異世界の勇者
「これにて、入学式は終了となります。新入生はまず各教室で、担任の教師が来るまで待っていてください」
「Sクラスの人は私についてきてくださーい」
「Aクラスの人~」
「Bクラス~」
その声に合わせて全員が立ち上がり、移動し始めた。
***
しばらく歩いたところにSクラスと書いてある教室を見つけた。
そのまま集団と一緒にその教室に入った。
「席は自由です。しばらく担任の教師の方が来るまで待っていてください」
そう言い残して、ここまで案内してくれた人は教室を後にした。
私は目立たないようにと一番後ろの窓側の席に座った。
「よう、シルヴィ!久しぶりだな!」
「お久しぶりです。シルヴィアさん」
いきなり、隣から声をかけられて振り向くとそこには赤髪の青年とエルフ族の青年がいた。
「ディル!それにケインも!」
「おう!」
「お久しぶりです!やっぱり、合格発表のときに書いてあった名前、二人だったのね。Sクラスだったから驚きました!」
「いやいや、驚いたのはこっちだよ!主席にシルヴィアって書いてあったけどまさかシルヴィアのことだとは思わなくてさ、さっきの代表のあいさつではマジで吃驚したよ!」
「ディルの言うとおりですよ。シルヴィアさん。というか、やっぱり噂で聞いた魔法が使えるんなら、聖属性の魔法もヒール以上使えますよね?」
「そうそう、シルヴィ!お前、実技試験で学園の結界破壊したって本当かよ!」
「え、えぇっと~……」
いきなり二人に質問攻めにされてシルヴィアは混乱していた。
あれは、事故っていうか~、というか、ケイン私のことすごく怪しんでない?!
ちょうどその時素晴らしいタイミングで教室のドアが開いた。
「お前ら静かにしろ~。ホームルーム始めるぞ~」
そう言って入ってきたのは、短髪の無精髭を生やした四十くらいの人だった。
どうやらこの人がこのSクラスの担任らしい。
「あ~、このクラスを受け持つことになったクルド・フォン・ショルダーだ。よろしくな~」
ずいぶんと軽い感じの人だなぁ~
「じゃあまず、自己紹介から始めてくれ。じゃあ、まずシルヴィアお前からだ」
シルヴィアは内心えぇ~と思いながら、立ち上がり自己紹介を始めた。
「えっと、シルヴィアです。平民ですがこの学園では身分が関係ないと聞いているので、仲良くしていけたらと思っています。よろしくお願いします」
言い終わるとパチパチと周りから、拍手が起こった。
「次は、ルシエルお前だ」
「はい」
王族相手にこの態度……身分が関係ないといってもさすがにちょっと………
そのまま、自己紹介は続いていった。
「俺は異世界から来たハヤト・ヤマザキだ。よろしく」
え?
昔何度も聞いた声とその名前に声のした方向を向くと、そこには日本人特有の黒髪黒目をした青年が立っていた。
な、何であいつがこの世界に?!
十六年も前のことなので気がつかなかったが、そこに立っていたのは、十六年前転生する前に私をいじめていた集団のリーダー的な存在だったハヤト・ヤマザキもとい、山崎隼人だった。
もしかしてあいつが召喚されたっていう勇者?!
ということは、他の召喚された勇者っていうのは………
そう思い、辺りを見回すと同じ黒髪黒目の人物は予想通り三人いた。
まず、相浦琴音。私をいじめていた中の一人だ。
次に稲賀優也。かばってくれることもあったけれど、クラスが変わってからはそんなこともなくなってしまった人だ。
最後に雨宮由香。学年委員長を務めていて正義感が強く私をよくかばってくれた人だ。
最後の二人はまだいいとして、最初の二人は勇者として選ばれるのはどうかと思う。
……それにしても、もう十六年もたっている筈なのに四人とも私が知っているころと全然かわっていない。もしかして、こちらの世界と向こうの世界じゃ時間軸が違うのかしら?
まぁ、あの四人はおそらく事件とは関わりがないだろうし、私の正体が御園香織だってばれてまたいじめられるのも嫌だし、だまっておきましょう。
そんなこんなでいろいろありながらも、ホームルームは終わった。
***
「うわぁ、やっぱり凄い………」
私は現在学園の寮の前にたっていた。
学園のほぼ全員が寮住まいということもあって寮自体もとても大きかった。
寮は二人で一部屋と聞いている。
私は優しそうな子だといいなぁと思いながら寮の中に入った。
「えっと、シルヴィアとエリアーナ・フォン・アルファント……ここだよね」
それにしてもこの同室の子の名前さっき聞いた気が………
そんなことを考えながら部屋に入るとブラウン色の髪とアメジスト色の目をした少女がいた。
「あら、やっぱりあなたでしたのね。シルヴィアさん」
「あなたは確か、同じSクラスの……」
「はい!エリアーナです。これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いします」
………。
「ふ、ふふっ、なんか、堅苦しいですね。私のことはエリーで構いません。私もシルヴィと呼んでもいいですか?」
「は、はい!」
最初は少し緊張していたが、少し話してみると、とても優しそうな子のようで嬉しくなった。
「じゃあ、改めてよろしくお願いしますね。シルヴィ」
「はい!こちらこそお願いします!エリー」
こうして、私にこの世界で初めての女友達ができたのであった。
***
そのあとは、全くゆっくりできなかった。
エリーと共に食事や入浴などもしていたのだが、寮以外ではどこにいても視線を浴びるのだ。
それは例外なく同級生、上級生、はたまた教師からも視線を送られていた。
それは、決して蔑んだり、悪意をもったものではないのだが、さすがに一日中されていると疲れてしまう。
「ごめんなさい。エリー、私のせいで………」
そう謝罪の言葉を口にするとエリアーナは、それを予想外の言葉で返した。
「シルヴィ、あなたは人気者なのね」
「え?」
「確かに視線をいっぱい浴びて疲れたけど、みんなあなたを尊敬のまなざしを向けてたわ。友達が軽蔑されたるするよりは、よっぽどマシよ」
「で、でも……」
「私、あなたと同じ部屋だと分かってすごくうれしかったんです。こんなに、素晴らしい人の同室が私でいいのかって……」
シルヴィアは言葉の意味がよくわからなかった。
彼女は伯爵家の令嬢だと聞いている。
だから、なぜこんなにも自分を卑下するような言い方をするのか分からなかった。
だが、そんな視線を向ける私に気付いたのかエリアーナは語りだした。
「私の母は、政略結婚で父と結婚しました。母は私のことを愛してくれましたが父は愛してくれませんでした。そんな中、母が他界しその後すぐに父が囲っていた愛人と結婚し子供が生まれ、私の居場所は無くなってしまったんです」
………。
「大変……でしたね」
「そうですね」
ここで誤れば、あなたは不幸だと言っているようなものになってしまうため、シルヴィアはあえてそれを口にしなかった。
「でも、今はシルヴィのような素敵な友人ができてとても幸せです。だから、あんなこと気にしなくていいんです」
「わかったわ。ありがとう……」
「さ、明日は初めての授業もあることですし、今日はもう休むことにしましょう!」
「え、えぇ……」
そのまま、半ば強引ではあるが灯りを消して、シルヴィアとエリアーナは眠りについた。




