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マナイズム・レクイエム  作者: 織坂一
青年の辿り着いた答え
25/25

青年はただ過ちだけを築いて鬼畜として独り眠る

こちら、トゥルーエンドになります。

グロテスク表現がある上、ショックを受ける内容となっていますので苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。




「……俺が、勝ったのか?」



そう呟いた瞬間、喉に痛みが走る。

呆然とした意識の中で勝利を手にしたと言う現実から強制的に引き戻されるも、俺は先程のことを思い返す。


あのとき――マナを喰い、そのショックでマナを吐き戻そうとしたあの瞬間。

その瞬間を思い返すと、俺は必死に自身の首を絞める。


絶対に彼女の身体は吐くものか。その焦燥感で必死に気管を締めれば、呼吸さえままならない。

爪は首に食い込み、首筋と指を濡らすがそれでもいい。いや、そうしなければならないのだ。


毎秒ごとに痛みを増していく中で、痛みを鈍らそうとさらに喉に爪を喰い込ませるも、痛みは、()()()は俺の中から必死に出ていこうとする。


とうとう痛みに耐えきれなくなった俺は、嗚咽と同時にあるものを吐き出した。



「づ――ッ!」



嗚咽と共になにかを吐いても、俺の胃は毒かなにかを出そうとひたすら吐き気を催す。

恐らく、これは『原初の災厄』(ファースト・スカージ)を喰った代償。


ありとあらゆる災厄を起こす程の憎悪を持つ存在を喰ってしまえば、当然人の身には留まれないほどの呪力が注ぎこまれる。その影響かと思い、奴の呪力だけを吐き出したその瞬間———ごつん、と鈍い音と同時に床になにかが落ちて、俺は()()と目が合った。


床に落ちたのは、“赤いもの”。

赤いけれども、所々白が混じっていて。

赤い大きな点のようなものが、2つもあって。

大きな点の少し下に、弧のようなものが描かれていた。それは、マナの、“首”。


既に俺は涙も声も出なくなったせいか、今までのように無様な悲鳴を上げることはなかった。

しかし、それでも俺が愛した人を喰ったと言う事実に変わりなく、今更になって『原初の災厄』(ファースト・スカージ)の言葉が脳裏を過った。



―—そうそう、絶対に吐き戻すなよ? そしたら今度こそその小娘はお前を憎んだまま許さない。一生お前は恨まれて生きていくのだ。



「あ゛……ッ、あぁ゛……あああああッ……」



瞬間、俺は床に転がったマナの首を拾い上げては思い切り抱き締める。

そしてふと思う。本当にこれが俺の望んだ結末か? ——と。


こんな凄惨で残酷で無情な結果など、全てを懸けて戦った対価としてこんなものは納得がいかないと俺は噎び泣く。


ようやく彼女が俺の元に帰って来たと言うのに、()()()()()()2()()()()()()()

例え彼女の体が俺の中にいようとも、もう決して2度と――既に何度味わったか分からない絶望の味はただ生臭いだけだった。


しかし絶対に、体だけは吐くものか――そう決意し、俺は跡形もなくなったアールミテ家の跡地から、ある場所へと向かっていった。


穴だらけの体を引きずり、無人の街を必死に抜ける。

もはや『ゴースト』など俺の体内に僅かしかおらず、俺は最期の力を振り絞って、残った『ゴースト』へある場所に俺に道を示すようにと命令した。


道中、大量の血や内臓やらを置いてきもしたが、屋敷から聖都へ。そして聖都に入ってしばらく――霊碑街にあった1つの墓まで辿り着く。こここそ『ゴースト』へ道案内を頼んだ終着点だった。


あの『原初の災厄』(ファースト・スカージ)が、悪戯心で建てた小さな墓。

『Mana』と書かれていた墓は砕かれ、既にただの石塊となっていた。

覚醒した俺の始発点かつ、最後に彼女と本音を語り合った思い出の場所は既に跡形もない。



「う゛……っ、ああ、あああああ―――ッ!」



俺はまた子供のように、ただ泣き喚いては苦痛に悶える。

穴だらけの体が痛む、既に『ゴースト』による体の修復が出来ない、なにより心が痛くて仕方がない。


しかし俺は今こんな現状に直面しても、ただ理不尽すぎるこの世界を恨んでいた。

何故、なんで、どうして。

全ての真実を知ってそれらを思い返せば、結末は最初から決まっていたとしか言えない。


俺が意地なんか張ったから、英雄なんてものに執着していたから。この時点でこの末路は見えていた。だと言うのに俺はどこかでマナを恨んでもいたし、ソフィアや『原初の災厄』(ファースト・スカージ)についてはもう1度殺してやりたいとも思う。


もう現実は変わらず、ただあるのはマナの首と、俺がここ7日間で体感した絶望と世界の終焉(おわり)だけ。


俺は泣き喚くも、いよいよ体は苦痛に耐えきれず、床に吸いつけられるように無様にも地に伏せた。瞬間、俺はマナの首から手を離してしまう。


赤い彼女の首は砕けた墓石の上を転がって、俺は最後の力を振り絞って、マナの首に手を伸ばす。しかし、俺の手は彼女の首に届かない。


どうか、どうか彼女を俺に返してください。そう無様に神に乞えば、なんとか俺の指はマナの頬に触れる。瞬間、瞼が重くなり、虚脱感が体を襲う。

そして意識は徐々に遠くなっていき、俺は譫言のようにこう口にした。



「林檎、美味しそう……」



最低にも最期に口にした言葉は、不幸にもマナと初めて交わした言葉で。

俺は愛しい人の頬(赤い林檎)に手を乗せて、幸福な夢の中へと沈んで逝く。


ただ、これはある種の幸福だったのだろう。

だって、最期の最期で俺らはもう2度と結ばれず、お互いがすれ違ったままで永久の決別を果たすなんてことを知らなくて済んだのだから。



はい。こちらがトゥルーエンドもとい正規ルートです。

元はと言えばこの話しかありませんでした。


しかしアレだし、アレだし、アレだし、林檎食べられなくなるわ!!と執筆中の織坂が激怒しましたので、先日あげたノーマルエンドを急遽作った次第です。


このエンドだと、リアム君はただソフィアや『原初の災厄』、さらにはマナにさえ責任転嫁して、「自分は苦しんだ、これだけ辛い思いをしたのだからそれ相応の対価を与えろ」と噎び泣き、また同じ過ちを辿って眠ると言った慙愧に堪えない結末となりました。


前回のと読み比べていただければ分かるのですが、こちらのリアム君の方が人間として最低なのはよく分かると思います。


結局、マナが残した慈悲(干渉能力とか覚醒の下り)には目もくれず、ただそれこそ与えられて当然と思ったまま、幼い頃に回避したはずの過去を再演してしまったわけですから。


……と言うように、このリアムという人間は利己的であり、例え「英雄や戦いが嫌いだ」と言っておきながら、それに焦がれては救いを求めるし、マナへの想いに何1つ報いず生を終えた敗者だということです。


正直、不快感がかなりあると思いますが、この『マナイズム・レクイエム』と言う作品はそういうもので、リアムという人間の本質と終わりを書いた物語です。


こんなオチとなってしまいましたが、今まで読んでくださった読者の皆さま及び、ご協力いただいた非実在反粒子さんにはこの場をお借りして再度お礼を言わせてください。ありがとうございました。



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