結果
「え?」
「あ、あなたは……!」
声がした方向には、先日知り合ったばかりのルシエル・フォン・シルヴァード第二王子がいた。
「君は確か子爵家のバルン・フォン・デグルデだったかな?。私には今、君がシルヴィアに手を上げているように見えたのだがこれは、どういうことだい?」
「こ、これは、この女が試験で不正を働いていたためそれを注意していただけでございます」
………一方的に言ってきてその上、愛人になれって言って断ったら手を上げてきたのはそっちなのに注意ってなんなのよ……!
「そうか、じゃあその証拠はあるんだね?」
「え?」
「もし、彼女が不正をした証拠もなしにそんなことを言っているのなら、どうかと思うけど?」
「そ、そんなものなくてもわかります!それとも殿下はこの女の肩を持つというのですか?!」
「そうはいっていない。ただ証拠もないのに一方的に不正を疑い挙句の果てには自身の愛人になれと言うのはおかしいと言っているんだよ」
「そ、それは……!」
聞かれていたのかと、バルンというらしい相手はうろたえていた。
「で、ですが、先ほど殿下はこの女のことをシルヴィアと呼んだではありませんか!この女と知り合いでそれこそ、一方的にかばっているのではないですか?!」
バルンはどうだ!と言いたげに胸……じゃない、腹を張っていた。
だがそんな彼とは裏腹にああ、それは、とルシエルが口を開いた。
「実技試験で試験官が倒れてしまって困っていたシルヴィアと共に、試験官を医務室まで運ぶのを手伝ったんだよ。その時に知り合ったんだ。それに、彼女が不正をしていないということについては私が保証しよう。私は実際に彼女の魔法を隣で見ていたが、王級魔法も防ぐといわれている結界を、私と同じ上級魔法を無詠唱で放ち簡単に破壊していたよ」
「は……?!学園の結界をですか……?」
その途端、真っ赤に染まっていたバルンの顔がみるみる青ざめていった。
「で、殿下、よ、用事があるのを思い出したので先に失礼させていただきます!」
そういって、バルンは逃げるようにこの場を後にしていった。
「殿下ありがとうございます」
「いや、いいんだ。あのバルン・フォン・デグルデは、貴族の中でも平民を見下していて他にも色々と悪名高い奴だからね」
「そうですか……」
というか、本当にフラグ立ってたんですね………
そんなことを思いながらもローブをかぶりなおした。
「それにしても、入試主席おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
「まさか、実技だけじゃなくて筆記も規格外だとは思わなかったよ」
……規格外って、どういう……
そんなシルヴィアの心情を察したのかルシエルが口を開く。
「実はね、受験生にありえない解答をした受験生がいると王城に連絡が入ったんだ」
「え?」
「問題の殆どは古代魔法って言われている一万年くらい前の勇者が使っていたすごい魔法の魔法陣を描くものだった」
?そんなの暗記すれば誰でも………
「古代魔法は今から約八千年前に失われてしまって、どんな魔法があったのかはいくつか分かっているが、使える者がいないせいで魔法陣がどんなものかまでは分かっていないんだ」
「え?それじゃあ、あの問題は?」
「あの問題はどこまでその強力な魔法に、より同じ効果を発動させる魔法陣を描けるかというものだ」
え?より同じって………あそこからもっといい魔法陣にする問題じゃなかったの?
「だからびっくりしたよ。君の描いた魔法陣は信じられないくらい複雑で専門家が見ても全く分からなかった。ただ一つ分かったのはその魔法陣が古代魔法より強力だろうということだけ」
そりゃあ、私が新しくあの場で考えた魔法ですしね。
まぁまぁのできだったと自負してます。
「でもまぁ、あんな強力そうな魔法、古代魔法すら使えない私たちのもとにあっても、そんな魔力量の人は存在しないからね」
というか、私その古代魔法、全部使えるんですけど……?
「ま、簡単にいえばそういうこと」
「はぁ……」
ルシエルはやってしまったとため息を吐いている私を見て笑っていた。
「ちなみに、シルヴィア、君自分が入試で何点だったか知ってる?」
「?いえ、点数までは張り出されていなかったので」
確か実技と筆記で合計二百点満点だったはずだ。
「君ね、実技が二百四十五点で筆記が三百九十一点の合計六百三十六点だったんだよ」
なっ?!満点どころか満点通りこしてるじゃない?!
「この学園ではほとんどないけれど、教師でも驚くような素晴らしい解答だったりする場合には点数に加点されるんだ」
いやいや、だからってそれは………
「まぁ、歴代最高でも合計四百十五点だけどね」
「って!私、歴代最高超えちゃってるんですか?!」
「ちなみにその歴代最高っていうのは、今現在の生徒会長なんだけどね」
「そうだったんですか?」
「ああ、つい最近勇者が召喚されたのは知っているね。どうやら彼らは戦いも魔法もない世界から来たようでね、素質はあるんだが使い方を学ぶために試験抜きで特別にSクラスということになっているんだ」
「そうなんですか」
戦いがない世界っていうとやっぱり地球とかかな?
「ところで話は変わるんだがシルヴィアは本当に平民なの?」
「え?そうですけど……」
「それにしては口調や一つ一つの動作が精錬されているな。まるで上流階級の貴族並みだよね」
「え?」
「誰かに習ったの?」
「母がそういう言動をしていて、私もそういうのに憧れて教えてもらってました」
「ちなみにそのお母様というのは?」
「……私が八歳の時に亡くなりました」
「………ごめん。つらいことを聞いた」
「いえ、もう八年も前のことなので」
そう言って、無理やり笑みを浮かべた。
いつものことなので、無理やり浮かべている笑みももう、ぎこちなく見えることもなく心から笑っているように見えるようになっていた。
「!そうか……」
なんか気まずい空気になっちゃったわね……気にしてないのに………
「え、えっと、じゃあ私そろそろ行きますね!あまり目立ちたくないので!」
「あ、ああ」
そう言って、私は宿に向かって歩き出す。
それにしても、まさか学園に通うことになるとはなぁ……
今世では違う目的があるけれど、楽しい学園生活が送れるといいなぁ……
「帰りました~」
「お帰り、シルヴィアちゃん」
「ディーカさん!」
宿に帰ってくるとこの宿の店主のディーカがいた。
「結果はどうだった?」
「受かりました!」
「ほ、本当かい?!今年は特に厳しいって聞いたよ?!」
「はい!」
「そうかい!おめでとう。今夜は約束通りとびきりうまいケーキつけてやるからな!」
「ありがとう、ございます……」
少し涙ぐみながらおめでとうと口にしてくれるディーカは実の母親のようだなと思った。
また、もうこの世に母がいないという事実に涙が浮かんできたのだった。




