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八年前の出会い

今回も師匠ルーシュトレイド目線で、幼い日のシルヴィアとの出会いを書きました!

(ルーシュトレイド目線)




それは、八年前のある日のこと私が森で薬草などを採集をしている時のことだった。


「こ、この子は一体………」


そこで見つけたのは、泥で汚れた服を着て倒れている少女だった。なぜこんな森に一人で倒れているのかも謎だったが、私にはもっと謎に思ったことがあった。


(これは、神竜族の気配……?それに、この子のネックレスから感じる魔力……これは、まぎれもないヴィルヘルム様の魔力……!それにこの子自身の魔力もヴィルヘルム様にとてもよく似ている……まさかこの子はあの方の……!)


「とにかく、このままではいずれ死んでしまいます。事情は後で聞くとして今は連れて帰ったほうが良さそうですね。それに、同じ神竜族なんて珍しいですからね」


そうして私は倒れている子を抱えあげ、そのまま家に連れ帰った。

その後その子は三日間熱に浮かされ寝込んでしまった。その間にその子は「母様…死なないで」「父様…助けて」と夢の中でうなされているようだった。そして、その子が目覚めたのは私がその子を見つけてから、四日目のことだった。


「ん……ここは………」

「目が覚めたようですね」

「えっと……」

「あぁ、私は神竜族の《知恵》を司る竜のルーシュトレイドと言います。あなたが、森で倒れていたので保護したのですが、何があったのか覚えていますか?」


私は少女が少しでも安心できるように種族を明かした。

だが、そんなことはどうでもいいように、少女は混乱しだした。


「……森………倒れて……あぁっ…母様……父…様……い、いや、いやあぁぁあああ!!!」





***





「少しは、落ち着きましたか?」

「う、うぅっ、はい、ありがとうございますっ……ひっく…うっ……」

「……ゆっくりでいいので、何があったのか話せますか?」


そういうと、少女はゆっくりと口を開いた。


「はい……私はシルヴィアって言います。年は八歳で、父様は神竜族で母様は人間族です。」

「……あなたのお父上というのは《海》を司るヴィルヘルム様のことですね?」


私がヴィルヘルム様のことを知っていると知ると、シルヴィアと名乗った少女は少し安心したような顔をした。


「父様のことを知っているの?」

「それはもちろん、有名な方ですからね……それで、何があったんですか?」

「……いきなり、襲われたんです。黒ローブの人たちに……それで母様は死んで、父様も……うっ…その人たちに捕まってしまいました………」

「!まさか、負けたんですか?!あの方が!」

「……はい…私は川に落ちて死んだと思ったみたいで、そのまま去って行ったみたいです……」


私は正直かなり驚いていた。まさか最強と言われている三大神竜の一人が簡単に負けるとは思ってもいなかったからだ。


「それに、私と母様のことは知らないみたいだったんですけど、観た者は全員殺すといわれて………」

「そうでしたか。つらいことを聞きました。すみません」

「いえ、大事なことですから……」


普通このくらいの子どもならば、もっと取り乱してまともにしゃべれないと思っていたのに、この子は取り乱しはしたが、すぐに冷静になって話し出したことに私はまたも、驚きを隠せずにいた。


「シルヴィアさん、あなたほかに家族はいますか?」

「……シルヴィでいいです…家族は父と母以外にはいません」

「……そうですか………」


私はこの子を放っておいてはいけないと思った。それは、この子がヴィルヘルム様の子供でそのあとを継ぐ竜であるからという理由だけではなかった。

神竜族には魔力とは別に神力という力がある。それは、成竜になると半分ほど増えるのだが逆にいえば、子竜にもその半分ほどの神力がある。

魔力はいろいろな属性の魔法を使える力だが、神力はその竜がもし命を司っている竜かその子供の場合、命に関連する力が使えるというものだった。

話を戻すが私は《知恵》を司る竜である。つまり私は《知恵》に関連する力が使えるというわけだ。そしてその一つに相手の力を知ることができるというものがあった。もう察しているでしょうが私はこの子の眠っている間に、この力を使ったのである。そこで私は自分の目を疑った。


(な、なんですか、この圧倒的な魔力量と神力量は?!こ、これは、魔力量と神力量だけならすでにあの最強といわれる三大神竜をも凌駕していますよ?!それに、まだ成竜になっていないということは、神力量はまだもう半分ほど増えるということですよね?!)


ということがあったのだ。また、このままにしておくと彼女の心はいずれ、壊れてしまうとも思った。


「……分かりました。ではこれからはここに住むといいでしょう。これからよろしくお願いしますね。シルヴィ」

「えぇ!ま、待ってください!これ以上迷惑をかけるわけにはいきません!」

「はぁ……何言ってるんですか。ここから出て行ったところで子供のあなたは何もできませんよ……」

「そ、それは……」

「子供は気を使ったりせずに、大人に頼っていいんですよ」


そういうと、ようやく緊張が解けたようで彼女はわっと泣き出した。


「ううっ…父様……母様ぁ…どうして……どうして…私を残して……ひっく……今どこにいるんですか…父様……早く…早く迎えに来てください……うっ、うぅっ…うわあぁぁん!」


しばらくすると、彼女は泣き疲れたのか眠ってしまった。


「父様……いっちゃだめ…母様、死んじゃ嫌…目を開けて……」


どうやら、彼女は父が連れて行かれ、母が亡くなった時の実際に起きた悪夢を見て、うなされているようだった。


(彼女は大人び過ぎているがあまり、悩みを一人で抱え込んでしまうところがあるようですね)



それから、彼女の部屋からは夜になるとほぼ毎日のように、彼女にとって悪夢の一日であった日の夢を見ている彼女の悲痛な心の叫びが聞こえてくるのであった。


彼女は私に心配をかけたくないのか、夢のことを相談しに来たりはしなかった。

彼女は私に夢のことがばれていないと思っているようだった。

そして私自身も彼女に夢のことを聞いたりはしなかった。

彼女は毎日笑みを絶やさなかった。



そして、少女を森で拾ってから八年の月日がたった――





彼女は今もまだ、ほぼ毎日のように、悪夢にうなされているようだった。

だが、今まで誰にも相談しようとしなかった。

また、彼女は決して私に弱音を吐かなかった。

それはまだ、完全に私に心を開いていないということなのかも知れない。



そんな時だった。成竜の神竜族が次々と姿を消していると知ったのは―



私は、チャンスだと思った。見た目こそ、ほとんど変わりはないが私は既に四千歳を超えていて、それに比べてシルヴィはまだ、来月十六歳になる少女だった。彼女が完全に心を開いてくれないのは年齢の差という理由もあると思った。

私は、今回の事件を彼女に任せることにした。それは、私がいると彼女の存在がばれる可能性があり、私といると危険な目に遭い調査がしにくいということもあったからだ。

だが、王立魔法学園に行かせるのには、情報が集まりやすいという理由だけではなかった。

私は、彼女が王立魔法学園で同世代の子たちと交流し、他人に対してもう少し心を開いてくれるようになればという理由があった。





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