6、見間違いであってほしい
幼なじみの秀ちゃんに財前くんのことを話した。
借金の返済、週2回会うこと。
うさんくさいと言っていた秀ちゃんだったが、財前くんは聖王では有名人で知っていたらしく悪い人ではないと思うけどと心配してくれた。
財前くんは聖王の中でもかなりの金持ちの部類に入るらしいから、確かに借金返済も出来るのは納得できるけど、なにかあったら俺に言えよって言ってくれた。
本当に頼もしい幼なじみだ。
「そういえば、前にテニスの交流試合の時にいたけど覚えてない?」
ふと言われて、半年前の聖王とうちの高校の交流試合があって、応援に行ったことを思い出した。
秀ちゃんに応援に来てと言われて、初めて聖王に行った。
聖王高校は応援席まであるテニス場といった施設まであって、テニスコートをフェンスで囲んでいるだけのうちの学校とは違うから驚いたのだった。
私は観覧席の端っこで応援していたけど、聖王の応援がとにかく凄かった。
練習試合のはずなのに、吹奏楽部が演奏までしてたし、チアリーダーや応援団まで来てたし。
秀ちゃんの対戦相手がとにかく人気が凄くて声援がとにかく凄かったのはなんとなく覚えていた。
私は秀ちゃんしか応援してないし相手なんか気にしていなかったけど、その時の対戦相手が財前くんだったらしい。
財前くんてそんなに人気あるんだとしみじみ思った。
あれから1ヶ月。
私達は週に2回定期的にあって、勉強したり雑談したりテレビを見たりと自由な時間を過ごしていた。
結局家庭教師というより友達として遊びに行っていた。
高校では相変わらずぼっちだけど、久し振りに友達が出来たことが嬉しくて、財前くんと会う水曜日と金曜日が楽しみだった。
借金は無くなったことで、うちの生活もなんとかやっていけそうだ。
母の入院はまだ長くなりそうだし、入院費も高額だ。
父も財前くんに悪いと思いつつ、甘えさせて貰っていた。
財前くんとは友達でいたいから、出世払いで返したいと思っている。
高校卒業したら、就職の予定だし。Wワークでアルバイトもして沢山お金を稼ぐつもりだ。
今度両親に何かあっても平気なように。
誰かの手をかりなくてもいいように。
友達って対等なものだと思うし。
お金のことがあるかぎり、真の友達とは言えない気がするし。
だけど財前くんは気にしなくていいよと笑う。
篠原さんと友達になれたことが嬉しいからと。
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ある日の水曜日、今日は二人でゲームをしていた。
ゲームをしてこなかった私は、下手だけどゲームが出来るのが嬉しくて、対戦しながら「わー」とか「ぎゃー」とかいうのが楽しい。
ついつい白熱してしまった。
部屋のドアをノックする音が聞こえ、
「ぼっちゃま、すいません」と執事に呼ばれて「ごめんね、ちょっと席外すね」と移動する財前くん。
静かになったなとぼけ~としていたら、財前くんの携帯が鳴った。
軽快な着信音だなと思いながら、画面が光って見えた。
画面を見て、心臓がばくばくと鳴る。
見てはいけないものを見てしまったような気もする。
すぐ暗くなって一瞬しか見てないし、見間違いかもしれない。
でも、見間違いでなければ携帯の画面は私の画像だったのだ。
なんで、私?
これって盗撮ってやつ?
そう思ったら、今まで財前くんが偽りの姿なんじゃないかと思える。
私、だまされてるのかな?
そのうち、臓器売れとか言われるんだろうか。
しばらくすると「おまたせ」と財前くんが戻ってきた。
ゲームの続きを始めたけど、全然集中出来なかった。
私はその日以来、財前くんの顔を見ることが出来なかったのだった。
だけど、約束は絶対で。
あんなに楽しみだった金曜日がくるのが憂鬱だった。