盲信者
今宵は革命が起こる。
この腐った国を国民の手で救うのだ。
悪魔の化身と化した王から国を奪還するのだ。
革命の為にはどんな犠牲も厭わない。
それが私達国民のモットーだ。
全ては国の為。そう思っていた。
巨大な鐘が自らを主張しながら音を鳴らす。
革命執行の合図だ。
国民は手に武器を持ち仮面を被った。
武器を行使し主張をした。
自らの意見を主語を大きくし主語した。
自らの意見は国民の意見だと盲信し主語した。
「この国は腐っている!何故なら王が悪魔と化したからだ!すべて貴様らのせいだ!」
しかし、この革命に疑問視する者が現れた。
その者はこう言うのだ。
「皆さん!王は頑張っているのです。この緊急事態に身を削り頑張っています。大衆の意見に流されないで!自分で考えることを放棄しないで!」
どんなに喉を潰して叫んでも、そんな声は国民には届かなかった。
この国では多数が勝つ仕組みになっているのだ。
少数派の意見は異端となされ跳ね除けられる。
それが今私達が住むこの国の在り方なのだ。
王は国民に捕まった。
半宵、広場で王の処刑を行う。
そのために、国民は広場に火を灯した。
王の処刑が始まる。
王は抵抗しなかった。
国民は歓喜の涙を流した。
目先の敵が死ぬからだ。
だが、その涙は決して綺麗ではない。
盲目に自分の周りの言うことを信じ、1人の生命を奪おうとしているのだ。
そんなことをする奴らの涙など見るに耐えない醜さを残した。
革命執行人は最後にこう聞いた。
「何か最後に言い残すことはあるか?」
王は最後にこう言った。
「私の責任だ。この国を良い道へと導くのが私の使命だった。それを成し得なかった。国の民よ。すまなかった。」
王の言葉を聞いた国民は清々しい顔をしていた。
どこかやり終えた、傲慢な笑顔だ。
自分の正義で人を潰した。
その達成感で満ちていたのだ。
その国は戦争ではなく革命で滅びた。
悲惨な結末へと国民は導いたのだ。