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Last and First~カッコつけた言葉はいつだって、鎖のように互いを縛る~

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




 ──さて、お客様がた。

 今宵もわざわざ我らが公演に足をお運びいただき、まことにありがたく存じます。

 演目は、世にありふれた恋話。舞台は月夜のバルコニー。

 いささか陳腐なシチュエーションではございますが、どうぞ皆様、お楽しみ下さいませ。






「……ああ、君はなんて美しいんだ」


「だめよ、いけません、私には親が決めた婚約者が……」


「我慢して、諦めてしまえとおっしゃるのですか、愛しい人よ」



 傷ついたような顔をする男。女は、流されてはならじと毅然とした表情をとりつくろいます。



「嫁に選ぶのならば、私などよりもっとふさわしい素敵な方が沢山いるでしょう」


「美しくも残酷な方だ、こんなにまでも君を愛している哀れな男に、なんと心無い言葉……」


「馬鹿なことを、私のような者のために、全てを犠牲になさる覚悟がおあり?」



 煽るような言葉に、男の態度が変わります。

 おどけたような笑顔を引っ込め、真剣な表情で女の瞳を見つめます。



「理想の女が手に入らぬのならば、他の全てを手にしたところで、何の意味があるでしょうか?」



 頬を赤らめ、目を反らす女。案外初心でございますな。



「……身体だけが目当てなのではなくて?」



 いやはや素直ではございません。侮辱とも取れる言葉に、男は動じず言い切ります。



「手に入れたいのは身体ではなく、あなたの心です」


「す、少し、少し考えさせてください……」


「いいえ、考える時間も迷う時間も与えませぬ、どうぞご決断下さいませ」



 男の剥き出しの情熱に、満更でもない表情を浮かべる女。



「……せっかちなお人」


「止まらぬのですよ、この愛は」


「私を……幸せにしてくれますか?」



 女の問いに、間髪を入れず応える男。



「悲しみと不幸を、決してあなたには近付けさせぬと誓いましょう」


「裏切ったならばどうします?」


「すぐさまこの胸に短剣を突き立て、そのような不実な愚か者の心臓をえぐり出して見せましょう」


「……嘘だったら、許しませんよ?」


「良き恋人、良き伴侶として一生あなたに尽くすと誓います」



 堂々とした態度で宣言する男の言葉に、女の瞳が揺れています。



「……少なくともあなたに、弁舌の才と女をその気にさせる才が有るのは確かなようです……私が愚かなだけかも知れませんけど」


「どうかお願いです、私のものになって下さい!」



 弱々しく呟く女の手を取り、迫る男。はてさて、女の返答やいかに──?




 →イエス

 →いいえ






 ――女がどちらを選んだか。

 結末はご想像にお任せいたしますが、いずれにしても、今宵のしりとり公演はこれにて終了にございます。






 Fin.





 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

※タイトルの『Last and First』は英語圏での『しりとり』になります。カッコつけた言葉(「」つけた言葉=台詞)を辿るとしりとりになってます

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