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第124話 幼馴染の結婚

 今回の戦争で、バーン帝国の捕虜は2000人を超えた。

 その中で、半ば捕らわれたような状況で無理やりに働かされていた者たちは、家族の元へ帰された。


 しかしながら中には家族がいない者もいたため、引き取り手のいない捕虜たちは何らかの形でグランデール王国が面倒を見ることになったのである。


 俺の脳裏に焼き付いて離れなかった、あの赤い髪の少女もその一人だ。

 この少女は、国王に事情を話して俺が引き取ることが決定した。


「彼女はエミーにべったりのようだね」

「私が唱えたエリアヒールを見て、自分も治癒魔法が出来るようになりたいんだって」


 彼女の母親はリリーといって、流行り病で既に亡くなっている。


 自分は魔術師の才能はあったのに治癒魔法が出来なかった。病の母親を助けられなかったことがずっと悔しかったのだという。

 しかし、戦艦の捕虜室でエミーが唱えたエリアヒールを見て、この人の元で自分も修行を積みたい。是非とも、治癒魔法が出来るようになりたいとエミーに願い出たのだ。


「屋敷の中ではエミーが面倒をみる?」

「アルがいいって言うなら……そうしたい」


「お父さんも亡くなっているんだよね?」

「そうらしいわ。お父さんはベンノって言う人だったみたいで、あの子が4歳の時に事故で亡くなったって」


「彼女は何歳なんだい?」

「11歳だと思うって……帝国で暮らす日々が辛くて誕生日すら、来たのかどうかも分からなかったみたい」


「鑑定で見てみようか」

「そうね」


 彼女には、俺のMR装置で名前や年齢、そして経験値などの情報が表示できることを教えている。


―――― ステータスオープン ――――


――――――――――――――――――――

 名前:アリアナ

 年齢:12歳

 性別:女

 経験値:8

 レベル:3

 冒険者ランク:F

 体力:32/32

 魔力:482/482

――――――――――――――――――――

 

「12歳だよ。名前はアリアナ」

「名前は聞いたのと同じ。誕生日は……可哀そうに、分からなかったんだね」


「あと、魔力量が結構高いと思う」

「どのくらいなの?」

「一番最初にエミーのステータスを見た時と同等か、それ以上あるかな」


 エミーのステータスを最初に見た時は、多分魔力が400くらいだったと思う。


「なら、魔術師としての素質は問題無いわね。水魔法と土魔法の素質があれば治癒魔法を教えてあげられるんだけど……」


 あいにく、俺のMR装置では魔術師としての素質までは判らない。

 冒険者ギルドの魔道具ではそれが判定できたが、それと同じことを魔道学園ではやっていなかった。


(なぜだろう?)


 王宮魔道具院では、やり方が分かってるはずなのに。


「その内、宰相殿に情報が聞けないか相談してみるよ。あと、エミーが面倒をみるにしても、屋敷に住まわせるには奉公人という立場にした方がいいと思う」

「それは私も考えていたわ。暫くはタリアの下でメイド見習いって事にして、使用人棟に住まわせるようにしたいと思ってるんだけど……いいよね?」


「それだったら勿論いいけど……本人はそれでいいのかな?」

「分かってくれると思う。私から話してみるわね」


 その後、アリアナはエミーからの話を聞いて、とても嬉しそうに頷いたという。


◇◆◇


 アリアナの適性を調べたい関係で不思議に思っていたことがあったので、俺はそれを聞くために魔道学園のミレーナ先生を訪ねた。


「エミーとミラがルノザールの冒険者ギルドでパーティ登録をする際、魔道具によって適性を調べることが出来たのですが、学園にいる時になぜ適性を調べるという事をしていなかったのでしょうか?」


 俺は聞きたいことを単刀直入に聞いた。


「それはだな、魔術師の適性は小さい時に増えるからなんだ。15歳までは変化する可能性があるため、学園であろうとも適性を調べるのは16歳になってからと決まってるんだ」


 15歳以下で適性が判ると、本人はそれだけに固執してしまい、新しい適性の開花が抑えられてしまうものらしい。

 魔道学園では出来るだけ多くの適性に目覚めて欲しいから、敢えてその時点での適性を調べないのだという。


「そして、16歳になるともう適性は増えないと考えられているから、冒険者ギルドの魔道具は16歳以上だと適性を表示するように作っているんだ」


 なるほど、アリエナの適性は最悪冒険者ギルドで冒険者登録をすれば判るんじゃないかって思っていたけれど、それは間違いだったようだ。


「適性ってどの様にすれば判るんですか?」

「その方法は国家機密になっているが、アルフレッド君……君ならその文書を閲覧可能なはずだぞ?」


(おお、やったね。でも俺が国家機密を閲覧できるって、なんで?)


「君は今、子爵だろう。その時に一緒にもらった陞爵状の中に書かれている筈だ」


 子爵位に陞爵したときに陞爵状というのを貰ったが、爵位に関する特権や権限などが書かれていたようだ。


(参ったな、よく読んでいなかった!)


「まだ全部読んでいませんでした……」

「ハハ、君らしいな。特に特権についてはよく読んでおくといい、子爵になって増えた特権は少なくないはずだ」

「有難うございます、ミレーナ先生」


 あなたは何時になっても私の恩師です。


 結局、魔道具院に行くとすんなり情報を調べることが出来た。

 魔術師としての適性は、魔力波動の周波数を変化させながら人体に加え、一定以上の反応を示したらその波動に対応する要素が“適性あり”と判断しているらしい。


 その波動を目に見える光の波長に変換すると、火魔法が赤色、雷魔法が黄色、土魔法が黄緑色、水魔法が水色、風魔法が青色、召喚魔法が紫色になるとの事。


(魔法陣の色と同じじゃないか!)


 早速、俺はこの情報をMR装置に組み込んで波動を変化させるように改良し、彼女に試してみた。



―――― ステータスオープン ――――


――――――――――――――――――――

 名前:アリアナ

 年齢:12歳

 性別:女

 経験値:8

 レベル:3

 冒険者ランク:F

 体力:32/32

 魔力:482/482

 適性:火魔法・風魔法・水魔法

――――――――――――――――――――


 残念ながら、治癒魔法に必要な要素である土魔法の適性は検出できなかった。


「でもね。ミレーナ先生の話によると、15歳までは適性が増えることがあるって」

「そうだね、私が土魔法の魔力の練り方をこれから教えてみるよ」

「エミーが先生ならきっと大丈夫だよ」

「うん、何とかやってみるね」


 エミーは小さい時から治癒魔法の素質が有った。きっとアリアナの土魔法の適性を発掘することが出来るだろう。


◇◆◇


 そして俺たちの屋敷には、もう一つの変化が訪れようとしていた。

 ジムとミラが二人で出かけて、夜中まで帰ってこないことが増えてきたのだ。

 どうも、そういう事らしい。


(暫くは、放っておいたほうがいいかな?)


 そう思っていたのだが、その状況は長くは続かなかった。


「アルに話があるんだ。なあミラ」

「うん」


 ジムとミラが二人で一緒に話があるという。

 何の話か予想できたので、エミーにも同席してもらった。


「俺たち、結婚しようと思うんだ」


 予想通り、ジムとミラが結婚したいと言う。


「やっぱりそうなんだね! 私もそろそろじゃないかなーって思ってたよ。おめでとう!」

「おめでとう、祝福するよ!」


 そして、結婚した後は二人だけでアパートに住みたいらしい。


(アツアツの新婚生活ってやつ?)


「いいわねー! 私たちもねぇ? アル?」

「う、うん。ちゃんと考えているさ。でも、その前にジムとミラの結婚式を挙げないとね」

「そうよね! 結婚式! 盛大にやろうよ!」


 二人の希望を聞いて、結婚式はルノザールの教会で挙げることになった。

 そしてお披露目会はその直後に教会前の広場で行うことで話が進んでいく。


「知ってる人達に案内を出したい」

「あんまし、見せ物になんのは嫌だぜ」

「何言ってんのよジム、一生に一度の晴れ舞台じゃないの。諦めて見せ物になんなさいよ!」

「えーーー? そんなんだったら結婚式って嫌だな、いてててて」


 ミラがジムの横腹をつねっている。


「わかった、わかったから」


 今のこの二人の行動からも、仲睦ましさを感じとる事ができる。


 この芽吹きの季節が始まると、俺たち4人は一緒に20回目の誕生日を迎えることになる。

 この誕生の日に、ジムとミラの結婚式を挙げる事が決まった。

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