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05 テロリスト≒実験体

 奥に進むと、連中が溜まっている部屋の前に辿り着いた。

 どうやら149人中、147人はこの中で会合的なのを開いてるらしい。

【未知魔法:トランスミッション】で壁抜けをして中に入ると。


「親愛なる同志諸君。準備は整った。平和ボケした魔導王国の者共は、我々が斯様な場所で息を潜め、かのガーデンレイクの血筋を絶やさんとしているなど夢にも思ってはおらぬだろう―――」


 もはやギャグかと思うほどにテンプレな、「ザ・カルト教団」って感じの連中で溢れかえっていた。

 平和ボケした覚えも無いし、なんなら夢どころか現実で怪しんでましたけど今のお気持ちどうですか?と、上で手を大きく広げて演説してる変なのに言ってみたい。

 いや、しかし。

 これはまさか?


「ここまで長かった。吾らは生まれも育ちも、心に秘める思いすら違う。ただ一つ共通していることは………この忌々しい魔導王国に恨みを持つということだ」


 おいおい、予想的中来たかこれ?


「さあ、復讐を始めよう。諸君らがこの国を望む形に変えるのだ―――革命だァ!!」

「オオオオオオオオオ!!!」


「おっしゃああああああああ!!!」


 はい確定!

 はい全員捕縛大決定!

 モルモットゲット演出キタコレ!!


 全員この場でふん縛って、法務省に投げ入れて。

 一週間もすればこっちに四、五十人は宅配されてくるかな!


 王国を憎む理由?

 ワタシを恨む勢力?

 んなもん心底どうでもいいっすわ。

 贔屓目無しに見ても周辺諸国有数の善政を敷いているこの国で、革命だなんだと騒ぐということは十中八九、逆恨みor勘違い正義バカorワタシ個人に恨みがある、この三択。

 いずれにしろワタシには一切関係がないのではっ倒そう。

 そもそも、魔導王国には圧倒的武力の象徴たるワタシがいると知っていながら革命だなんだ言ってる時点で憐れなほどに脳が足りていない。

 きっとここにいる全員頭がよろしくないんだろう、可哀想に。


「さて、じゃあ潰す前に周辺調査と、あと主犯を見つけるか」


 本心では即座に眠らせるなり麻痺らせるなりしたいところだけど、あくまで本題は「調査」なので、やることやってからだ。

 ああじれったい。一秒でも早く奴らを使って、魔法理論の証明と実験の成果を確かめたいというのに。


 主犯がいるのは多分、別室にいる二人のうちのどっちかだ。

 革命組織(笑)の溜まり場を出て、もう一つある向かいの小部屋に入った。


「いやー、先生の御助力のお陰でここまで来れましたな!計画が成功すればこの大国、ひいては極限魔導の叡智は我々のもの!あの娘が作り出した魔導兵器や術式の構築論も、すべて先生の元に集うかと!」


 中にいたのは、やけに小物臭のする小太りの男。

 そしてもう一人は、壮年のがっしりとした体格で、ワイングラスを傾ける気取った野郎。

 小太りの男がワインのお代わりをつぎながらニヤニヤして妄言を吐いていた。

 ワタシのあの美しい兵器と複雑な術式が、こんな小汚い豚に扱いきれるわけねーだろ。


「ふっ………お前も良くやってくれたな。しかしここからが正念場だ。明日の決行はせいぜいあの間抜け共にしっかり囮をやってもらうとしよう」

「いやはや、悪うございますな先生も!あの者共はすっかり先生を信じ、自らの手で魔導王国を変えようなどと言っておりますぞ?」

「はっ、笑わせてくれる。ユリル・ガーデンレイクの恐ろしさも知らず、過小評価も甚だしい衆愚が。あの落ちこぼれ共ではユリルどころか、《七星大魔導》の首すら一つとして落とせず蹂躙されるわ」

「わっはっは、ごもっともです!」


 うーむ。しかし、このワイングラス持ってる方のおっさん、なんか見覚えあるんだよな。

 けどワタシの脳内メモリは魔法と美少女の顔と名前で埋め尽くされてるので、野郎の顔なんて覚えちゃいない。

 こんな変なおっさんならなおさら。

 だがしかし、ワタシの強さを理解してそうなのは好ポイントだ。


「しかし、だ。いくらユリルといえど、()()()()の前には無力だ。ヤツは己の唯一にして最大の弱点を前に、成すすべなく倒れるだろうよ」

「その通りですな!あの者たちさえいれば、極限魔導は恐れるに足らず!むしろ敵方の同士討ちすら期待できますぞ!」

「いや、過信はするな。私とてそう思いはするが、ユリルは常に我々の予想を上回ってくると思え。圧倒していたにもかかわらず、一秒後には克服されていてもおかしくないのだ。あの女を人間と思うな、世界を滅ぼしかねない力を持つ怪物と対峙するものと思え」


 おいおい、好き放題言ってくれるじゃないの。

 ワタシをバケモン扱いするのもあれだけど、それはまあ事実なんで別にいい。

 で、なんだって?ワタシが敵わない切り札をそっちが持ってるっての?


 過信するわけじゃないけど、ワタシは強い。そりゃもう超強い。

 世界の魔導体系を五十年、国内に限れば百五十年分進めたとすら言われ、魔導王国を世界第二位の大国に押し上げたのは、ほぼほぼワタシの功績。

 あまりにも強すぎて、魔導師としての到達点と呼ばれる称号『大魔導』の上にもう一つ枠組みが作られ、『極限魔導』と呼ばれるに至った。

 さらには人類を数百年に渡って苦しめ続けてきた魔族、その王である魔人王を倒している。

 チート異世界人&世界最強の剣士と手を組んでたとはいえ、英雄と呼んでも差し支えない働きをしたはず。


 そんなワタシを?

 天才・最強・美少女と、三拍子揃ったワタシを倒せる?

 しかも言葉の使い方からして、ワタシと同格である九人外ではないらしい。


「あの者たちは今どこに?」

「ははーっ!地下牢に軟禁しております。勿論ストレスを与えないために食事と娯楽等には不自由させておりませぬ。認識操作の魔法によって、あれらはユリルを悪しき魔女と完全に信じ込んでますがゆえ、正義に心を燃やしているかと!」

「まあ、悪しき魔女というのはあながち間違いではないからな」


 おいこら。


「私めは直接ユリル・ガーデンレイクを見知っていないので何とも言えませぬが………そんなに酷いのですか?」

「魔法で人を巻き込むことは日常茶飯事。実績があるとはいえ、あまりにも酷い暴虐ぶりに父である国王すら頭を抱え、ガーデンレイク国立魔導研究第零開発局―――ユリルの塔と呼ばれているあそこだな、あの場以外での実験を禁止された。それで多少は緩和されたが、それでも毎日ニ、三人は医務室送りになっていた。まあ中にはユリルの魔法を間近に受けて恍惚としている変態もいたが。

 更にはやはりガーデンレイクの血筋、折り紙付きの変態で、同性にしか興味がない。歓楽街に繰り出すのは当たり前、王族だというのにナンパすら辞さず、美女を見れば即座に声をかけていると聞く」

「う、お、おお………?」


 おいおい、変態とは言ってくれるじゃないの。

 女の子が女の子を好きで何が悪い。

 同性婚なんて遥か昔から世界中で認められてるし、異世界には『男の人は男の人同士で、女の子は女の子同士で恋愛すべき』という何とも素晴らしい言葉があるらしい。

 きっと残したのは歴史に語られる偉人に違いない。


 変態ってのはうちの兄弟姉妹のような、ロリコンとかショタコンとか靴下フェチとか血液フェチとかシスコンとかドМとかネトラレ趣味とかヤンデレ至上主義とか、ああいうのを言うんだ。

 性癖って面で見れば、ワタシなんてあの中じゃまだマトモな方だぞ。

 たぶん。

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