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青の眼差し  作者: 窪田楓
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家族

7.

 今日はもうすべきことは終えたため就寝準備に入っていると、シンラがまた例のことを尋ねてきた。


「で、実際お前ってレアナのことどう思ってんの?」

「だから別に何とも思ってないさ」


 少し強めの口調でガイが答える。


「いやいやでもさ、他の部隊でもけっこうな噂になってるんだぜ。あの2人デキてんじゃねぇのかって」

「デキるってなにが」

「……お前マジで言ってんのか?」


 やれやれとシンラが呆れ顔になっている。

 シンラがここまで言うのも無理はない。正直2人はかなりの美男美女であり、ことガイに関しては少し近よりがたい硬派なオーラを放っているが異性からかなりの人気があった。そんなガイの心にグイグイ迫り、今の親友以上の特別な関係を築いたレアナは同期の少女らからも尊敬されていたし、彼らの恋仲を願っている者たちも少なくはなかった。


「おまけにルナもいるしなぁ」

「ルナこそ関係ないよ」

「お前ら裏で何て呼ばれてるか知ってるか?」


 シンラがニヤニヤしながら尋ねた。


「いいや」

「子持ち夫婦」


 思わずガイは吹き出した。たしかにルナに対する面倒見はいいし、それでレアナとの距離が近くなったのも事実だが、まさかそんな風に呼ばれてるとは。


「みんなもっと他に考えることはないのかな」


 少し耳を赤くしながらガイが答えた。


「お、反応したねぇ。普段は寡黙なガイ君もこれには照れずにはいられねぇよなぁ!?」


 シンラがここぞとばかりに囃し立てる。


「はいはい」


 布団を顔までかけて無理やり会話をシャットアウトする。しかし頭の中はシンラの話でいっぱいだった。そうか、今まであまり意識していなかったが、たしかにレアナが時折みせる仕草や笑顔を素敵だなと感じたことは何度もあった。

 そう思い始めると無意識に顔が熱くなっていく。こんな調子ではいけない。ここには戦いにきたのに、そんな恋だの愛だのにうつつをぬかしている場合ではない。そう分かっていてもやはりシンラの言ったことが、レアナのことが脳裏に焼き付いて離れない。


「おやすみ、()()()()


 シンラはまだふざけている。


「おやすみ」


 ガイは布団から顔を出さないまま目をつむる。戦いに集中、そうは思っていても、今日の会話はしばらく引きずりそうだ。


8.

 自室のベッドに腰かけたキオは、帝国にいる家族の写真を眺めていた。

 みんな元気にしているだろうか。

 今回の作戦が成功すれば多くの報酬が貰えるだろう。そうすればより一層家族に恩返しができる。

 身寄りのない自分を、何も憶えていない自分を拾ってくれた家族には本当に感謝しかない。


「キオ……」


 写真立てを置きぽつりと呟く。キオという名前は家族がつけたものではなく、唯一当時のキオが憶えている言葉だった。唯一憶えているということはキオ自身と何か深く密接した意味を持つ言葉なのだろうが、その意味はキオ自身未だに分かっていない。

 何があれ、私は私だ。

 キオはゆっくりとベッドに横になる。ひとまず今は目の前のことに集中すべき時だ。いつどんな事態になるか分からない。ベッドに横になってはみたものの、完全に眠るよりは仮眠の状態に近い。安心して何時間も眠れるほどここは安全な惑星ではないし、騎士団に所属しているキオなら他の兵士たちよりも常に気をはっておく必要がある。

 一応かたちだけでも目をつむってみる。

 そもそもキオは「夢」というものを見たことがない。それが脳の病気なのか医者は分からないと言っていたが、いずれにせよ今のキオにはそれ自体は何ら不都合なことでもなかった。

 でももし、夢を見ることができるなら。それはどんな夢だろう。

 自分の将来?

 家族との未来?

 はたまた全く別の人生?

 こんな戦いとは無縁の平穏な世界での日々?

 それとも……忘れてしまった昔の思い出?

 そう、もし夢を見ることができるのならば迷わずキオは昔の自分についての夢が見たいと願っていた。

 自分の本当の家族は、記憶を無くすまでどんな性格でどんな人生を送っていたのか。知れるのなら当然知りたい。

 自分という人格が目覚めたことで以前の記憶が消えてしまったのなら、それは少し悲しいし申し訳ない気もする。

 昔の私の家族は今も私を待っているだろうか。

 そんなことを考えながらキオは少しだけ眠りについた。

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