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青の眼差し  作者: 窪田楓
14/28

書籍

27.

「おいガイ、起きろ」


 シンラに体を揺さぶれながらガイが目を覚ます。


「どうしたの?」


 眠い目をこすりながらシンラに尋ねる。


「召集令だ。戦いが始まるんだってよ」


 ついにこの時がきたか。

 ガイは急いで服を着替え、自分の部隊の作戦会議室へと向かう。

 会議室の中にはすでに多くの兵士が集まっていた。

 じはらくするとこの部隊を率いる騎士団員、すなわち部隊長が姿を現した。


「みんなおはよう」


 全員が立ち上がり敬礼する。

 やはり騎士団員レベルとなると1人いるだけで空気がピリつく。

 部隊長はゆっくりと腰をおろし口を開いた。


「本日、各部隊に別れてブルド各地を探索、敵に会いしだい戦闘に入る。各々しっかりと準備しておいてくれ」


 それだけ言い残す部隊長は立ち去っていった。


「一般兵は武器や食糧をモービルに詰め込め!」


 上級兵が大声で指示する。モービルとは「大型浮遊式ジェットモービル」のことであり、1つの部隊全員が乗り込めるほどの大きな移動探索機のことだ。

 ガイたち一般兵は指示通り武器庫へと急ぎ、必要な数の武器を運んだ。


「やっと始まるんだな」


 シンラがそう呟く。


「ああ」

「なぁガイ、いまどんな気持ちだ?」

「シンラは?」

「俺はもちろんワクワクしてるぜ。だってようやく戦えるんだぜ?この日の為に退屈な宇宙の旅を我慢してきたんだからな」

「そうだね。僕も同じ気持ちだよ」


 ガイもシンラもやる気に満ち溢れていた。

 闇の惑星ブルド、そこを支配する覇王。

 一体どんな戦いになるのだろう。

 恐くないと言えば嘘になる。だがそれ以上に、彼らは戦いへの興奮を抑えられずにいた。

 武器一通り積み終えると、部屋に戻りパワードスーツを身にまとう。


「装着」


 そう声に出すと、ブカブカだったスーツが体にぴったりと張り付いた。

 細かい武器や小道具をポケットに入れ準備完了だ。


「行こうか、シンラ」

「おう」


 そう言って2人はモービルに乗り込んだ。

 中にはすでにレアナがいた。少し不安そうな顔でうつむいている。


「おうレアナ、調子はどうだ?」


 シンラが声を掛けた。


「大丈夫よ。そっちこそ足引っ張らないでよね」


 口調は元気だが、やはり少しだけ表情が暗い。シンラは気づいていないようだが、ガイはこの異変を見逃さなかった。


「レアナ、どこか元気ないね」


 図星だったのか一瞬だけ黙るレアナだったが、いつもの笑顔で「本当に大丈夫だから」と答えた。

 少しだけ心配だったが、本人が大丈夫と言うなら大丈夫だろう。

 そんな会話をしていると、次々と一般兵や上級兵たちが乗り込んできた。

 そしてついに、部隊をが搭乗した。


「先に言っておくよ。ここから先は死が待っている世界だ。何が起こっても不思議ではない。だけど君たちはそれを分かっていてここまでやってきた。その勇気を僕はほこりに思うよ。共に奴らを滅ぼそう」


 部隊長の激励でモービル内のボルテージは一気に最高潮に達した。


「それでは行こう」


 その声と共にエンジン音がかかる。

 次々と他の舞台裏のモービルが浮き上がり、暗闇の中へと消えていく。

 そして次の瞬間、ガイたちが乗ったモービルもその闇の中へと入っていった。


28.

 朝になった。窓の外を見ると、積み荷と兵士を乗せたモービルが次々と旅立っていくのが見える。

 結局キオは騎士団メンバーでただ1人船内に残ることになった。

 特にやることもないのでモニター室に顔を出す。


「おはようございますキオ様」


 モニター室長がこちらを向く。


「だからその呼び方はやめてくれ」


 キオは照れくさそうにそう答えた。


「レーダーに反応は?」

「今のところ異常なしです」


 どうやらまだ敵にこちらの居場所は気づかれていないらしい。

 そのまま位置を悟られることなく覇王を倒すことができればよいのだが、果たしてそううまくいくだろうか。


「引き続き監視を頼む。何かあれば知らせてくれ」

「了解しました」


 そうしてキオはモニター室から食事部屋へと歩みを進める。

 そういえばジャオのやつ、何の挨拶もないまま行ってしまったな。あいつのことだから心配ないと思うが、無事に帰ってこれる保証なんてどこにもない。これが永遠の別れになる可能性だってあるのだ。


「一言何か言ってくれてもいいだろ」


 キオは独り言を呟きながら食事部屋に入った。

 目覚まし代わりのコーナー(砂糖とミルクをたっぷり入れた)を飲み、軽く食事を取りながらキオは夢のことを思い返していた。

 泣いている子供。

 自分の失われた幼少期の記憶。

 何か繋がりがあるのか、それとも私の考えすぎか。

 いずれにせよここで今すぐ答えが出せるようなことではなかった。

 食事をすませ自室に向かうとき、ふと昨日のことを思い出した。

 グラスの部屋を尋ねた時、彼が読んでいた本。

 一瞬だがラベルのようなものがついていた気がする。ということは帝国からわざわざ持参したものではなく、おそらく船内にある書籍管理室から拝借したものだろう。

 ギャラガ帝国からブルドまでの数ヶ月、暇を潰すために様々なものが船内に持ち込まれた。大量の書籍もその1つだ。

 たしか書籍の中には小説だけではなく歴史書の類いとあったはずだ。

 キオはハッとする。

 そうだ、歴史書なら何か分かるかもしれない。

 キオは方向転換し、書籍管理室へと急いだ。

 書籍管理室は壁一面に本がびっしりと詰め込まれた、小さな図書館のような部屋だった。大量の本の1つ1つに小さなラベルがしてあり番号が振られている。

 どうやらキオ以外に人はいないらしい。

 キオは検索機から自分の記憶を失くす以前の歴史について書かれているものを全て集めた。

 30冊以上はあるだろうか。正直ここまで多いとは思っていなかったのでその数に挫折しかけたが、少しでも失われた記憶に辿り着けるのなら多少の苦労は仕方がない。

 キオは本の山に手を伸ばし、1冊ずつ読んでいくことにした。

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