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青の眼差し  作者: 窪田楓
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暗雲

5.

 真っ黒な空、世界全てが仄暗い灰色だ。

 窓の外から見えるブルドの景色は想像よりもはるかに不気味なものだった。


「なぁ、なんで明かりつけねぇんだろうな」


 シンラが不思議そうに尋ねる。


「そりゃ、こんな暗闇の中で明かりなんかつけたら敵に居場所を教えてるようなものでしょ」


 レアナが間髪入れずにツッコム。


「怖いよ~」


 ルナが怯えている。この暗さだ、無理もない。小さな少女が怖がるには十分すぎる。


「大丈夫。ルナは中にいていいからね」


 ガイは優しく声を掛けた。

 ここからは僕らの仕事だ。早速準備に取りかかる。


「ええと、まず何からすんだっけ?」

「武器とか装備とか、あとは設営テントの運び出しかな」


 レアナがシンラに言う。


「まぁ下っ端だした。そんなもんからか」

「おいお前ら、早く仕事しろよ」


 話し込んでいると上級兵の人に声を掛けられた。


「へーい」


 シンラが面倒くさそうに返事をする。

 ギャラガ帝国では一般兵、上級兵らが集った部隊を1人の騎士団員が仕切っている。それがいくつも存在して組織として成り立っている。

 そして更にそれをまとめ、牛耳っているのが皇帝である。他にも食事係、モニター室員やルナなどの例外は存在するが戦闘部隊としては以上のような構成だ。


 みんなでせっせと仕事をこなす。元々どの部隊もかなりの人数がいるので時間はあまりかからない。


「なんか、あっちゅーまだったな」

「そうだね」


 ひと仕事終えたシンラとガイが腰を下ろす。

 かなり良い場所に着陸したからだろうか。しばらくは敵との戦いは避けられそうである。もっともいつかは必ず対峙することに変わりはないのだが、長旅の疲れもあって少しは休憩が欲しい。


「ねぇガイ、遊んでよ~」


 先ほどまで怖がっていたルナだが少し元気を取り戻したようだ。


「いいよ、おいで」


 ガイが呼ぶ。


「あれやってよ、いつものやつ!」


 いつもの、とはガイが意識を集中するときによくする剣捌きのことである。ルナはそれを見るのが好きだった。

 独特な間合いと居合術、剣の持ち手をいくようにも変えながらなめらかに剣を捌く。これはガイが独学で編み出したオリジナル剣術である。


「ふんっ!ふんっ!」


 横で見ていたルナが真似を始めた。


「いっつもごめんねガイ」


 レアナが部屋にやってきた。


「いいんだよ、いつものことだし」ガイが答える。「それにルナは筋がいいよ」

「ほんとに!?」

「こらこら、調子に乗らない。ガイも嫌なら嫌って言ってよね」


 レアナが申し訳なさそうに言う。


「しっかしいつ見ても独特か構えと動きだよな」

シンラが感心しながら呟く。

「我流だからね」

「それってなんか利点でもあるわけ?」

「個人戦に強い」


 ガイとシンラはよく模擬戦で戦ったが、たしかに個人戦ではほとんどガイは無敗だった。


「敵に対してもその調子で頼んだぜ」


 シンラがガイの肩を叩く。

 そう、あくまでも敵は覇王とその仲間だ。

 ガイは再び剣を構え、ゆっくりと動き始めた。


6.

「防御シールド展開、索敵レーダー起動」


 大きな声と共にシールドが展開していく。


「ひとまず第1段階終了?」

「そうだな」


 声を掛けてきたジャオにキオが頷いた。

 防御の面ではとりあえず安心だろう。一般兵の若い兵士らも船内に戻ってきた。


「とは言っても、まだまだ気は抜けないが」


 キオはゆっくりと腰を上げ、船内のモニター室へと向かう。


「どこ行くんだ?」

「モニター室だ。索敵レーダーに反応がないか見ておきたい」


 そう言うと足早にモニター室へと歩みを進める。


「いらっしゃいましたか、キオ様」


 モニター室長が挨拶をしてきた。


「その呼び方はやめてくれ。キオでいいよ」


 モニター内の動きを観察する。特にこれと言って大きな動きはないようだ。


「引き続き監視を頼む」

「了解しました」


 モニター室から出る途中、団長とすれ違う。


「お前たち、準備だけは整えておけ」


 団長はそうとだけ言い残し去っていった。


「で、団長様は何を考えてるわけさ」

「敵に位置がバレて奇襲される前に、あらかじめ威喝かの部隊で分散しながら出発し、発見しだい全部隊で攻め込むつもりだろう」


 いつ分からない攻撃に怯えるより、こちらから先に先手を打つ。

 実際、過去に奇襲を受け大きな被害を出した時もあるらしい。攻撃は最大の防御ということだろう。


「できれば俺の部隊とは出くわしてほしくないね」

「私はとっとと倒して家族のもとへ帰りたい。そのためならいつでも戦う覚悟はできてるよ」

キオはきっぱりとした口調で答えた。

「お前本当に女かぁ?」

「うるさい」


 キオがジャオの横っ腹に強烈なパンチをお見舞いする。悶絶しその場に倒れ込むジャオをほって、キオは自室へと向かった。

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