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「最近機嫌いいよねぇ、なんかあったの?ミラ」


 機嫌よく椅子に座ったままスマホを弄るミラージュの後ろから首に腕を回して抱きつきながら聞くクラスメイトは、スマホ画面を見てしまい機嫌が急下降した。


「……ちょっとー、雅子って誰よー」


 その声にピクリと反応して後ろを向くと、その女子と目が合った。

 ギラッと睨みつけられ更にミラージュにしがみつく。

 うーん、と首を傾げてその女子を見たあとミラージュを見るが、ミラージュは楽しそうにスマホをいじっているだけである。

 周りに集まっている女子もだれよ!雅子って!

 うちらの中に雅子とかいないよね?

 など話していて、多分私の母ですなんて言う雰囲気は皆無である。


「……何見てるわけぇ?金剛」


「……いえ、別に」


 ふいっと顔を背けた亜梨子に顔を上げたミラージュがほんわりと笑った。


「あーりす」


「はい、なんですか?」


「今日帰り用事ある?無かったらクレープ食べに行かない?」


「近くに新しいクレープ屋さんができたんだよぉ」


 ワクワクしている2人を見て亜梨子はスマホを取り出す。

 特に通知も来ていないトークアプリを開き、母に帰りクレープを食べに行く事を伝えるとユニコーンのスタンプでOKと帰ってきた。


「……大丈夫、行けます」


「「やったー!」」


 喜ぶ2人が可愛くて目を細めて見ていると、ミラージュが顔を上げて亜梨子を見た。

 その持っているスマホには相変わらず母、雅子から連絡が来ているのだろう。

 スマホに何か返事を返してからチラッと亜梨子を見るが、亜梨子は気付かず話をしている。


「……失敗したなぁ、先に交換しとくんだったぁ」


「なになに?ミラ何を交換するの?」


「いーや、なんでもないよ」


 後ろからくっつくその腕を外しながらニコリと笑うと、あー……と残念そうに離れる。

 甘い笑みを浮かべて拒否出来ないようにするミラージュは、母とのLINEをもう一度見た。


『亜梨子ちゃん、帰りにクレープ屋さん行くみたいだから今日は帰り遅いみたいよ』


「…………一緒に行きたかったなぁ」


 休みにでも誘おうかなと考えるミラージュは、いい笑顔で頷いていた。







「うわわわ!どうしよう迷う!」


「桃は果物いっぱいがいいなぁ」


「私は……」


 メニューを見て悩む亜梨子を2人はにこやかに見ていた。

 クレープ屋さんらしく店内が甘い匂いで充満しているこじんまりとしたお店は明るい色合いで居心地がいい。

 統一感がある落ち着いた内装に、おすすめのクレープをドドン!大きく宣伝している。


「……やっぱり私も果物たっぷりホイップクリームにします」


 悩みに悩んだ亜梨子は2つで指をユラユラとさせ悩んでいた。


「ちなみに、もう1個はなんだったの?」


「………………デリシャス苺チョコバナナ」


「「………………可愛い」」


 果物とホイップクリームがいっぱいのクレープと、苺とバナナが入ったチョコバナナ。

 なにがデリシャスなのかというと、完成の姿が王冠やハートなどのチョコが上に飾られイチゴやバナナがにょきん!と見えるあたりがデリシャスらしい。


「…………き、今日はあきらめます…………ん?」


「どうしたのぉ?」


「…………やっぱりお持ち帰りします!お母さんがお土産を欲していますので」


 急に来た通知にスマホを見ると悩みに悩んでいた亜梨子は一転してワクワクと目をキラキラさせ注文に向かった。

 桃葉と郁美は顔を見合せクスリと笑ってから亜梨子の隣に並んだのだった。








「うんまそ!!」


 店の外にはテラス席があって、丸テーブルに4つの椅子がある席を選んで座った。

 亜梨子はお持ち帰りは、帰りにお渡し出来ますと言われたので、その提案をありがたくお願いして今食べるのだけを持ち椅子に座る。


「すごいね、ショコラケーキ乗ってる」


 いろんな角度から見る郁美は満足そうに見てから亜梨子と桃葉のを見る。

 同じ果物いっぱいを頼んだ2人のクレープは同じでこちらはケーキは乗っていない。


「じゃあ、たべようねぇ」 


 ニコニコと笑い言った桃葉が一番最初に口をつけた。

 目を見開いた後、トロンと目尻を下げて微笑む桃葉に亜梨子も口を開けて最初の1口を食べた。


「んんっ」


 桃が口の中で弾けた。

 ジュワリと広がるまろやかな甘みが口の中を支配した。

 少し甘めのモチモチの皮も美味しいし、果物の甘さを考えてかホイップは甘さ控えめなのだろう。

 くどくなくて食べやすいクレープに亜梨子は大満足だった。

 別のを食べている郁美は付属で渡されたスプーンで上手にすくって食べていた。

 中は栗のクリームにスイートポテトとホイップ。それにチョコいっぱいのケーキが乗っているのだ。


「…………あ、もうなくなる」


 郁美は残り二口くらいになりしょんぼりと言った。


「スイートポテト大好きだから、次は郁美ちゃんが頼んだのもいいなぁ」


「美味しいよー!メニューいっぱいだから迷うよね」


 キャッキャウフフと次頼むメニューを話していると、店員がチラリとこちらを確認していた。

 次のクレープを作ろうとしていたようだが、すぐに手を止めて別の作業をしている。

 どうやら持ち帰り用を作るタイミングを見ていたようだ。


「あ、そうだ。気になってたんだけどさ」


 郁美が顔を上げて亜梨子を見ると、残り半分以下になったクレープと格闘していた亜梨子が、はい?と郁美を見る。


「ミラがなんかスマホ触ってる時に一華が雅子って言ってたじゃん?それに亜梨子がミラを見たからもしかして雅子ママ?…………なんて、そんなわけないか」


 アッハッハッハッハッと豪快に笑って言ったが、亜梨子はピタリと手を止めている。


「………………あらあらあらあらぁ?」


 その様子に椅子ごと近付いてくる桃葉が亜梨子に近づきニヤニヤと笑っている。


「…………え?なに、マジ?」


「これはお話しなくちゃかなぁ?」


 郁美は驚き桃葉は楽しい事がありそう、とさらにグイッと近付いてくる。

 そんな2人を手で押しやり無表情のまたクレープを口に入れてもぐもぐもぐもぐ。

 桃葉と郁美は顔を見合せまた亜梨子を見るが話そうとする様子はない。


「…………今はまだ言えない感じかなぁ?」


「…………………………」


「気になるけど、まぁ、また今度亜梨子が話すまでまとっか」


「そうだねぇ」


 2人は話そうとしない亜梨子に笑いながら離れていくと、そんな2人を見て考え、最後の一口を食べ終わった亜梨子は包み紙を丁寧に折ってから2人を見た。


「………………土日遊びに来ませんか?泊まりで」


「あら、亜梨子ちゃんからのお誘い珍しい、行くよぉー」


「部活丁度休みだから大丈夫!」


 楽しみだね!と話す2人を見て亜梨子も笑うが、その心境は不安もありザワザワと胸を騒がせた。









 

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