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 あれから落ち着きを取り戻したミラージュと亜梨子はリビングへと降りていった。

 既に準備が出来た母は、亜梨子の切られた髪に目を丸くする。


「あ!亜梨子ちゃん!?その髪!!」


「はい、切りました」


「えぇ!?切りましたって……だって髪は……」


「はい、魔女の髪は魔力を貯める貯蔵庫で、魔法を行う代償です」


「!…………なにか、したの?」


 心配そうに見る母に亜梨子は微笑んだ。


「ラキアが最後に後悔したミラへの呪いを解くのに使いました。それがラキアの願いでしたから」


「そう……なのね……ねぇ、大丈夫なのよね?2人は……その、大丈夫なのよね?」


  2人の仲を心配する母に亜梨子は笑って頷いた。


「ミラとは今後も変わらず付き合っていきます」


「今後もよろしくお願いします」


「わぁ!良かった!!亜梨子ちゃんったらミラって呼んでるし、心配いらなかったかしらぁ!」


 そういえば……と振り向き赤らめた目元で亜梨子を見ると、キョトンとした亜梨子は頷いた。


「いけませんでしたか?」


「全然!!呼んで!!いっぱい、よんで……ミラが呼んで欲しかった名前だから」


「…………それは奇遇ですね。ラキアが貴方の名前を呼べず残念に思っていたのですよ……貴方の名前が好きだったみたいです……私も」


 そう言った亜梨子にミラージュはソファに倒れ込んだ。


「…………どうしよう雅子さん亜梨子がラキアとダブルで殺しにくるよ……」


「良かったわね、これは大人しく殺されておいた方がいいわよ」


「……しんじゃうよ」






 こうして亜梨子の15歳から見続けていた夢は落ち着き、飛び起きる事も無くなった。

 たまに夢を見るが、苦痛はあっても常にミラが付き添い見守ってくれている。


 ラキア、あなたが生きた人生はきっと無駄じゃなかったのですよ。

 未来の今にそれが繋がっているのですから。





 

 



 



「亜梨子、はいお弁当」 


「ありがとうございます」


 あの日から亜梨子とミラージュは変わりなく過ごしている。

 教室でも2人の距離は少し縮み、亜梨子はミラと呼んで周囲を騒然とさせたし、スーパーロングの亜梨子の髪がセミロングになり万里を絶句させたりと色々あったが特に元気に過ごしている。

 心配を掛けた桃葉と郁美にだけ経緯をさっと話すとかなり驚いていたが、亜梨子がちょっとだけ魔法を見せたことで口を閉ざした。


「内緒ね、内緒」


「わぁ、魔法すごぉい!太らないでお菓子たべたぁい」 


 と、ふわふわとした返事が帰ってきたくらいだ。


 そんな桃葉は、彼氏である誠の浮気が発覚して鬼と化したらしい。

 桃葉は勿論大好きだが、浮気相手も好きなんだ!と堂々と言ったクズっぷりに怒った亜梨子が言えない復讐をそっとしている。

 泣いていた桃葉だったが、次はもっといい人見つける!と叫んでいた。

 

 郁美は気になる人に恋人が居て落ち込んでいるところに、まさかの万里が慰めたらしく今いい雰囲気らしい。

 桃葉が悲しみを押し殺しつつも、2人をニヤニヤと見守っている。





 


「そういえば、何故夢を見た年がこんなに違うのでしょう」


「たぶんだけど、ミラが初めてラキアを見たのが5歳だからだと思うよ。あの時ミラとラキアの年の差って凄いから、同じ歳でラキアに会いたかったんじゃないかなぁ」


「ロリコンですよね」


「やめてぇ!」


「わたしは……ラキアが処刑台に登った歳、ですね。」


「…………うん」


「ラキアが忘れないようにしたんだと思いますよ、ミラの呪いを必ず解いて欲しいと。その時が1番強く願いましたからね」


「……亜梨子もラキアも大好き」


 顔を覆って言うミラにふふっと笑った亜梨子は、お弁当を食べる。

 美味しいお弁当は相変わらずミラージュの手作りだ。


「…………いつか、いつか私もお弁当つくりますね。IHですからご飯作れます…………まだ、火は怖いのですが、それもいつか克服できるといいですね」


 ラキアは火刑で亡くなった。

 そのせいで亜梨子は火が苦手だ。

 今でも火を見ると冷や汗が溢れ息を切らしてしまう。

 それでも、亜梨子はラキアを覚えていて良かったと思った。

 大切な記憶なのだ。優しい温もりをくれた母が大好きだった。

 最後まで会えなかったけれど、最後まで気にしてくれていた母が好きで無意識に亜梨子が母の口調を真似て話していたくらいに。

 ミラの優しい温もりが好きだった。

 たとえ年が離れていても敵対していた人だとしても、恐怖の中でくれた安らぎに助けを求めるくらいに。

 ラキアの世界はとても狭かった。

 それでも、大切で愛する人を見つけることが出来たラキアは決して不幸だけでは無かっただろう。




「見ていてくださいラキア……貴方が叶えたかったミラとの幸せを今度こそ叶えますからね」


「ん?亜梨子どうしたの?」


「…………いいえ、なんでもありませんよ…………ミラ」


「ん?」


「好きですよ」

 

 箸を止めて立ち上がり、前にいるミラージュにラキアとしても亜梨子としても初めての口付けを送った。


「はぇ……?え!?あ、亜梨子!?」


 真っ赤になり口元を抑えるミラージュは目を見開いて亜梨子を見た。

 ふふっ……と笑った亜梨子はミラージュの唇に人差し指を当てて囁く



「……幸せを送る魔女の口付け、です」




 

こちらで古の呪いと祝福を送る魔女の口付け、完結となります。

読んでいただきありがとうございました。


本当は、もう少しお話が長くなる予定だったのですが、思っていた以上に前世の話が早く出てしまい早めの完結となりました。

今後書きたかった内容は、続編といいますが、短編のような形でチラホラ更新しようかなと思っております。


ここまで読んで頂きありがとうございました!

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