ある場所でおきたある出来事(殆ど戦闘シーン
バトル物らしい臭いがします。
昔の作品で勢いで書いてしまった部分があります。
正月という事で曝け出すことにしました。
一応自分が作っている話の一部というか過去話というか……色々不明な部分があると思いますがご容赦下さい。
あらすじと含め大事なことなので二回書いておきました。
黒雲が空を包み込み、夜とも昼ともとれない雰囲気が廃墟を包み込んでいる。
昔は栄えていたが、今は何かの影響で風化した町並みしか見えない。
崩れ落ち半壊の家並み、酸性雨を浴びて今にも倒壊しそうなビル、町というより都会だろうか、そんな人気の無い場所に、二つの影『白』と『黒』の影が幾度も交差していた。
それは縦横無尽に廃墟を駆け巡り、重なり合うごとに剣閃を残しほの暗い廃墟を照らしだしては、また離れてを続けている。
しばらくすると、二つの影が廃墟の大通りに対峙するようにして降り立つ。
「その程度ですか?」
男性とは思えないような洗練された声を男が出す。
蒼白い髪が風に溶け込むように舞っている。
その姿は潔白の装束に包まれ、女性の様な顔立ちの浮世離れした美男だ。
手に持っている二刀の紅い───血まみれの白剣が現実離れし、その男が持つ事によってそれが増進する。
「黙れ奇人が」
純白とは真逆の漆黒の装束に身を包み、銀髪のサイドテールがちょこんと漆黒のフードの横から飛び出している少女が、怒気を込めた銀眼の双眸で睨みつける。
その声にはどこか幼さを残していたが、手に持っている凶器───十字架を模した少女の身の丈以上の大鉄鎚がそれを打ち消し、さらに顔の一部以外全てを覆っているという漆黒の装束が異様な雰囲気を醸し出してている。
「奇人?貴人の間違いじゃないですか?私にはいきなり見ず知らずの者に飛び掛ってきた貴女の方が奇人に見えて仕方ないのですが、サンドリヨン」
男が灰かぶりの少女と皮肉を込めて言うと、
「それがここを廃墟にした奴の言う台詞か?」
少女が皮肉を込めてそう言い返す。
「私はただ掃除をしただけですよ、汚くなった物は綺麗にしないといけませんからね、今の方が先程よりよっぽど綺麗に見えますよ?」
男は愉悦の表情を作りそう言い放つが、少女は軽くそれを受け流し、
「ふんっ、貴様の愚かな自己解釈等に興味は無い……鍵を渡せ」
要求、もとい脅迫をする。
その言葉に男が一瞬眉をひそめる。
「貴女……本当に何者です」
「……」
少女は男が自分の要求を飲む様子が無いと確認すると、黙って十字架の大鉄鎚を下段に構える。
「……まぁ、いいでしょう」
男もそれに呼応するかのように、二刀の白剣を自分の両脇に振り払うようにして戦闘の構えをとると、付着していた血が飛沫となって消えていった。
辺りには二人の殺伐とした雰囲気が充満している。
無表情の少女とは逆に男はこれを楽しんでるかのようだった。
「……はっ!!」
先に動いたのは男だった。
ひび割れた道路を蹴り、残像を残すような速さで少女に近づく。
少女も負けずと地を蹴り応戦し、二つの影が衝突する。
ギィン。
嫌な金属音が辺りに響き渡る。
少女は男の交差するように上段から放たれた二刀を、大鉄鎚でいとも容易く受け止め弾き返した。
そのまま男に向かって大鉄鎚を横薙ぎする。
「!!」
男は逸早くそれに反応し、剣で弾き返そうとする。
が、全てはその華奢な少女の一撃により粉砕され、男はそのまま受け止めきれず後ろに後退する。
少女はそのまま後退していく男に追い討ちをかけようと、男を横薙ぎした大鉄鎚を反転させ斜めに掬い上げるようにして渾身の一撃を放つ。
「グゥッ!」
鳩尾にめり込み嫌な粉骨音と共に男は、横の廃墟のビルに叩きつけられ、男もろともビルが倒壊していった。
「……戦いというものを知らないようだな、相手の力を読めない者が戦いを勝ち抜く事は不可能……しまった……鍵の事を忘れていたな」
少女は自嘲気味に溜息をつくと瓦礫に近づいていく。すると瓦礫の中から湧くようにして純白の装束を所々ボロボロにした男が出てきた。
「やりますね……」
さっきの衝撃で体の、特にアバラは何本も逝ってる筈の男は平然として直立していた。
「……まさか、貴女……選定者ですか?」
男は顔をしかめながらもある仮説を立て少女に問う。
「選定者?」
聞き覚えが無い妙な単語に少女考え込むように首を傾ける。
男はその様子を見ると愉快に顔を歪めた。
「……すいません、ククッ、どうやら自分でも知らずにカナリ焦っているようですね、考えが浅はか過ぎましたよ、ククック、っと、傷に響いてしまいましたよ」
少女は狂笑している男の謎の言葉を気にしながらも、本来の目的を優先する。
「貴様が鍵に関わっているのは既に判っている、大人しく鍵を渡すのなら手荒な真似はしない」
「……あんな物をどうするつもりですか?あれは意味なんて無い物ですが、人間にはね、貴女が人間であるかは怪しいものですが」
「さっさと鍵を寄越せ」
「まぁまぁ、化け物同士、同じ者同士、落ち着いてもう少し話をしましょうよ」
それが引き金になったのか少女の雰囲気が禍々しく変わる。
「これ以上の無駄口は許さん、貴様と同じだと?馬鹿も休み休み言え、我は一線を画する者、全ての理の中で生き続ける者、貴様如きに何が判る!」
流石にこの雰囲気では軽口は叩けないようで、男は黙してしまうが、その表情は何処か笑っていた。
「渡せ───鍵を」
少女が男にジワジワと近づいて、倒壊したビルの瓦礫に足を踏み入れようとした時異変が起きた。瓦礫───男を中心として何かの魔方陣が展開されていく。
「ッ!!」
足のバネを思いっきり使い矢の様に瓦礫から離れる。
「失敗しましたね、少々時間を掛け過ぎたのではないでしょうか?相手を見極めるのは戦闘の基本、逃げるのも戦闘の極意、そうですよね?サンドリヨン」
「ちっ」
少女は憎々しげに姿勢を低く屈め男に向かって飛び掛る。さながら弾丸の様なスピードだ。
魔方陣には見えない壁───何か不可視の防壁が展開されているようだが、少女はそのままそれを大鉄鎚を振り上げ気合一閃で叩きつける。
「はぁっ!」
防壁と鉄鎚の間で蒼白い火花が飛び散る。
力は拮抗しているように見えたが、だんだんと鉄鎚が防壁にめり込み、防壁にヒビが入っていく。
「……ま、今逃げる訳ではないですが」
男がそれにも動じずにそういうと一刀の白剣を前にかざし、
「行きますよ───蒼雷焔───」
白剣から蒼雷が出現し少女目掛けて迸る。
その速さは少女の回避行動を遥かに上回っていた。
「!!」
少女は回避が間に合わないのを悟ると、素早く十字架の大鉄鎚を盾にそれを防ぐ、
「ッゥ!!」
が、そのまま蒼雷の土石流に体ごと持っていかれ、吹き飛ばされていった。
大鉄鎚では勢いを殺しきれず、自らの体を反転させ蒼雷を受け流す。
「ぐっぅ」
少女は大通りに転がり落ちながらも、体勢を立て直すが、その顔には苦痛が滲み出ていた。
目測を失った蒼雷は廃屋のビル郡に青白い雷光と共に炸裂し、そこには瓦礫も何も残らない一面焼け野原になっていた。
「ハァッ!」
体勢を立て直した少女の目前には、一方の白剣を振り上げている男の姿が目に入る。
少女は小手先がききそうにもない大鉄鎚を自在に操り、上方から迫る白剣に対応する。だが、白剣は一つだけではない、横からもう一方の白刃が迫る。
「むっ!?」
少女を捕らえたと思った白刃が虚空を切る。
少女が居た筈の大通りのコンクリが少し抉れ、そこには少女の姿が無かった。
男はすぐさま辺りを見渡し少女の姿を視認する。
少女は渾身の力を足に込め男の遥か上空に飛翔していたのだ。
空高く飛翔し、白剣を回避し、さらにそのまま落下の勢いに合わせ鉄鎚を振り上げ、男目掛けて落下していた。
漆黒のフードが捲り上がり、今まで見えなかった顔の全貌が明らかになる。
そこには14,5歳の幼さを残す少女の素顔があった。銀髪のサイドテールが落下の勢いで、鞭の様に暴れまわっている。
少女の奇抜な行動に、幾分の動揺もする事無く男は虚空の少女を睨み、
「──蒼雷焔──」
少女に一刀の白剣の切っ先を──標準を合わせ蒼雷を放つ。先程よりも光り輝く蒼雷が迸る。
「はっ!」
少女は光速の蒼雷目掛けて十字架の大鉄鎚を神速の速さで振り下げた。
廃墟で二つの強大な力が衝突しあい大気が震える。それは、両者が全てを賭けた一撃なのかもしれない。力が衝突しあう境目では銀と蒼の閃光が迸る。
「くっ」
男の顔が苦心に歪む。
白剣がその男の心情を表すかのように震える。
が、その表情には余裕が見え隠れしていた。
「全てを終わりにします。灰に帰すが良い銀髪の少女よ!!!」
その一言で蒼雷の輝きが数段増し、それにより廃墟が昼の様な明るさを取り戻しているかのようだった。
「っう!!」
それまで拮抗していた力が変動し、少女が竜の如き蒼雷の中え飲み込まれていく。
蒼雷が完全に少女の体を丸呑みにしそのまま天空に迸ると、一部の暗雲が強大な力により吹き飛ぶ。
未だに蒼雷が白剣の切っ先から放たれていた。
それ程の力を込めていたのだろう。
(終わった)
男の蒼白い髪が蒼雷の電圧と風圧でフワリと棚引いている。
男が安堵したその時だった。
「何!?」
男は自分の目を疑った。
蒼雷の中を少女が十字架の大鉄鎚を刺突するかのように前に突き出し、彗星の如く男目掛けて駆けていたのだ。蒼雷が少女を避けるようにして切り裂かれていく。
それは男にとって予想外の出来事であった。
「はぁぁぁぁ!」
少女の闘志を込めた叫びが大気を震わせ、十字架が蒼雷を切り裂きながら神の裁きを与えるように男に迫る。少女の白銀の双眸に写るのは自分に白剣を向けている敵。
男の顔に今度こそ苦心の表情が出る。
次の瞬間、男の突き出した白剣が蒼雷と共に粉々に砕け散っていった。
「!!!!」
轟音と閃光が廃墟を包み込む。
それは、一瞬にして晴れていき、廃墟は前以上の静寂を取り戻す。
そして、二人が雌雄を決した大通りでは男が少女の十字架に貫かれ地面に串刺しになって仰向けに倒れ込んでいた。
「……これは参りましたね……あれを突破されるとは……」
その眼は、その視線は、自らの技により開いた虚空を覗き見ながらも、勝利者の少女に向けられていた。
「それはキサマが弱かっただけの事」
少女は所々焼け焦げている漆黒の装束を風になびかせながら、敗北者の男に同情の気持ち等微塵も無い表情を向けながら冷酷に告げる。
「……相変わらず手厳しいお言葉ですね……それでは折角の可愛らしいお顔が台無しですよ?」
男は漆黒のフードに今まで隠れていた少女の素顔を見詰めながら軽薄そうに笑う。
「寝言は寝てから言え……鍵を渡せ」
少女がこれで何度目かとなる要求を男に言い渡す。
「……はぁ、久しぶりに可愛らしい女性と話せると思ったのに、内面は想像以上の堅物のようですね……言い忘れてましたが、この私は鍵なんて持っていませんよ」
男は頬吊り上げ、少女に真実を言う。
少女はその意味深な言い回しにまたも首を傾ける。
銀髪のサイドテールがピョコンと揺れ、その歳相応の可愛らしさが一瞬滲み出ていた。
「…………まさか」
しばらくすると、何かに気付いたのか憎々しげに男を睨みつける。
「気付きました?これは私であり私ではないのです。いわゆる分身という物ですよ、あっ、でも力は同じ程度ですよ?あなたのその力は賞賛に値します。私がこの能力を持っていなかったらやられてましたね、まぁ実際やられてますが、ククッ、可笑しな話です、それに人とこんなに話したのは久しぶりです、あぁ、その前にあなたは人ですかね?」
十字架に貫かれているというのに飄々としていた。
「少しその軽口を叩けないようにしてやろうか」
少女の視線が鋭く刺々しくなる。
「ハハッ、これ以上何かされちゃぁ少しどころじゃなくなるんですけどねぇ」
相変わらず男はその痛々しい姿とは違う陽気な声で言う。
「……貴様の分身、もとい本体はどこに居る?」
「さぁ、どこでしょうね、私達は同じであり同じではない者なので……どこかで遊び呆けてるんじゃないんですかね?」
男は本当に真剣に悩んでいるようだ。
「自分の事も判らないのか」
少女が初めてここにきて、感情らしい感情───呆れを込めていった。
「先程から言ってるように似て非なる者なんですよ……親子の関係みたいなものですね、親と子は同じであり違うでしょ、そんなもんなんです、私達も」
「……」
少女は何かを考え込むようにして十字架を見詰める。
それを見ると男はやれやれと首を横に振り、自分の中にあるわだかまりを無くす為に少女に問いかける。
「貴女は……何のために鍵を求めるのですか?」
「……貴様には関係の無い事だ」
返って来るのは答えではない答えだった。
「ふぅ……最近は物騒になってきましたね……アレを中心に……動き出す……か……」
男の眼からだんだんと生気が無くなっていく。
「そろそろ……時間です……なかなか……楽しめました……」
そして自分の胸に深々と刺さる逆しまな十字架を見て不適に笑う。
「……逆十字……貴女にはお似合い……かもしれませんね……」
少女は戯言に耳を貸さず男を淡々と見詰めるだけだった。
「ククッ……それでは……次会う時……」
男は最後まで言葉を紡ぐことなく静かに目を閉じ、しばらくすると体の端々から蒼白い光となって風に飛ばされ消えていった。残ったのは刃先が粉砕している白剣だけだった。
「面倒なやつだ……一からやり直しか」
暗雲に包み込まれた空の一部、大穴の開いた場所から太陽が顔を出し、少女と逆しまな十字架を照らしだす。少女が眩しそうに天を仰ぐ。
それはまるで、天からの祝福を受けてる天使の様でもあり、天からの追放を余儀なくされた堕天使の様でもあった。
厨二病?
物語なんて厨二してないと書いていけないとですよ!
っとまぁ言い訳しておきます……