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青の眼差し  作者: 窪田楓
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忠告

23.

 レアナの話を聞いてみんな黙っていた。

 必ずまた会える?

 それはどういう意味なんだろうか?


「まぁでも夢の話だろ?あんまり深く考えることないんじゃねぇの」

「分かってる……分かってるけど、私って昔から夢に見たことがよく現実になるのよ」

「正夢ってやつ?」

「そう。いつからか分からないけど何度もそういう経験があるの。コップを割る夢を見たら次の日手からコップを滑らせて割っちゃったし、養成所で誰かが喧嘩する夢を見ると数日後本当に養成所で喧嘩が起きたの。見る夢もそれが起こるタイミングもまちまちだけど、必ず起きるのよ」


 レアナは少し深刻そうな顔で話す。

 こんな表情をするレアナを見たのは初めてだ。その話が嘘ではないことはその場にいた全員が理解した。


「昨日見た夢は、その正夢に近いものだとレアナは感じたんだね」

「うん。だから少し不安で……って言っても私自身どうすればいいのか分からないし、こんなこと相談されてもみんな困るのは分かってるんだけどね」

「そんなことねぇよ。誰かが困ってるんなら俺たちはいつだって力になるぜ。なぁガイ」

「そうだね」


 ガイはそう言いつつも、自分が見た夢のことを考えていた。

 誰かが自分を読んでいる。不思議でとてもリアルな夢。あれは正夢なんだろうか。


「そういやガイ、お前さっき妙に夢の話に食いついてたけどどうかしたのか?」

「別に何でもないよ」

「でも昨日のお前スゲェうなされてたぜ。お前も変な夢見たんじゃねぇのか?」


 こういうところでシンラは勘が鋭い。

 ガイは思い切って話してみることにした。


「……そうだね。たしかに僕もおかしな夢を見た。レアナが見たものとは全然違うけど」

「それってどんな夢だったの?」


 レアナが尋ねてくる。


「誰かが必死になって僕を呼んでるんだ」

「誰かって?」

「分からない。声にも聞き覚えがない」

「ガイは正夢とか見たことあるの?。

「いや、そういう体験は一度もないよ。ただレアナの話を聞いて少しだけ心配になってきた」


 みんなはただ黙るしかなかった。


「……ごめんね、なんか変な空気にしちゃったね」


 レアナが申し訳なさそうに謝る。


「別にいいって。そういう些細なことを相談できるくらい信頼されてるってことだろ」

「シンラの言う通りだよ。僕も話してくれてとても嬉しい」


 レアナが安堵の表情を浮かべる。


「ありがとう。2人が友達で良かった」

「ガイとは友達以上って感じだけどな」

「うるっさい!」


 またいつもの雰囲気に戻る。

 ガイは安心して食事の続きを取った。

 その後あんな大事件が起ころうとは、この時はまだここにいる誰も想像していなかった。


24.

 時間帯は夜を回っていた。

 キオは自室で1人昼間のことを思い返していた。

 どうして団長は自分をブルドに派遣することを反対していたのか。

 また何故今回の任務から私を外したのか。

 合理的な判断だとスクリュウは言った。いや違う。それだけははっきりと断言できる。

 何かブルドから少しでも遠ざけたい理由があるはずだ。だが考えても答えは見つからない。

 やはり思い切って直接団長に尋ねてみるべきか。

 しかしグラスとスクリュウでさえあの調子だ。団長が答えてくれるわけがない。

 ベッドに横になり、深くため息をつく。

 もういっそのこと考えるのをやめてしまおうか。手に入らない答えを追い求め続けても時間と体力が削られるだけだ。

 それに拠点を守るのも立派な役目の1つだ。任されたからにはやり遂げなければならない。

 もう悩むのはやめよう。

 そう思って目をつむった時だった。

 ふとスクリュウとグラスの言葉を思い出す。


『これは忠告だよ』

『お前はいま幸せか?』


 あの2人の言葉が脳裏をよぎる。

 そういえばあれはどういう意味だったのだろう。

 キオが覇王について尋ねるとスクリュウは去り際に「忠告」だと言った。これ以上深入りするなという意味の忠告だろうか。

 団長の件で部屋を訪れた時、グラスは「幸せか」と尋ねた。これ以上知るとその幸せが壊れてしまうという、これもまた忠告だろうか。

 やはり何かが、私の知らないところで何か大きな陰謀が動いている気がする。

 一体何が、私の知らないところで起きているのだろう。

 考えるのをやめようとしても次々と疑問が湧いてくる。

 ここまでのことをするということは自分にとって本当に恐ろしい真実が隠されているのかもしれない。

 それを知れば不幸になるのは私だけですむのだろうか。

 仲間や家族までもが不幸になってしまう可能性だってあるだろう。

 そこまでの危険を承知で、それでもなおそこから先に一歩踏み出す勇気がキオにはまだ無かった。

 今はとにかく眠ろう。

 そう言い聞かせながら彼女は深い眠りに落ちた。

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