10、壮大な計画
「本当にごめんなさい」
金曜日。
財前くんに会って開口一番に謝った。
聖王の君が財前くんのことだと思わず、色々言ってしまったし。
確かに、あそこで財前くんが聖王の君って俺だって言ってくれてもよかったけど、あの会話の流れでそれって俺かもなんて言ったら、顔面偏差値最強っていうようなものだし、言える雰囲気ではなかったと思う。
そして、私は財前くんの誕生日や血液型、好きな色や趣味なんかも質問してそれなりに知っているつもりだったけど、まだあまり知っていなかったことを実感した。
でも、友達の親の職業なんて聞いていいものとは思わなかったから、ホテル王と言われているのは知らなかったし。家は豪邸だと思っていたけど。
「べつに篠原さんが謝ることなくない?月曜日と金曜日以外に会えて俺は嬉しかったけど」
「生徒会に入ってるなんて、知らなかったよ。しかも聖王の君とか呼ばれているなんて凄いね。この前もうちの学校にくるだけで声援あったし。人気者だね」
「聖王の君なんて言われてるのは、篠原さんに聞くまで本当に知らなかったんだ。生徒会は目標が出来たから、入っただけで別に凄くもなんともないよ」
「目標?聖王学園をもっと良くするとか?」
「・・・いや、そんな凄いものじゃなくて。もっと、不純な動機かも」
「不純な動機って?」
「言っても、俺のこと嫌わない」
「うん」
「本当に?」
「うん」
「・・・篠原さんとの一緒の学園生活したいなって思って」
「へっ?」
「前に夢だって言ったでしょ。転校することも考えたけど、親に反対されて。仕方ないから隣だし両高校で交流とかで、交換学生とか期間限定で実現したら、篠原さんと一緒の学園生活体験できるかなって」
「・・・あの、こうしてたまに会うだけじゃ駄目なのかな?」
「たまにって、俺は毎日でも会いたいけど、篠原さんの負担にならないように考えて週2回にしたんだよ。それに、やっぱり一緒に授業受けたり、お弁当食べたりしたいし。次の選挙で絶対会長になって、実現させるから。それに、この計画は5月から始まってるんだ」
5月からって、きっと秀ちゃんとあの試合した後だ。
・・・って、半年も前から?
「ずいぶん長い計画だね」
「だって、篠原さんと知り合いになれると思わなかったんだ。俺の計画ではね、交換学生でそっちの学校に行って、自然に会って知り合って、友達から始めようと思っていたんだよ。だけど、あの日借金取りの男と話している篠原さん見たらほっとけなくて、飛び出しちゃったけど。計画通りにはいかなかったけど、こうして週に2回も会えるなら、今は良かったと思うよ」
この人本当に私のこと好きなんだな。
そう思ったら、なんだかくすぐったいような、なんともいえない気持ちになる。
「それ以外の夢はあるの?」
「もちろん。一緒に出掛けたい所も、見せたい風景も、お気に入りのレストランも連れて行きたいし」
「・・・それはまた今度ね」
そんなことを言いながら、私は出かけるつもりはなかった。
きっと、そこに行くまでのお金全部財前くんが出してくれるんだろう。
でも借金まで払ってもらっているのに、それは申し訳ないし、私のためにこれ以上お金は使わせたくない。
たぶんお気に入りのレストランとやらも、高級なお店なんだろう。
「うん。絶対だよ」
私が社交辞令で言ったことにニコニコ笑う財前くんに罪悪感で胸が痛む。
私と財前くんの気持ちの温度差に申し訳なく思った。
財前くんのこと好きになれたらいいのに。
気持ちがまだ追いつかない。




