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13 大決意

 理性?人間性?

 そんなもんはどうでもいい!!


 ああ、ワタシのこの考え方でドン引きした者もいるだろう。

 しかし男子、あるいはワタシと同じくガールズがラブな女子諸君、ちょっと頭を空にして考えてみてほしい。

 なお、「頭を空にして考える」というのが矛盾しているという反論は一切受け付けないこととする。


 ある日の深夜、仕事で可愛い女の子たちを助けた。

 そしたら最後に助けた子がどちゃくそタイプだった。

 反射的に告った。

 そしたら記憶喪失だったことが判明した。

 やっぱり顔がタイプだったのでもう一回告った。

 そしたら頷かれた。


 どんな存在であろうと!

 この世界に生まれ出でた以上、「顔の良いヤツと付き合いたい」というのは自明の理―――いやさ、生物が先天的に保有する本能、生物の()()に相違ない――――っ!!

 もはや「なぜ」と問うことすら愚問のこの理論が存在する以上、顔の良い女、ついでに男は人生を有利に進めることが出来るだろう。

 少なくともこのワタシの!

 天才的頭脳を有するこのワタシの思考を停止させ、理性など宇宙の彼方に吹っ飛ばし、根源剝き出しで「記憶喪失なんざ知ったこっちゃねえ」と、人間として色々と間違った選択をさせることが出来る程度には!!

「美しさは罪」―――まさにその通りだ。

 美人すぎるこの子が悪いのだ!!

 これがワタシが今まで見て来た美少女たちなら、もしかしたらワタシももうちょっと急かず、ゆっくりと待つことが出来たかもしれない。

 だがしかし!!如何せん、この子はワタシの理想すぎる!

 他の誰かに将来的に寝取られるくらいなら、もういっそ今結婚する!

 これがワタシが常識なんざかなぐり捨てて結婚すると決めた理由である、異論を挟む余地など無しっ!


「結婚式はいつにしようか!?三時間あれば友好国から要人連れてこれるし、ワタシの魔法なら一瞬で会場セットも可能だし、あとはケーキとかだけどそれに関しては宮廷専属料理人に任せるとして、あとはそう、姉様たちに報告だ、ひゃっほおおうカンナ姉様になんて」


「待あああああああてえええええええどおおおおうらああああああああああああああああ!!!」


「ぶえっ!?」


 突如として横から飛んできたソファに吹っ飛ばされ、ワタシは壁を突き破って大臣の執務室に突っ込んだ。


「おおユリル様、ダイナミックな訪問ですな。お茶をお淹れしましょうか?」

「ありがたいけど今それどころじゃないんだわ」

「それは残念。ああ、壁は自己責任で治していってくださいね」

「うっす」


 壁を一瞬で修復し、ソファを人に投げつけるなどという人間としてあり得ない暴挙に出た人物の目の前に転移した。


「なんってことをするんだあんたは!普通娘に強化魔法付きのデカブツ投げる!?ワタシじゃなかったら死んでたわ!」

「やかましい!何をとんでもないことを言い始めているんだお前は!記憶喪失にかこつけて籍を入れようとする人でなしにお前を育てた覚えはない!!」

「三番目の母上をゴリ押しで落とした父上に言われたくないんだよ!あれだって王族がやっていいギリギリのラインだっただろ人でなし!」

「あれとは別の話だっ……………おい待てどこでその話を聞いた!?」


 ワタシはもう父に構わず、フィーネの手を取って。


「さあフィーネ、移動しようか!さっさと結婚して既成事実も作ってしまえば反対もクソもなくなるから!」

「…………?お父様の許可、得なくていいの?」

「そんなものはどうでもいい!」

「どうでもいいわけあるか!おいフィーネくん!」


 さっさと転移しようとしたのに、父がフィーネの肩をガッと掴んで。


「悪いことは言わない、考え直すんだ。君のような善意のある美しい若者が、この天変地異と悪意とマッドキャスターと自己中を全て足して十倍に濃く煮詰めたような女に捕まるなど、人類の損失だ。失った記憶が戻った時、実はすでに故郷に結婚を約束した人がいた場合とかを考えたまえ!いやいなかったとしても、この魔法バカの毒牙にかかる必要はない!」

「おい父上、『神の顔も三度まで』ってことわざ知ってるな?次に家族であることにかこつけて好き放題言ったら、ワタシの大魔法が脳天に直撃すると思え、極限魔導(魔法バカ)舐めるなよ」


 あまりにもあまりな父上の言動に、どの魔法をぶっ放してやろうかと考えていると。


「…………そんなに酷いの?」

「酷くない!!大丈夫、ワタシ女の子を傷つけたことは一回もないから!だからその『ちょっと早すぎたかな』みたいな考え込む表情やめようか、あれだ、ワタシと結婚したら毎日好きな食べ物食べさせてあげるし、お金だって使い放題だし、好きなとこ転移で連れてってあげるし、望みはなんっだって叶えたげられるからね!だからさあこの婚姻届けに判を押したまえ早う!」

「惑わされるな!ヤツは君をダメ人間にして自分に依存させる計画だ!自分好みの美女が自分にべったりしてくる状況を狙ってるだけだ、目を覚ませ!」

「よーし四回目だ、魔人王殺しの英雄の本気を食らわせてやる!」


 ついに温厚なワタシも堪忍袋の緒が切れ、父上を蹴り飛ばし、【最弱化魔法:峰打ち】と【神雷魔法:ゼウスの猛り】【収束魔法:セレクトポイント】を一瞬で準備し、さてどうやって父上に命乞いさせようかと思考を切り替えた。

 だが、父上の口から出てきたのは命乞いではなく、提案だった。


「待て待て待て!いい案がある、いい案があるから魔法をやめろぉ!」

「なんだって?」

「いい案というか、当然の話をするだけなのだが。出会ってすぐに結婚したって、互いの良い所も悪い所も知らない状態では、本当に相性の良いカップルの場合を除いて長続きしないぞ」

「父上、一番最初の母上とは交際三日で結婚したとか言ってませんでしたっけ」

「あの子とは本当に相性の良いカップルだったということだな」

「そうですか、よかったですね」


 父上のクソどうでもいいのろけはともかく、言ってることはまあ分かる。

 せっかく結婚したって、離婚したりしようもんなら、しばらく立ち直ることは出来ないだろう。

 しかしそりゃ分かってるけども、結婚はしたい。


「娘よ、よく考えてみろ。交際期間というのは互いの確かめの意味もあるが、甘酸っぱい関係というのはお付き合いしている間の方が濃いのだぞ。それは異世界人がこの世界にもたらしたラブコメマンガの示す通りだ。あの教本の最終回は、その多くがプロポーズシーンで終わっているだろう、それはなぜか?それはな、好き好き大好きなことが最も沢山出来るのがお前くらいの歳であり、結婚した後は色々と面倒ごとが待っているからだ」

「…………ほう」

「事実私も、結婚した後は尻に敷かれたり浮気と誤解されてひっぱたかれたりと散々だ。まあそんなところも愛しているからいいのだがな」

「父上の嫁談義は知ったこっちゃないけど、まあ一理ありますね」

「つまりだ、何事も互いを知り、好きなように振る舞う期間は重要、ということだ。結婚はまだ早い、まずはお友達とかお付き合いから始めろ。せめて、彼女の記憶が戻るまではな」

「なるほど」


 一考の余地ある提案だ。

 確かに出会って早々結婚!みたいな展開は、嫌いじゃないけど長続きしなさそうだ。

 まして向こうはワタシのことが「嫌じゃない」とは言ってるものの、「好き♡」とか「愛してる♡」とか言ってくれてないんだから、今のところはワタシの一方通行。

 そんな状態で結婚結婚と急いても、色々と弊害があるかもしれない。

 ワタシもフィーネについて知ってることといえば、顔が最高なこと、体つきがワタシ好みにエロいこと、クールなこと、記憶がないこと、これくらいだ。

 まずは互いを知ることから、か。


「よし、わかった」


 ワタシはフィーネの方を再び向いた。


 その超絶可愛い顔面に三度目のプロポーズをしそうになるけど、【精神魔法】で無理やり理性を強化して抑えた。


「フィーネ、あなたが記憶を取り戻すまで、ワタシは一緒にいる。なんだって協力しよう。結婚云々はその後にね」

「いいの?わたしはすぐにしてもいいのに」

「いやいや、まずはお付き合いから。すぐに結婚しても、きっと上手くいかないしね」

「私がさっき言ったことそのままだな」

「うっさい黙れ父上。とにかく!まずはお友達から始めよう」


 結婚に関しては、後回しにしたけど。

 でも一つだけ、マジで心に決めた。


「わかった」

「うっしゃあ!」


 この子はまだ、ワタシのことを好きじゃない。

 だから、この子の記憶を取り戻すまでに。


「じゃあ、まずハグしようか!それくらいならお友達だし当然だよね、さあおいで!」

「うん―――」

「そんな卑猥な顔で抱き着こうとするやつがあるか、やめろ!」



 絶対に、落とす。

こういう物語です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒロさんのハチャメチャなボキャブラリーと罵倒の種類は一体どこからやってくるんだ…?
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