↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の悪意の物語  作者: 王立魔法学院書記官
1.南のはしっこの森
PR
2/204

プロローグ

 暗闇の中、光るしずくが落ちて青い水面《みなも》に波紋を広げるように、かすかな呼び声がして意識がさめた。


 上に、ぼんやりした明かりが見える。

 声はそこから聞こえるようだ。


「……は、きこ…………か?」


 よく聞き取ろうと、明かりを見つめる。

 するとそれは、光の渦《うず》となって外へ広がった。


 光は、一つ一つが黄金《こがね》に輝《かがや》く異国の文字で列をなしている。


 ふいに、音楽が聞こえる。いや正しくは、男の声をいくつも重ねた詠唱だ。

 低い声、高い声。ある声は力強くゆったりと、ある声はささやくように急ぐように。


 その多重奏に合わせて、光の渦《うず》はしだいに広がり、やがて目の前を白く染めあげる。


 音と光は意識に深く染《し》みわたり、まるで温《あたた》かい湖《みずうみ》に身体《からだ》が沈むよう。


 再び声が問いかけてくる。


「こんどは、きこえ……ますか?」


 夢からさめて、初めて言葉を発するように答えた。


「……ふぁ……はい」


 呼び声は、ほうと一息つくと明るく話す。


「よかった! わたしは、……るばてっら王りつあかでみー……たん究者、あるふぉんす・きりングともうします。

 あなたのお名前は?」


 なんとか、口に出す。


「マ……キ」


「まき?」


「……。マキ……オ」


 光の向こうから、楽しげな笑い声が響く。息づかいまで近づいてくる。


「マキ・オ?

 なんだか古代エルフの字名《あざな》のようだね。

 とても高貴で、素敵だけど、ここでは目立ち過ぎる。

 ……不本意かもしれないが、こちらへ来てもらったら、平凡な名前がいいよ。

 ……。

 マルコでどう? 大河からこっち、南ではとてもよくある名前なんだ」


 呼びかける声は急に饒舌《じょうぜつ》になり、なんだかやけに馴《な》れ馴《な》れしい。


 マルコと名付けられ、ようやく意識がはっきりしてきた。

 夢を見ているんだろうか?


 詠唱のこだまが響《ひび》いて、息苦しくなる。


 疑問が一気に胸に湧く。


「マルコ? 名前を変える? いいですよ。

 ……いままで良い事もなかったし。

 でも、あなたは誰? これは夢––––」


 その瞬間、全ての音が止《や》んだ。


 男は、こんどはどこまでもよく通る声で、太陽のように朗々(ろうろう)と、雷《いかづち》のように激しく大音声《だいおんじょう》を唱えた。


「我《われ》、神の善意なりしロムレスのグリーを用いる者!

 アルバテッラの人ならぬ異邦の人の承認を得《え》たり!

 第三の神の力を借りて、此《こ》の人を我が元へと召喚するものなり!」




 そうして、すべてが真白《ましろ》になった––––。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
cont_access.php?citi_cont_id=371337516&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。