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狂った博士と水の夢  作者: 八代つぼん
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第4話

霧彦達が廃ビルに来てから一ヶ月が過ぎた。


霧彦「や・・・やっとまともな円形が描けるようになった!」


和泉「うんうん、頑張った成果だね♪」


霧彦「ちょっと休憩させてもらう。流石に疲れた・・・」


バタンキューと倒れこむ。

無理もないここ一ヶ月ずっと魔法陣を描き続けてきたのだから。


雫「お疲れ様お兄ちゃん、お茶淹れたから皆で飲もう」


霧彦「ありがとな、雫」


雫の頭を撫でる


和泉「前から気になってたんだけど、雫ちゃんはもう亡くなっているんだよね?」


雫「うん。でも何か私の魂に精霊が宿って現世に居られるみたい」


霧彦「和泉の仕業じゃないのか?」


和泉「いや、僕は精霊とか専門外でね。もしかしたら僕以外で、誰かが精霊召喚でもしたんじゃないかな?」


和泉は腕を組んで首を傾げる。

どうやら本当に心あたりがないようだ。


そんな話をしていると、慌てた様子で穂波が部屋から出てくる。


穂波「イズイズ大変!」


和泉「どうしたんだい? そんなに慌てて?」


穂波「ルシファーから今電話がきて、三日後ここに来るって!」


和泉「なんだって!?」


いや、連絡手段電話なのかよとツッコミたいところだがここはぐっと抑えて・・・


霧彦「まずいんじゃないか?」


和泉「そうだね・・・あと三日で魔法陣を完成させないと・・・」


一ヶ月でやっと円形が描ける程度の霧彦の力量では到底無理な話だ。

その時雫が何かを思いついた様で和泉の袖を引っ張る。


雫「あのね、和泉おじちゃん。私とお兄ちゃんが融合して代わりに私が描くのはダメかな?」


和泉「あ、その手があったか!」


霧彦「この馬鹿和泉! できるんだったらもっと早く言えよ!」


俺の苦労は一体・・・だが雫は美術5だ。俺の体と魔力を融合の際雫に委ねれば何とかなるかもしれない。


霧彦「雫! 融合だ!」


雫「うん!」


雫は光の玉となり、霧彦の身体に入る。

霧彦は普段の戦闘モードの自分の身体と魔力を雫に委ねると美しい女性の姿になった。


和泉「美しい・・・」


和泉は見惚れている。

卑しい感じではなく純粋に美術品に感動する感覚だ。


穂波「その姿、初めて見たわ・・・」


霧彦「義姉さん達が出て行ってから一回だけこれ試したんだが・・・何か失敗して爆発して以来やってなかったからな」


和泉「爆発って・・・」


雫「うん、安定してる! これならイケる!」


そう言うと雫は試しに身体を動かす。


霧彦「うお!? 身体の所有権委ねるのってこんな感覚なのか」


雫「さて! 描くね♪」


雫はスラスラと円形を描き始める。


和泉「おお! 上手い上手い! この調子なら間に合うね!」


パチパチと拍手する。

流石美術5、円形ぐらいなら簡単なようだ。


雫「スペルや模様は難しいから今夜は徹夜かな?」


和泉「じゃ、美味しい夜食作るね♪」


雫「ありがとう!」


そして二日目。


雫「後少し・・・これなら明日までに間に合うかな?」


徹夜で疲労が出ているものの順調だ。

だが急に天に暗雲が立ち込める。


和泉「来る・・・」


空を見つめて和泉が顔を青ざめる。


雫「え?」


雫達の近くに雷が落ちるとルシファーが現れる。


和泉「ルシルシ・・・どうして!? 来るのは明日では!?」


ルシファー「嫌な予感がしてなぁ。まさかミカエルを呼び出そうとしてたとはな」


ルシファーは大量の槍を召喚し、雫目掛けて穿つ。


和泉「守護よ!」


和泉は魔法のバリアを自分と雫の周りに張った。


和泉「長くはもたない・・・雫ちゃん・・・早く・・・」


いくら膨大な魔力を持っている和泉でもルシファーの猛攻に耐えるのは辛いようだ。


雫「早く! 早くしないと!」


雫は全神経を集中させ、魔法陣を描き進める。


ルシファー「これならどうだ?」


槍の本数を増やす。

次々と降り注ぐ槍に耐え切れず、バリアの一部が壊れ槍が一本和泉の心臓に刺さる。


霧彦「和泉!」


雫「おじちゃん!」


和泉「大丈夫・・・それより・・・早く!」


血反吐を吐きながら和泉はバリアを張りなおす。


ルシファー「ちっ、和泉を不死にしたのが仇と出ちまったか!」


飛んでくる槍がどんどん増える。

もう駄目かと思ったら


雫「出来た! 出来たよおじちゃん!」


和泉「復唱して・・・偉大なる・・・大天使・・・ミカエルよ・・・我の・・・召喚に・・・応じたまえ・・・」


霧彦&雫「偉大なる大天使ミカエルよ! 我の召喚に応じたまえ!」


だが何も起きない。


霧彦「どうして!?」


ルシファー「ギャハハハハ! スペル一つ間違えてるぜ!」


雫「あ!」


確かにスペルを一つ間違えている。


ルシファー「トドメだ!」


巨大な槍を穿つ。

バリアが壊れ、爆発する。


霧彦と雫の融合が解け三人とも虫の息だ。


雫「ごめ・・・なさ・・・」


霧彦「ぐ・・・」


和泉「僕の・・・せい・・・で・・・すまない・・・」


ルシファー「まだ生きてやがったか! 今度こそトドメを・・・」


穂波「そこまでよ!」


コンテナハウスから穂波が出てくる。

いつもと違う凛とした表情と身体から膨大な魔力を放っている。


穂波は天に両手を上げると、天に向かって叫んだ。


穂波「ミカエル様! イズイズの覚悟! 皆の努力! 見ていますよね!? 私の召喚に応じてください!」


穂波が叫ぶと天から光の柱が降りてきて、金髪の神々しい天使が現れる。


ルシファー「ミ・・・ミカエル・・・」


霧彦「アレが・・・ミカエル・・・!?」


和泉「どうして・・・?」


穂波「ここに来る前・・・15年前にミカエル召喚儀式をしたの。でも不完全だった。ミカエルは言ったわ「あなた達の覚悟と志次第で召喚に応じましょう」って」


ミカエル「兄さん、随分と下界で好き勝手したようだね?」


ミカエルは笑顔だが眼が笑っていない。


ルシファー「い、いや・・・その・・・」


ミカエル「地獄の管理もサボって亡者も地上に蔓延らせ・・・お仕置きですね」


ミカエルは聖なる炎でルシファーを焼く。


ルシファー「あちち! ごめんなさい! すぐに地獄へ戻ります!」


ルシファーは自分の召喚された魔法陣へと逃げ帰る。


和泉は欠けた魔法陣を修復する。


和泉「これでもう・・・出てこれない・・・」


ミカエルは癒しの光で霧彦達の傷を癒す。


霧彦「終わったのか・・・?」


雫「お兄ちゃん!」


雫は元の人の姿に戻る。

水槽の中の人魚も同じく元の姿に。


怨霊も世界から消え去った。


雫「ありがとうございますミカエル様!」


ミカエル「お礼を言うのはこちらの方ですよ、雫」


雫「え?」


ミカエル「貴女の魂に精霊を宿らせたのは私です。」


霧彦「な!?」


ミカエル「貴女の召喚のスペル、例え間違えていても効果を発揮する程の魔力があると予言した神に命を受け実行しました。そのおかげで私は降臨できました。」


雫が現世に留まったのはまさか神の命による物だったなんてと一同は驚く。


ミカエル「そして和泉よ、覚悟は出来ていますね?」


和泉「うん・・・」


そう言うと和泉は両腕を広げる。

すると無数の矢が和泉に突き刺さる。


霧彦「!?」


雫「どうして!?」


ミカエル「これが世界を混沌に陥れた和泉への罰です。終わる事のない永遠の苦痛を与えます」


和泉「これで・・・ハッピー・・・エンドだね・・・」


血をゴポゴポと吐きながら無理に笑顔を作る。


霧彦「あの時言ってた罰って・・・」


あの夜の会話を思い出す。


雫「お願いです! 和泉おじちゃんを許してください!」


ミカエル「・・・」


するとコンテナハウスから人間に戻った海斗が出てきてミカエルに叫ぶ。


海斗「元はと言えば俺がルシファーを逃がしたんだ! 和泉の罰の半分を請け負うからせめて罪を軽くしてやってくれ!」


雫「なら私も和泉おじちゃんの罪、もう半分背負います!」


穂波「大事な友達・・・イズイズの罪・・・私も背負います。イズイズの覚悟・・・ずっと見てきたから辛さも悲しみもわかるの」


霧彦「しょーがねーなぁ、俺も世話になったし俺も罪を背負う!」


和泉「み・・・んな・・・」


和泉は涙を流す。

苦痛だからではない。

友の温かさが身に染みたからだ。


ミカエル「いいですよ」


全員「え?」


あっさりそう言うとミカエルは和泉に刺さっている矢を消し傷を癒す。


ミカエル「元々全て終わったら別の罰を与えるつもりでしたしね」


和泉「別の罰?」


ミカエル「ふふ・・・少し意地悪をしてしまいました」


ミカエルは心から微笑む。 

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