2、それはある日突然に
前回は期間が間に合わず中途半端なまま公開になりました。申し訳ありませんでした。
主人公の名前などや文章少し訂正しました。
1はプロローグ的に考えて頂ければ幸いです。
「ねぇ、昨日のドラマ見た?」
「見た見た。あのシーンの腹筋が見えるシーンセクシーだったよね」
「わかる。わかる」
「面白い動画見つけたんだけど。見てみて」
「本当だ」
こんな会話とか聞こえてきたら、はたまた反対側は
「昨日駅前にケーキ屋が出来たんだって。放課後みんなで行かない?」
「行く行く」
こんな会話が聞こえる。
だけど、私はこの会話についていけない。
なぜなら、うちにはテレビも携帯電話もネット環境もないから。
そして駅前にケーキ屋が出来たことも今知ったから。
まあ、仮に誘われても(絶対誘われないけど)、お金ないから行けないけど。
私はクラスで浮いている。
いわゆるぼっちなのだ。
高校生活ってもっと楽しいものだと思っていたのに。
きっと3年前なら今の会話にもついていけたと思う。
私の名前は篠原葵。16歳。高校2年生。家族構成父母私。いわゆる1人っ子。
3年前はごく普通の一般的な家庭で育っていた。
そんな私の生活はある日突然変わったのだ。
思い起こせば3年前。
母方の親戚のおじさんとおばさんが来て保証人になってほしいと頭を下げた。
おじさんは会社の社長なんだけど、最近業績が悪化して色々声をかけてお金を借りている状態らしい。
保証人も色々声をかけているけど、断られていると。
必ず迷惑はかけないからと言って。
父と母は、突然のことに一瞬顔を合わせたけど、困っているならわかったとサインして判子を押したのだった。
父と母は本当にいい人なのだ。
私は1番尊敬している。
ここまでは、私も父と母の行動をかっこいいと思っていた。
だけど、ある日おじさんが夜逃げ。
多額の借金を背負ってしまった。
うちの車や電化製品、金目の物は持っていかれ、一気に貧乏生活が始まった。
テレビない、ネット環境もない、レンジも炊飯器もない生活は、慣れるまで時間がかかったけど、なんとかやっている。
家は一軒家だったけど、借家だったためなんとかここに住めている。
だけど、マイホームのために貯めていたお金は借金にすべて消えたみたい。
だけど父と母はいつも笑っていて、家庭は明るい。それだけは凄いといつも思っている。
私だったら卑屈になって、おじさんのこと一生恨むから。
いや、今現在かなり恨んでる。
だけど父も母も一切口には出さない。
だから、私も許さないと思うだけだ。
中学時代はまだ普通の生活もしていたし、友達もいたのだ。だけど生活が一変しても、誤魔化しながらなんとか卒業出来た。
問題は高校に入ってから。
はじめは出席番号近い8人ぐらいの席が近いグループでわいわいしていたのだ。
ただ、流行りものの話とかについて行けず、お金もないから放課後や休日の誘いも断っていたら、篠原は面白くないと仲間はずれにされ、孤立してしまった。
確かに会話がわからずついていけないし、面白いことも言えなかった。仕方なかったのかもしれない。
高校生は流行に敏感なのだ。
孤立したことは悲しいし、辛かったけど、無理に話を合わせようとしたり、知ってるふりを無理することがなくなったことにホッとしたのだ。
休み時間は本をひたすら読んでいる。
今読んでいるのは幼馴染みから借りた漫画の本だけど。気を抜くとすぐ読み終えるから、時間を潰すためわざとゆっくり読んでいる。
「葵。漫画読んだ?続き持って来たんだけど」
朝の登校時、そう言って流行っているだろう漫画の3巻を差し出す幼馴染みこと、秀ちゃん。
秀ちゃんこと、土岐秀一くんは小学校からの幼馴染み。高校も偶然一緒だった。
親同士も仲がいいし、近所に住んでいる。
私の生活が変わったことももちろん知っている。
イケメンメガネで人に優しい秀ちゃんは昔からよくモテていた。私の自慢の幼馴染みだ。
私の初恋でもある。
だけど、秀ちゃんは普通に彼女いるし、私もこんな状態で恋愛なんて考えられないから、諦めたのだ。
そんな秘めた想いはいつしか消えて、今は普通に仲が良すぎる幼馴染みだ。
学校も一緒に行くし、ぼっちの私を心配して一緒にご飯食べてくれるし。
彼女には悪いと思いつつ、有り難かった。
流石に休み時間はひとりでも平気だけど、ぼっち飯は寂しすぎる。
多分ぼっちなのにメンタルやられないで高校通えているのは、秀ちゃんのおかげだ。
私のまわりはみんな優しくて、温かい。
貧乏生活は辛いけど、周りにいる人に私は恵まれている。
だから、私も今日も元気に学校に行くのだ。