があんな風に殺されなくて済むと思うし」

「それは当然のことなんだけど、サキュバス以外にも色々と面倒くさいやつはいるからね。“まーくん”を殺すために殺し屋を仕向けてくる奴もいるかもしれないし」

「アスモちゃん以外で俺を殺す依頼を出す人なんていないと思うけど。俺を殺すのに殺し屋なんて必要なさそうだよ」


 この世界では何の役にも立たない俺は自虐の意味を込めて軽く笑ってごまかそうとしたのだけれど、アスモちゃんは真剣な表情で真っすぐに俺を見ていた。とても笑う雰囲気ではないと思い、俺はスッと表情を戻していた。


 じっと見つめてくるその視線を避けずに見つめ返していると、アスモちゃんの方から視線を逸らした。初めてアスモちゃんに勝ったと思ったのだが、こんなところで張り合っても何の意味も無いという事は分かっている。

 それでも、俺はアスモちゃんを心配させないためにも強くなっているという事をアピールしたかったのだ。


「“まーくん”は名も無き神の軍勢にとって最大の懸念材料になるんだよ。オレや八姫でも時間をかければ壊滅させる事も出来るんだろうけど、“まーくん”の持ってる力を使えば一瞬で全てを終わらせることが出来るんだ。もちろん、名も無き神の軍勢だけじゃなく名も無き神そのものを完全に消滅させることが出来るだからね」

「それって、俺の自爆攻撃でって事?」

「そう言う事。でも、それって本当なら誰にも言っちゃダメな事だったんだよね。だって、その事を知られると、“まーくん”の命が狙われることになっちゃうからね」

「そうならないようにして欲しいもんだよ」


「本当にごめんなさい」


 アスモちゃんは俺に謝っているのだけれど、なぜ謝っているのかわからなかった。

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