表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワード・クライシス  作者: フレア
4/5

組織

―――――――――――――――――――――――――――

4月日


学習


―――――――――――――――――――――――――――

























「ごめんね明、綴のこと任せたわよ」


「おっけー。任せて」


「息子の退院日だってのに迎えに行けないなんてなぁ…」


「仕事なんだからしょうがないよ。お兄ちゃんだって理解してる筈」


「わりぃなぁ…綴にもごめんって伝えといてくれ」


「了解」


「任せたわよー!」


「うん」


そういうと父と母は仕事に向かう。7月14日、今日は待ちに待った兄の退院日なのだ




夜、病院へ向かえにいく予定だ


あれから一週間。思い返すだけでも色々なことがあった



自分にとって大切な、生き方そのものとも言える特別な言葉『ワード』


そのワードに振り回され怪物となってしまう人達


そしてそんな怪物達を撃退する、現代文同好会


改めてアニメや漫画みたいだな〜。と思わず笑ってしまう   


「って!時間!!」


そして私も慌てて最後の一人登校を始めた












「よう、相廉」


「!鹿江君!」


「体調は大丈夫なのか?」


「あぁ!そんなことより、倒れた僕を運んでくれたみたいで…本当にありがとう」


「いいよ、礼なんて」


「正直あの日の記憶が朧気でね…早めの熱中症かなんかだと思うんだけど…なんか色んな人に迷惑かけちゃったみたいで…」


「あぁ、事乃葉のことか」


「知り合い?だったら僕が謝ってたって伝えてくれないかな」


「自分でいきゃあいいじゃねえか」


「…いや事が事だから、今、直接行ったら怖がらせちゃうかなって」


「あー」


「勿論、時間を置いて自分でも謝りに行くつもりだけどね」


「真面目だなぁ…」


「そりゃ、僕は誠実にがモットーだからね」


「そうか。まあ伝えとくよ」


「ありがとう!助かるよ」






「…まるで別人ね」


「その反応だと嘘ついてたり、すっとぼけてる訳じゃねえんだな?」


「ええ、ワードのことも、あの時のことも、まるっきり覚えてないみたい」


「あの逃亡犯も容疑を否認してるらしいな」


「…どう思う?」


「ま、どう考えてもおかしいわな」


「そうよね…ここ最近の覚醒者の大量発生といい、変なことばっかり…」


「まあ考えても仕方ねえ。部室行こうぜ」


「…ええ」



―――――――――――――――――――――――――――

4月14日


『組織』



―――――――――――――――――――――――――――


「あっ!私そろそろ行きますね!」


「今日退院なんだっけ?」


「はい!」


「そういえばお兄ちゃんもワードに覚醒しかけてるんですよね」


「そうね」


「…多分兄も話したら味方になってくれますよ。そんな気がします」


「だと嬉しいわね」


「はい!」


「んじゃあな!事乃葉」


「失礼します」


短めの会話をして、早めに部活を切り上げた私は病院へと歩みを進める


一週間ぶりだけど大丈夫かな…なんて兄の心配をしつつ、今後に想いを馳せる


兄の性格上確実にワード討伐は手伝ってくれるだろう


まだ兄がどんなワードに覚醒するかは分からないけども確実に戦略の幅は広がると思う


先輩達がそれぞれ攻撃兼守備、回復役。そして私が分析と考えると、純粋なアタッカー系の能力だと有難いのだけど…


まああの兄のことだ。どんな能力でも使いこなして役に立つのだろう



なんて考えていると、病院が見えてきた


そろそろ到…










その瞬間だった。轟音と衝撃。反射的に首を病院へ向ける


まるでドラマのように煙を立たせる病院。続いて鳴り響く警報


「嘘…」


思わず声が漏れる


そして、呆然としてる間にも追い討ちを掛けるように、二回、三回と爆発が起きていく



「ッ!」


その轟音によるものか、それとも別の何かか。気を取り戻した私は真っ先に病院へと走る


自分に出来ることなんて無い。危険なだけ、迷惑を掛けるかもしれない。分かっていても体を止めることが出来なかった


お兄ちゃん…!!









自動ドアはまだ生きているらしく、入り口から内部へ入ることが出来た


「…。……」


「…………。」



話し声…!


すぐに身を屈める。この爆発の犯人だろうか…。これが人為的な物ならばますます兄の無事が怪しくなってしまう


確実に危険。相手は恐らくテロリストか何かだろう


敵がどれだけ居るか分からないが、ここまで大胆なことをする組織ならば、大人数の可能性が高い


スパイでもなければ見つからずに上まで行くなんて不可能だろう


この人達が居なくなったらすぐに入り口へ引き返して警察に任せるのが世界だ



なんて分かっているのに…やはり…諦められない


私は手にノートとペンを生み出すと物陰に隠れて聞き耳を立てる


「本当に見張りなんているのかねえ?」


「な。10人もいんだから仮に誰か入ってきてもなんとかなんだろ」


「逆にこんなとこで俺等二人じゃ俺らのが危ねえよな」


聞いたことを丿ートに書き込む。敵は10人。そしてこの階には恐らくこの2人だけ


あとは、この男のなんとかなるという確信が気になる


流石にこの騒ぎ、警察は来ると思うのだがコイツらは10人でなんとかできると思っている…。単に楽観的すぎるのか、何かしら手段があるのか


「あーやめやめ!やってられっかこんなん!」


「ボスんとこ行くか」



「…」


今の状況を敵が居なくなってラッキーと見るか、これ以上情報をつかめなくなってアンラッキーと見るか…


普通ならば前者であっただろうが、私にとっては後者だ

ワードによる思考加速がある以上、少しの情報から大きな結果が得られた可能性もあった


まあ…行ってしまったものは仕方がない。声が遠ざかったいくのを聞きながら、私は病院の内部へ足を踏み入れていった




今の情報をまとめると相手は組織であり10人。『ボス』と呼ばれる存在がいることから上下関係もあるようだ


そして何故か相手は絶対の自信を持っており、見張りは居なくなってしまった



細心の注意を払いつつ、階段を上る。兄の病室は5階。本来ならばエレベーターを使いたい高さだが、使えば100パーセントアイツらに位置がばれる


奴らが来ないか耳を澄ましつつ二階、三階と歩みを進めていく


素人の聞き耳が役に立つのか?という疑問もあったのだが、そこは『解説』の能力が階層ごとの音響や状況、気配から普段の私では気づかないようなものまで気が付かせてくれる


恐らく思考加速の恩賜だろう


異常無し、異常無し、異常無し。ゆっくりと登り続けて四階


そして気がつく。人の気配がする…それに足音が3人分


身を屈めつつ上を見上げると階段を塞ぐように1人の男が立っていた






「あーあ。俺も見張りかよ。めんどくせえ」


「なーにが万が一に備えてだ。どうせ誰も来ねえだろ」





何故よりにもよってここを見張るのだ


目的地前で足止めされるとは…


それに、『万が一』という言葉。この男は警察が来る可能性を考慮していない様子だ


まさかとは思うが裏で繋がっている…?否、それは流石にドラマの観すぎだろう


現実的にそれは考えづらい…となればやはり奴等は警察が来れないだけの何かを持っていると考えるのが普通だ


例えば…そう、人質だ。この病院の患者達を人質に



待て。患者…。そういえば静かすぎはしないだろうか?謎の組織に病院がジャックされ、爆破までされていると言うのにパニックに陥った様子はおろか、子供の泣き声一つ聞こえてこない


これだけ耳を澄ませていたというのにだ


それどころかアレからそれなりに時間が立っていると言うのにパトカーの音すら聞こえてこない




「察しが良いですね」


「ッ!?」


しまった、この階にいる筈の三人のことを失念していた。つい考え込んでしまっていたのだ…


「アナタの非ではありませんよ。それはアナタの力の副作用のようなものですから」


「え?…私の心を読んでる…?」


「ええ。ワタシのワードの力の一つです」


「ワード…!」 


「おっと危ない」


「ッ!?」


破裂音と共に凄まじい風圧に私のノートが吹き飛ばされる


「拳銃…!」


「失礼。ワタシの心を読まれると色々と不味いのでね?」


慌てて上を見る。今の発砲音で確実に気づかれた筈だ。すぐにでも仲間が


「来ませんよ。安心してください」


「ワタシの能力でそうなるようにしていますから」


能力を仲間に?というかまずこの女は何者なのだ


ノートを手放したせいか、『解説』の力を得られなくなった私の思考は急激に鈍っていく


「それにしても、アナタの能力は素晴らしく厄介な能力ですね。逃してしまったのが惜しい」


「逃した…?」


「おっと余計なことを言ってしまいました。お気になさらず?」


「今の状況もそうですが。アナタの力はその気になれば一の情報から、無数の答えを引き出せる」


「正体を知られたくない者達にとって非常に邪魔で厄介なのですよね」


ノートは私のすぐ背後。振り替えれば取れる位置だ


この女がべちゃくちゃと喋っている間に


「させるわけないじゃないですか」


「ぐっ!?」


脇腹に凄まじい衝撃を感じると壁に叩きつけられる


明らかに暴力に慣れた…そして躊躇のない鋭い蹴りだ


ゲホゲホと咳き込む私を尻目に、女はハイヒールでスタスタと音を立てながら移動し、私のノートを踏みつける


「お話中に行動するなんて悪い子ですね」


カチャリと向けられるのはドラマでよく見る拳銃だ


「そうそう、お巡りさん達には期待しない方が良いですよ?私の能力で来ないように誘導しちゃいましたから」


「っ…誘導?」


もしかして、『常識』の時も『逃走』の時も都合よく人が居なかったのは


「ご名答。私の力ですよ」


「ぐっ!?」


答えと共にボールのように蹴り飛ばされ、思考が揺らぐ


なんて不運だ。まさかこんな状況でこんなところで黒幕を見つけてしまうなんて


「不幸じゃありませんよ。必然です」


は?


「だって、ワタシ達の目的はアナタのお兄様ですから」


「重要な物の前に門番を置くのは当たり前でしょう?」


お兄ちゃんが目的…?なんで…?お兄ちゃんは特筆することもない単なる一般人で……いや、違う。まさか目的はお兄ちゃんのワード?


「それ以上はお答え出来ませんね」


「幽道。」


「おや。ことは済んだのですか」


「あぁ。」


「はよいこや?」


体勢の関係で姿は見えないが、どうやらこの階にいる他の二人も現れたようだ


「このガキは?」


「嵩張る。」


「では、そろそろ時間なので。またお会いしましょう」


待て…待って…!


コイツらの目的が本当にお兄ちゃんだったとして目的が済んだってことはお兄ちゃんは…


「気絶させないのか?」


「必要ないでしょう。この痛みでは高校生じゃ立ち上がれないでしょう」


「そうやろ、早よいくぞ」


女達が立ち去り、5階へ兄の元へ歩いていく


意味が分からない…意味が分からないけど…このままじゃ、きっと家族がバラバラになる…


…そんなことはさせない


「…?ごめんなさい二人とも先に行っていてください」


「疑問だ。」


「…おいあのガキ立ち上がっとる」


「片付けはしておきますので」


「三人のが早いやろ」


「そのとおり」


「…アナタ達がやったら死んじゃうじゃないですか」




グシャグシャになったノートを手に取る




「さあ分析される前に急いでください」


「了解。」


「わあったよ」




手に取った途端ノートは元の綺麗な状態へと戻っていく 

 



視線、行動から考えて1秒後私の足に拳銃を発砲しようとしている




私はその場で跳ねる


すると破裂音と共に、私の真下に穴が開く


「避けた…?」




拳銃の持ち方から彼女は左利きと思われる。右に回れば隙が出来るだろう




「……」


「おっと?」


私は彼女の右に回ると持っていたシャーペンを逆手に握りしめると脇腹に突き刺す


「ァ…っ!?」




彼女は右足から蹴りを放とうとしているようだ




その情報が脳裏に過った瞬間先に女の左足を凪払う


「ッ…!?」




後頭部転倒による気絶狙い。しかし、戦闘慣れしているようで瞬時に空中で受け身の姿勢を取られる


それを視認した私はすぐに後方へ距離を取る。続いて警戒すべきは拳銃による発砲



二秒後に左肩に発砲される可能性あり



右肩を前に出す形で姿勢を変え、銃弾を回避する


『気絶させないのか?』


『…アナタ達がやったら死んじゃうじゃないですか』


女達の言葉から、私を殺すつもりはない…否、殺してはいけない理由があるように感じる


事実この女は足や肩など致命傷に至る確率の低い部位を狙っている


兄が目的という話から察するに、家族である私にも何かしら企んでいるのかも知れない…


思考が逸れた。今はそんなことを考えている場合ではない



…この女は狙ってから放つせいで攻撃にラグが生まれている。そこをつけば倒せる可能性が高い



「一般的な高校生の考察じゃありませんね…それ」


思考を読まれたのか、浮かんだそれに返答するように女が口を開く。思い切り刺してやったのが効いているのか、脇腹を押さえてた状態で


「通りで攻撃が当たらないわけです」


無駄だと悟ったのか女は拳銃を放り捨てる


「『解説』のワードを戦闘にフル活用すればこうまでなるんですね」


やはり…読まれたことで私のワードはバレていしまっているようだ


「ですが、『常識』、『逃走』ではそのように能力を活用することはなかった…それは何故か」


思考が警告を鳴らす。雲行きが怪しいと


「来てください!」


女が声をあげると静観を続けていた上の階層の男が降りてくる


男の体をみるみる内に変貌を遂げていき剣のような見た目へと変わっていく


「アナタの能力には身体強化が入っていない…故に、単純に貴方の身体能力を超える攻撃速度のある暴走者が相手では太刀打ちできない…というわけですね」


「それでは、ごきげんよう」


「…!待て!!」


女が去っていくも、剣の化け物に阻まれて追いかけることが出来ない。



早く倒せれば間に合う…!



そんな私の思考を断ち切るように、化け物は己の剣の体を使い、五階への階段を断ち切ってしまう


「そんな…」


『アァァァァァァァァァァァァァァ!!!!』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ