29 “九人外”という存在
大変長らく!!お待たせ致しました!!
体調がようやく戻ったので連載再開します!
忘れられてると思うので読み返して貰えると嬉しいです!
※まだ本調子とはいえないのでしばらくは数日〜二週間程度の不定期更新になるかと思います、ご了承ください。
転移した先は、勿論父上の部屋。
既に修復された扉に『ユリル立ち入り禁止』という張り紙が張られていたのにムカついたので、紙ごと扉を粉々にして中に入った。
「父上!」
「お前はついに文字すら読めなくなったのか、このうつけ娘!」
「んなわけないじゃないですか、読んだうえでの無視です」
「こ、この、この…………!」
わなわなと父上が体を震わすけれど、どうせ後でいくらでも直せるんだからそんなに気にしなくてもいいのに。
そんな些事より、部屋に飛び込んできた愛娘の言うことを聞いてみようという気持ちにはならないのだろうか。
「…………ハア、まあ効果があるなどとは思っていなかったし、もういい。で、なんだ。メロのやつから報告は聞いているが、どこに行っていた?」
「ちょっとユウマの馬鹿のところまで」
「お前に人を馬鹿と罵る資格はない。…………って、ユウマだと?まさかユウマ・カンザキか!?」
「それ以外にユウマなんて珍しい名前の男がいりゃ是非会ってみたいもんですけど」
まあ、父上が驚くのも無理はないか。
ユウマとワタシの中が微妙なのは父上も知ってるし、喧嘩にでもなってたらと気が気じゃないんだろう。
ワタシとユウマの仲じゃなく、喧嘩の余波による世界崩壊の方を危惧してるんだと思うけど。
「だ、大丈夫だったのか?」
「超加減して多少じゃれはしましたけど、なんもありませんでしたよ」
父上が深い、それはもう深い安堵のため息をついた。
「それで、何故カンザキ君の所になど行ったのだ。彼は確か今は―――『邪淫』を司る最上位悪魔と契りを結んで魔境に住んでいるんだったか?」
「そっすね。ラスティみたいな美女とあんなところで二人きりとか血反吐吐きそうなほど羨ましいので、うちのウェリスと交換出来ないかとずっと悩んでるんですけど」
「やめてやれ。そして質問に答えろ」
「あー、そのことなんですけどね」
ワタシは、父上にすべて説明した。
フィーネに突如起きた入れ替わりの現象、そこに魔力の介入が一切なかったこと、そしてそれがユウマの覚醒能力に酷似していたことについても。
「なるほど、な。お前にしてはなかなか筋の通った仮説だ」
「すいません父上、ワタシってば基本的に研究者なので筋の通らない説明はしないと思うんですが?」
「ほう、そうなのか。ではこの粉々になった扉について筋の通った説明をしてくれないか」
「張り紙にイラっとしたので思わずぶっ壊しました。反省も後悔もしてません」
ワタシが至極真っ当な説明をすると、父は憐れむような目を向けながらワタシの肩に手を置いた。
「普通の、筋の通った人間はな?ムカついたからといってな?扉を壊したりはな?しないのだ」
そんな子供に語り掛けるような感じで言われても。
「まあそれはともかく。まだユウマの疑いが晴れたわけじゃないので、あの阿呆にはまた会いに行くとして」
「お前に人を阿呆と罵る資格はない」
「つーわけでワタシ、他の九人外にも会ってくることにしますね」
「ほう、そうか。大変だな。今何と言った?」
「ですから、ちょいと他の同格共に会ってこようかと」
ワタシがそう言うと、父はキョトンとした顔をし、そして震えだし、顔を青くして赤くしてソファに倒れるように座り、パントマイムが如く体を捻り、終いには机に突っ伏してしまった。
「それ、どういう感情の現れなんです?」
「…………九人外がどれほどの存在か、お前は分かっているのか」
「父上、分かっている云々以前にワタシもその一人ですよ」
「そうだな、よく分かっているではないか。つまりな?九人外に会うというのは、その瞬間お前が同じ場所に二人いるのとほぼ同義ということだ」
「まあそう言えなくはないかもですね」
「お前だぞ?一人の状態でさえその気になれば国など余裕で滅ぼせ、人類が想像もつかんような破壊と創造を齎す天変地異が同じ場所に二人という状況が、今後続くのだと考えてみろ。カンザキ君のようなマトモな九人外ならともかく、お前と反りの合わないような存在もいるかもしれないというのに!それで話がこじれたりして戦いにでもなればどうする!」
「まあ、大陸の一つくらいは覚悟した方がいいかもしれないっすね」
「ワシはそれをこの国の王として、それ以前に親として止めねばならない!だが、お前は止めても行くだろう!そしてワシにはそれを阻止する手立てがない!どうすりゃいいんだ!…………という感情の表れだ」
「なるほど」
腐っても父親で国王だな、一瞬でそこまで考えつくとは。
「大丈夫ですよ父上、何人かは知り合いですし」
「何人かは初対面なのではないか!最も危険な『魔人王』ネロは滅んだが、にしたって伝え聞くだけでもおっかないのがいるのだぞ!」
九人外、世界最強生物たる九柱の存在。
今はこの世界には八柱しかいないけど、それでもおっそろしい存在であることには変わりないか。
世界に存在するあらゆる刀剣に愛され、いかなる魔剣や妖刀、果てには神剣の類をも支配下に置き、その気になれば一太刀で災害すら真っ二つに出来ると言われる『剣霊』ドロウス・エクスベル。
太古から存在する獣、一万年の歴史を誇る国を束ね、威厳と王の素質は世界最高と呼ばれる『真獣』タイランティス。
この世に存在するほぼすべての魔法を習得し、常人の万倍の魔力を宿す魔導の申し子、たった一人で世界の魔法体系を百五十年進めた超天才美少女魔法使い『極限魔導』ユリル・ガーデンレイク。
すべてのモンスターの頂点、モンスターでありながら人以上の知能を有し、歴史上で幾度となく人類に災厄を齎した『冥界竜王』グランハーデス。
数年前まで人類にとっての最悪の敵と呼ばれた悪の代名詞、世界最凶種である魔族を束ねる王、闇の頂点『魔人王』ネロ(存在抹消済み)。
エルフが極限まで力を付けた際に転生できると伝えられる伝説の種族ハイエルフにして、無限の魔力と最強の召喚術を併せ持つ『創造主』ミレーユ・ユグドラシル。
この世界の完成と同時に産まれた最古の精霊、世界のどこにでも存在できる不死身の傍観者『原初』アルフィ・アインスピリット。
異世界からの転生者、シンプルにして原点、無限の覚醒と不老の体を神から与えられてしまった存在『全知全能』ユウマ・カンザキ。
究極の身体能力と絶対耐性の抱き合わせ、遥か昔に存在した最強種・鬼人の先祖返り『羅刹悪鬼』イリア。
「魔人王はまあ置いといて、ワタシが会ったことあるのはユウマ、ドロウス、あとグランハーデスなんで、とりあえずこの三人(匹)に会って来ますわ」
「待て待て待て待て!!カンザキ君とドロウス殿に関してはお前と同じ魔人王殺しの英雄だから良いとして、何と言った!?お前っ、あの『冥界竜王』と顔見知りなのか!?」
「言ってませんでしたっけ」
「聞いとらんわああああああ!!!」
父上はもはや泡拭いて倒れそうな顔をしていた。
まあ、グランはこの世界を何度も崩壊させかけた邪竜だし、実際それは何百年も前の文献からもその恐怖が伝わってるから仕方ないとは思うけれど。
「い、一応確認するが」
「なんでしょう」
「どういう関係なんだ?」
ふむ。
ワタシとグランの関係か。
悩ましい問題ではあるけど、まあ強いて最も近い関係を挙げるのならば。
「友達ですかね」
「……………………」
今度こそ父上は卒倒した。




