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8、隠さなくなった気持ち

あれから、財前くんは私が好きだということを隠さなくなった。


今日も可愛いねとか、髪型を変えたらその髪型も可愛いとか。

360°くまなく写真撮りたいとか。


360°って。

それって写真撮る意味あるんだろうか。

理解出来ない。


この前なんて私が止めるまで、携帯の連射機能をフルに活用して100枚以上私の写真を撮っていた。


モデルの私も戸惑うほどだ。

そりゃ好きな人の写真って嬉しいものだとは思うけど。


笑ってと言われて、笑顔を作るけど、写真慣れしていないから微妙な写りだった。

でも、財前くんはそれはそれは喜んでいた。

今まで盗撮写真(うちの学校の写真部に依頼していたらしい)しかなかったから、正面を向いている写真は1枚もなかったからと。


最初は可愛いなんて言われ慣れてなくて戸惑っていたけど、最近は少し慣れた。


どういう反応が正解なのかわからなくて、最初は毎回「ありがとう」とお礼を言っていたけど、最近はあまりに何回も言うから、またかみたいな感じになって「はいはい、どうも」みたいに流すことも出来るようになった。


慣れって怖い。

これって、慣れてはいけないような気がするんだけど。


可愛いなんていうの財前くんぐらいなんだけどな。

目が悪いのか、趣味がかわっているのかと思いつつ、うぬぼれちゃいけないって思うけど、かわいいって言われるのは嬉しくて。

そして何回言われても嬉しいものなのだ。


やっかいだよなあなんて思っている。


見た目は、清潔に見える程度を心がけているつもりだけど、自己評価は中の中だ。

まあ、簡単に言うと普通だと思う。


今日は、暑いから髪型をお団子にしていたら、財前くんが目をキラキラさせて

「かわいい。超かわいい。写真撮りたい。いい?」


「この前もそんなこといって、沢山撮ってたでしょう。そんなに私の写真いる?」


「沢山あっても全然困らないし、篠原さんの写真増えていくのが嬉しいんだ。お団子の髪型のはないから欲しい。そういえば、専用のカメラ最近買ったんだ。これでこれからはシャッターチャンス逃さずに沢山いつでも撮れるよ。早速撮っていい?」


「・・・」


財前くんの目がキラキラして嬉しそうに語るから、断れなくて

「写真は2枚までにして」と答えるのが精一杯だった。


**********


「あの、財前くんが葵をねえ」

秀ちゃんにしみじみ言われて、まあ普通はそんな反応だよねと思った。


「信じられないよね。そんな理由で人の借金払うなんて」


「なんか、引っかかってる感じ?」


「だって、結局友達だと思っていたのに違うし。高額のお金が絡めばもう友達とは言えないよね。100円とかじゃないんだよ。ファンみたいなものだと思ってくれと言われても、私アイドルじゃないし。お金貢がれて嬉しいかというと高額すぎて素直に喜べないし、違うような気もするし。なんか変な関係だなって」


「別に関係に名前なんて付けなくていいじゃん。いろんな形があると思うよ。前向きに考えなよ。好きな子のためとはいえ、1億円以上も払ってくれる男子はこの広い世の中で財前くんしかいないよ。俺は払えないし。そんな優しくなければ、財力もないから」


「・・・」

秀ちゃんの言っていることは正論過ぎて何も言えなかった。


ちなみに財前くんにお金はどうやって用意したのか聞いてみると、今までのお年玉やら小遣いをコツコツ貯めた貯金を元に、投資をして貯めたそうだ。

未成年だからと執事の人に頼んで代わりにして貰ったみたいだ。

ちなみにお年玉は親の会社付き合いの人や、親戚から貰うため、数十万となるらしい。


貯金額からお金から違う。

財前くんてしみじみお金持ちだなと思った。


私にはないから出来ないけど、

一応「私もお金貯められるかな?」と聞いたら、先読みとタイミングが重要らしく、止めた方がいいと言われた。


1億円2千万円のお金を稼ぐのは簡単じゃないのがわかる。

財前くんが稼いだお金とはいえ、よく払ったよなとやっぱり思う。

秀ちゃんのいうとおり、そんなことをするのは財前くんだけだよなと思った。


**********


金曜日。

財前くんの家で、二人で勉強していた。


「あのさ、思ったんだけど財前くんて私より頭いいよね。勉強教える意味なんてないと思うんだけど」


「でも嫌いな科目とかあるし、そういうのは篠原さんに教えて貰うと気合いが入るから、プラスになってるよ。意味はあるよ。それに___」


「それに?」


「一緒にこうして勉強するのひとつの夢だったんだ。今本当に幸せ」


「・・・それは、小さな幸せだね」

にこにこ笑う財前くんに、私は乾いた笑いしか出なかった。


「まだまだ、夢があって。でも断られるような気がするから言ってないんだけど」


「?」

そんなふうに言われると気になるけど、聞いていいものか迷う。

果たして私で叶えられるのだろうかと。


「一緒の大学に行きたいんだ。一緒の大学生活。考えるだけでワクワクしない?」


「・・・えっと、特にはしないかな。それに私高校卒業したら就職する予定なんだけど」


「大学費用は俺がもちろん俺が出すよ。それに篠原さん頭いいのに勿体ないと思うんだ。俺の夢を叶えると思ってお願い」


「・・・」

必死に手を私に合わせる財前くんを見て、なんでこの人私にこんなに必死なんだろう。

不思議でならない。


だけど財前くんに、これ以上必要のない出費をさせるのは絶対嫌だった。


「それはお断り。進路が同じとは限らないし、無理させるのは嫌だから」

財前くんのいうことはなるべくいうことが聞ける範囲できいてきたけど、私は初めてきっぱり断った。


これでまた大学のお金まで出して貰ったら、人として駄目な気がするから。

財前くんにおんぶにだっこなんて絶対にいやだ。


財前くんは「そうだよね」と笑顔を必死に作っていたけど、あきらかに落ち込んでいた。

夢のひとつがダメになったってことなんだろうけど、私も今回ばかりは妥協出来なかった。







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