落第?
「す、すみません!私、殿下に手伝いなんか……」
なんか王子様みたいな人だなぁとは思ったけど、まさか本当に王子様だったなんて……!!
「いいんだ。そもそもこの学園で身分は関係ない」
「いやでも、そもそもまだ入学もしてませんし……」
「私は君の魔法を見て感激したんだ。なんてすごい魔法なんだろうって」
「え?何を言っているんですか?上級魔法ならあなたも使ってたじゃないですか?それに、あのくらいが平均なら、私よりもっとすごい人だっていると思いますけど?」
「んん?」
「ええ?」
なんですかその反応は?
私何か変なこと言いましたかね?
その反応はなんか、常識を知らないと思われているようで、ちょっとショックです。
「平均?君のあの魔法が?」
「違うんですか?」
「ほ、本当に言ってる?謙遜してるわけじゃなくて?……」
「はい……?」
さっきから、殿下が訝しげな眼でこちらを凝視してくるのですが本当になんなのでしょうか?
「………どうやら、嘘をついているわけではないようだね」
「えっと……さっきから話についていけないのですけど………」
「……あのね、普通なら上級魔法なんて使えないんだよ」
「え?」
どういうこと?だってさっき実際に………
「僕はね、自分で言うのもあれだけど、これでも魔法の天才って呼ばれてて王国の魔法師団長と同じくらいの魔法が使えるんだよ?」
魔法師団長?そ、それって確かこの国で一番強いっていう………ということは、その人と同じくらいの力を持っているっていう殿下より強い魔法を使っちゃった私ってもしかして………
この国で……最強?
「あ、あはははは………」
さっき、常識ないと思われているようでショックとか思ってましたけど、実際本当に私って常識ないのでしょうか…………
私からはもう、乾いた笑いしかでてこなかった。
***
試験から二日がたった今日はついに、合格者が発表される日だ。
こないだは、散々な目に遭ったなぁ………
いや、まぁ自分のしたことですけど……
「ま、まぁ、今日こそは目立たずに存在すら気付かれないくらい地味に!さっとみてさっと帰る!」
「………」
な、なんか、フラグを立ててしまった気がします……
そうして私はローブを深くかぶり、部屋を出た。
外に出ると試験日ほどではないが、大勢の人が行きかっていた。
試験の日と同じ道を歩いて行くとあの日と同じ校門が見えてきた。
学園と道とを隔てている高さ六メートルほどの壁に受験を受けたと思われる人たちが、笑っていたり、またある者は泣いていたりもした。
どうやら、左側からクラス順にE・D・C・B・A・Sと名前が張り出されているようだった。
私はやらかしちゃったし、平民だから良くてBクラスくらいかなぁ……
そう思い、私はBクラスが張り出されているところへと向かった。
……無いなぁ………
あれから、B・C・D・Eとみていったが、どこにもシルヴィアの名前はなかった。
ま、まさかね……
そんなことあるわけないと思いながら、私はAクラスが張り出されているところへと向かった。
見落とさないように慎重に見て行ったがやはりそこにも私の名前はなかった。
や、やっぱり……実技ではやらかしちゃったし、筆記ではきっと簡単に見せかけていただけで本当はもっと私が理解できないような難しい問題だったのよ!
でも、……これからどうすればいいのかしら……学園以外で情報を集めるしかないわよね……
シルヴィアがう~んとうなっていると、Sクラスが騒がしいのに気がついた。
少し気になってSクラスが張り出されているところに行ってどうしたのか聞いてみた。
「何があったんですか?」
「あぁ、この騒ぎのことだろ。何でも主席候補といわれていたルシエル殿下が二位で、名も知られていない平民らしい奴が主席だったらしい」
「へえ~、すごい人もいるんですね」
シルヴィアはそれを聞いて、そういえばまだディルとケインの名前を見てないなと思いSクラスの名前を下から順に見て行った。
あ、あった!ディルが十六位でケインが七位?!二人とも魔法が得意って言ってたけど、Sクラスなんて!
シルヴィアは二人の名前を見つけた後、騒ぎになってる平民というのが気になって一番上に目を向けた。
んん?んんんんん?い、一位シルヴィアって……ま、まさか………
「わ、私が主席!?!?!?」
あまりにも予想外過ぎて?シルヴィアはつい、大きな声をあげてしまった。
そしてその声は騒がしかった周りにもはっきりと聞きとられていた。
ま、まずっ………!
「貴様か!シルヴィアってのは!」
いきなり後ろから声をかけられたシルヴィアは逃げようかとも思ったが、周りに距離を取られて囲まれてしまっていたためそれはできなかった。
そのまま無視をするわけにもいかず、仕方なく返事をした。
「そ、そうですけど………」
振り向くと、そこにいたのは腹で服がはちきれそうになっている、上から目線の貴族らしい人だった。
「おい平民!貴様どんな手を使ったんだ!子爵家の嫡男であるこの僕が平民より下のクラスなんてありえん!答えろ!」
「どんな手をって………普通に試験を受けただけですけど………」
「口答えする気か!」
「えーっと……」
「そもそも何だ。その怪しいローブは!そうか、あまりにも醜い顔を隠しているんだな!僕に口答えした罪だ!その醜い顔をここでさらしてやる!」
いやいや、どうしてそうなるんですか!というかローブを脱がすのはやってるんですか?!
ローブを脱がそうと襲いかかってくるが、こんな遅い動きは目をつむりながらでもよけられる。
だが、よけるとまた何か言ってきそうなので逃げようとしたところを風によって脱げてしまったように見せかける。
目立たないためにローブを着てはいるが、入学したら制服を着て髪も隠せなくなるため、まあいいかと思ったからだ。
だが、私の素顔を見た相手は驚いた表情を私にむけた。
「き、貴様、平民のくせになかなか……」
子爵家の嫡男と名乗った相手はこちらを値踏みするような気持ち悪い視線を向けてきた。
「よし、決めた。貴様今までのことはなかったことにしてやるから、その代わりに僕の愛人になれ」
「はぁ?」
自信満々に僕は寛大だからなと言って見下してくる。
「平民がこの僕の愛人になれるんだ。名誉なことだろう」
ふつふつと怒りがこみ上げてくる。怒りを抑えている手はひくひくと震えていた。
それを喜びで震えていると勘違いした相手は自慢げに胸をいや、腹を張っていた。
「……お断りします………」
「ん?なんだ?聞こえなかったぞ」
「だから、お断りすると言っているんです!」
今度こそ、シルヴィアは全員に聞こえる声で宣言したのだった。
「な、貴様!せっかくこの僕が許してやると言っているのに!」
そう言って、私に手をあげてきた。
痛いのは嫌だし、こんな奴に触られるのも嫌だと思ったシルヴィアは、今回はよけることにした。
だが、ちょうどその時それを制する声が聞こえた。
「そこまでだ」
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