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王都に向けて

「私、王都に行ってそこにある王立魔法学園の試験を受けるんです」

「……まさか、あの実力主義の超難関校のか?」

「はい、多分その学園のことだと思います」

「へえ、シルヴィアちゃんは魔法得意なのか?」

「ま、まぁ一応」


私の魔法は既に得意などという低い垣根など簡単に凌駕していたため、質問にはあえてはっきり答えなかった。


「まあ、厳しいとは思うがもし本当に合格したら五年間はめったに会えなくなっちまうなぁ……でも、応援してるぞ」


少し悲しそうな微笑を浮かべながらも、応援すると言ってくれたガンツさんはやはり、本当にいい人だなぁと改めて思った。


「それでシルヴィアちゃん。乗り手はもう決まったのか?決まってないなら紹介するぜ!」


このラメルクの町から王都までは馬車で五日はかかる。入学試験は一週間後のため、まだ時間はあるが何があるか分からないためすぐにでも出発したかった。

なのでこの提案はシルヴィアにとって、とてもありがたいことだったので、シルヴィアはガンツに乗り手を紹介してもらうことにした。


「じゃあ、お願いします!」

「おう!ついてきな!」


私は、さっきの衛兵に「では、私はこれで」といったあと、そのままガンツさんの後を追いかけていった。

しばらくついていくと、一人のおじいさんと腹を地面につき寝そべっている一頭の馬が目にとまった。

その時、ガンツさんがそのおじいさんに話しかけた。


「よう!ジンの爺さん!」


名前を呼ばれ、振り向いた人という名前らしいお爺さんは、一瞬こちらを見た後すぐに視線を馬に戻し、何の用だと恨めしげに言った。


「ああ、この子を王都まで乗せてってほしくてな!」


ガンツさんに前に出された私はジンさんに頭を下げ、簡単な自己紹介をし、王都まで乗せてってほしいと頼んだ。


「悪ぃが(こいつ)が脚をけがしちまってるから、そりゃあ無理だ」


私がジンさんにこいつと呼ばれた寝そべっている馬の脚をよく見ると、後ろ足の関節の部分が赤くはれていた。

私はそれに気がつくと、無意識にその馬のそばに駆け寄り赤くはれている部分に手をかざすと、無詠唱(・・・)で聖属性の下級魔法である《ヒール》をかけた。

すると、みるみる怪我のはれが引いていき、完全に怪我が治った時、馬が元気よく立ちあがった。

それを見た私は安心して振り返った。

するとそこには、ガンツさんとジンさんが口を大きく開いたまま固まっていた。

しばらくすると、ガンツさんが口を開いた。


「おい、シルヴィアちゃん……今のは回復魔法だよな……シルヴィアちゃんは聖属性の魔法が使えるのか?」

「え?はい、使えますけど……でも、下級魔法だけですよ?」


まず、魔法にはランクがある。

下から順に、、、


生活魔法 : 誰にでも使えて殺傷能力のない魔法



下級魔法 : 一般人より、少し魔力が多く普通の動物くらいなら、しとめられる魔法

       駆け出し冒険者くらい



中級魔法 : 中型の魔物などなら、しとめられる魔法

       ベテラン冒険者くらい



上級魔法 : 大型の魔物も倒せる魔法

       王宮魔法使いくらいしか、使えない魔法



王級魔法 : 一発で町が消えてしまうくらいの魔法

       人間には使えず、魔法が得意な種族でもほんの一握りしか、使える者が 

       いない魔法



神級魔法 : 一発で国が消えてしまうくらいの魔法

       使えるものはいないとされているが、唯一伝説の神竜族は使えるとされる

       者がいない魔法



帝級魔法 : 世界が危険なレベルの魔法

       存在しないといわれているが、実際には神竜族の中でもほんのひと握りの

       者だけが使える魔法

           


ということになっている。


「そ、そりゃそうだが、聖属性の魔法は扱いが難しくて下級魔法でも難易度は他の属性の中級魔法と同じくらいって話だぞ!」


実際シルヴィアは全属性の魔法も神級魔法まで使えるし、特に得意な水・氷・光・聖・無の属性の魔法は既に帝級魔法まで使えるようになっていたが、まさかそんな事を言えるはずもないので、下級魔法しか使えないと言ったのであった。


「え?そうだったんですか?」

「ああ、もし使えることがばれたら平民の場合、教会につれて行かれる可能性もある」

「ええ?!」

「だから、俺らは言いふらしたりしないが、絶対に信用できない奴の前で聖属性の魔法を使ったりするなよ?」

「……ありがとうございます…」

「まあ、平民でも学園の生徒になればそんなことにも、ならないと思うけどな」


(よ、よかったぁ~)


この時私はとてもほっとしていた。もし、教会に捕まってしまったら調査もできなくなり、何十年たっても姿が変わらないことで正体がばれてしまう可能性もあると考えたからだ。


「おい、嬢ちゃん、王都に行きたいんだろ。ぼっ~としてないで早く後ろに乗れ」


はっとして、ジンさんのほうを向くと元気になった馬を馬車につなぎ、出発の準備をしているジンさんの姿があった。


「は、はい!」


そう言って、私は急いで馬車の荷台に乗りこんだ。


「本当にありがとうございました。ガンツさん」

「ああ、シルヴィアちゃんなら、絶対に合格できる」

「はい」


ちょうど、その時馬車が動き出した。


「行ってきま~す」


こうして、シルヴィアを乗せた馬車は王都へ向けて旅立った。






***






今日は家を出発してからちょうど五日目だ。


「………嬢ちゃん、外を見てみな。王都が見えてきたぞ」


ジンさんに言われたとおりに外を見てみると、前方に立派な白い城壁とその向こう側に大きな城が見えた。


「わぁ、あれが王都ですか!すごい!」

「あぁ、ここに訪れる奴はみんな同じ反応をする」


私はなんか、前世のヨーロッパの街並みに似てるなぁと心の中で思っていた。


「ジンさん!やっぱりあの一番大きな建物って……」

「ん?ああ、あれか?あれは王城だ。あそこにこの国のお偉いさん達が住んでいるんだ」

「へえ~、壮観ですね!」


シルヴィアは初めての王都、そして新たな出会いに胸を躍らせるのであった。

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