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41 全国放送

「おっと……っと」


 王都から約三十キロ。

 暴走が起った森と王都を結ぶ線の真っ只中に、七星大魔導の七人中、六人が転移させられた。


「一応確認するけど、全員いるよね?」

「ボクはいるよー」

「不本意ながら……」

「おう!」

「はーい」

「………」


 シズカの点呼に、クリュス以外の全員が返事をする。


「で、どうするんだシズカ?」

「どうするって?」

「どういう戦法を取るかってことだよ」

「ああ」


 それを聞いて、シズカは考えた。

 私はまあ、出るのは当たり前でしょう。一番強いし。

 サポート役でカグヤも欲しい。

 けど正直、私とカグヤさえいれば三万程度ならそう時間かからずに薙ぎ倒せる。

 インヴィーじゃないけど、私だって一刻も早くカンナ様の所に帰りたい。

 でも、インヴィーはともかくソレイユは絶対にそれを了承しないし、メロも下手したら『手抜いたら褒賞が減るかもしれない』みたいなこと言ってくるかも。

 しかしぶっちゃけ、私の魔法を本気で放つならカグヤ以外は必要ない。

 何故なら巻き込みかねないから。


「シズカ、随分と考えこんでるね?大丈夫?」

「……え?あ、うん。大丈夫」

「そんなに考える必要ある?ボクとシズカがいればいいじゃん」


 ―――コイツ、どう言おうかと言ってたことをさらりと。

 複雑な気持ちがシズカの胸をよぎった時、横が突如として暑く―――否、熱くなった。


「……カグヤ、それはオレが不要だと、そう言ってるのか?」

「え?うん。ぶっちゃけシズカとボクの邪魔」

「ちょ、ちょっとカグヤ!?」

「ほう、言うじゃあないか。ずっと第一位の座に君臨してたのに引きずり降ろされた元女帝殿」

「あははは、言ってくれるね。七星になった直後、その元女帝にいきなり順位争いを仕掛けてボコボコにされたの誰だっけ。あのときは殺しかけちゃってごめんね?ちょっと涙目だったけど痛くなかった?」

「二人ともやめてってば!インヴィー、メロ、クリュス、みんなも何か言ってよ!」

「えー、やらせとけばいいじゃないですか、めんどぉ……」

「夫婦喧嘩すら犬も食わないのに、ただのバカ二人の喧嘩なんて何の価値もないじゃない、首突っ込むのは御免被るわ」

「………」

「ああもうっ、なんでこうバラッバラなのよお、七星って連中は!!」


 シズカ・ジングウジ。神宮寺 静。

 超級の魔導師とはいえ、その性格は七星の中で一番普通。

 それは同時に、最も苦労を背負う人間であることを示していた。


「カグヤ、悪口言うのはユリル様だけにしなって!それからソレイユ、あなたも煽らない!」

「ボクがユリル様をいじめるのは性的に興奮するからであって、他の奴らをいじめるのは単なる趣味だから用途が違う。だからユリル様だけってのはちょっと無理かな」

「……あ、うん。そうなんだ」

「とにかくだ、オレは戦わないと気が済まないぞ!」

「えっとー、ソレイユ。終わったら私が相手するってのではダメ?」

「ダメだな、お前にはまだ勝てない。勝てないと分かってる勝負ほど虚しいものはない」

「い、意外と冷静だね」


 さて、どうなだめるかとシズカが思考を巡らせていると、獣の唸り声と地響きが全員の耳に届いて来た。


「どうするのー?時間もうないわよ」

「オレが燃やし尽くす!」

「引っ込んでなって」

「なんだと!」

「………」

「クリュス、あなたやっちゃえば?……あ、イヤなのね」

「わかるわー、面倒ごとに巻き込まれそうだもんね」

「随分余裕だなカグヤ、オレがお前に負けた時のままのオレだとでも!?」

「その言葉そっくり返すよ、ボクだってあの時より強くなってるもん。ボクの遊び相手が誰だと思ってるの?」

「ねークリュス、一緒にサボらない?ユリル様と仲いいあんたが一緒にいれば、なんかこう、良い感じにうやむやになる気がする」

「………」

「これは『そんなことしたらユリル様に、何のとは言わないけど大義名分を与えることになるけどそれでもいいなら』……とかそういう顔ね」

「やっぱいいや」

「……あんたら、いい加減に」


『レディース・アンド・ガーー-ルズ!!魔導王国の国民諸君、今日も元気に魔法を使ってるかな!?』


「「「「「「………」」」」」」


 シズカがそろそろ怒ろうかというその時、上空に巨大なスクリーンが創り出され、そこにどっかでみた極限魔導の顔が映し出された。

 何してんのあの人?

 レディースとガールズって被ってるじゃん。ジェントルマンとボーイも呼んでやってよ。

 とか、そういうツッコミすら追いつかない謎行動だった。


『お?女の子たちの歓声が心に沁みるねー!最近はワタシをないがしろにする子たちばかりだったから嬉しいよ。さてさて、現在このスクリーンは、ワタシの魔法を通して魔導王国全土に放映されてるよ。突然で悪いけど、今回の目的は―――』


 画面が切り替わり、映し出されたのは、七星のうち六人。

 つまりここだ。


『ワタシプレゼンツ!ドキッ☆王都を襲おうとしてる馬鹿共を七星が殲滅しちゃおう!ポロリもあるよ♡の会!』

「ポロリがあってたまるかあ!!」

「なに勝手なことしてくれてんのあの人……」

『では状況を説明するよ。現在この王都に魔物の群れ、約二万五千が身の程知らずにも向ってきている。原因は強力な魔物の移住。あ、その原因のヤツはワタシが既に倒しちゃったから安心してね。でもんなことは魔物は知らないから、そのままこっちに突っ込んできちゃってるわけよ。まあそれもワタシがやっちゃえばすぐなんだけど、それだとせっかくのエンターテインメントがつまらないでしょ?そこで!今回は七星大魔導の諸君にその力を見せてもらおうじゃないのってわけ』

「おい、オレたち勝手にエンターテインメントにされてんぞ」

「馬鹿ねユリル様、有料視聴にすれば大儲けできたでしょうに」

「………」


 七星の冷ややかなめなど露知らずという感じで、ユリルは話を進めていった。


『まあアスピーは最終防衛ラインだから今回はいないんだけどね。つーわけで、協調性ってものがシズカ以外にない七星の諸君、どうせ誰が行くかでもめてるでしょ?まあ最強のシズカは確定として、もう一人はワタシが選ぼうか。このルーレットで』

「いつの間に……いや、あの人なら一瞬か」


 ユリルの後ろには、シズカとアスピーを除く五人の顔を象った巨大ルーレットがあった。

 てっぺんに矢印があるから、あそこに当たった人がってことだろう。


『見事これに当たった人がシズカのサポート、残りは後方で、多分一匹も来ないうち漏らしを待つ役目ね』

「カグヤ、帰ったらユリル様のこと思いっきり虐めてやって」

「言われなくともそのつもりだけど」

『おっと、七星諸君。今は君たちの声は届かせてないけど、ワタシには聞こえてるからね?口は慎むように』


 しぶしぶ全員が押し黙った。


『では国中が盛り上がってきたところで、ルーレットスタートォ!』


 ユリルが風を起こし、ルーレットは風車のごときスピードで回転を始めた。

 だが、正直七星のうち、頭が回らないソレイユ以外は、結果が読めていた。

 一応あれでもユリルは国のことを考えて動いている。

 国中の魔導師が最も望んでいるコンビを、外すとは考えられない。


『おっと!結果は―――カグヤだ!』

「わーい、やったー」

「クッソオオオオオオ!!」


 うん、インチキだ。

 ソレイユ以外はこうなると確信していた。


「ユリル様!やり直しを要求する!」

『ダメ。んじゃシズカとカグヤ、頼んだよー。七星第一位と第二位の実力見せてね』

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