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第19話 帝国の皇帝が土下座する話 (4)

 主人公の一人称視点です。

 皇太子達がボコボコにされていた間、火消坂が何をしていたかという話になります。

 僕にはやりたいことが2つある。

 1つは、帝国にやられたことを、たっぷりやり返してやること。

 もう1つは、地球とこの世界を自由に行き来できる隠しスキルをゲットすることである。


 でも、オアシス都市を出発した時点の僕は、どうすればこの2つが達成できるのかわからず、途方に暮れていた。


 途方に暮れていた理由はこうだ。


 僕は帝国を滅ぼしたい。

 でも、実のところ、国家を滅ぼした経験が僕にはない。

 まったくの初心者なのである。


 国というのはどうやって滅亡させればいいのだろうか?

 首都を占拠すればいい?


 なるほど一理ある。

 オアシス都市で聞いたところによると、帝国の首都は帝都と呼ばれているらしい。

 皇帝を初めとした帝国首脳陣が在住しており、まさに帝国の中枢部と言える都市だそうだ。


 ここを襲撃してその首脳陣を全員ぶっ殺せばいいのだろうか?

 確かにそれでも滅びはするだろう。

 後世の歴史の教科書には『帝国滅亡』と載るかもしれない。


 でも、そんなことをしたら、帝国全体が混乱して、内乱状態におちいってしまうかもしれない。

 そうなったら、大勢の人間が死んでしまうかもしれない。


 まあ、別に僕は、正義の味方というわけではない。

 帝国に仕返しをして、ついでに隠しスキルもゲットしたいというだけの男だ。


 だが、その隠しスキルというのが、どういったものかご記憶だろうか?


-----


 [隠しスキル]

  異世界転移


 [効果]

  この世界と地球とを自由に行き来できる。


 [取得方法]

  今後50年かけて、帝国によって人類の半数が虐殺される。

  この未来を阻止できれば取得できる。

  具体的には、今の人類の住む星の人口が、50年後に今よりも多くなるようにする。


-----


 そう、隠しスキルを手に入れるには、この星の人口をできるだけ減らさないようにする必要があるのだ。


 おまけに、取得方法に書いてある通り、真面目にやるとスキル取得までに50年かかる。

 そんなのはやってられない。

 僕としては1ヶ月以内に済ませたい。それ以上時間をかけると大学の単位に響いてしまうからだ。それに漫画やゲームのない生活も長引くとつらいしね。工夫が必要だ。


 要するに僕としては、単純に帝国を滅ぼして、それでおしまいというわけにはいかないということ。


 じゃあ、どうすればいいかというと、アイデアはまだ無い。

 オアシス都市でスキルの実験は色々やったけど、あれは本当に思いつくままにやっただけで、面白い結果も出たから後で詳しく話したいけれど、ともかく問題解決のナイスアイデアはまだ無いのだ。


 仕方ないので僕は、将来帝都を襲撃するかもしれないからその練習ということで適当に近くの都市を攻撃したり、後はゴーレム達に周辺を偵察させたりしていた。

 そして、ナイスアイデアが浮かんだ。


 経緯はこうである。


 帝都襲撃の練習でとある地方都市を占拠した僕は、征服者として町の中心にあるヨーロッパ風の城に入った。

 中に入ると、豪華な服を着た豚みたいな脂ぎった男が、縛られたままの格好で、顔を真っ赤にして僕に怒鳴りかかった。


「こ、この蛮族め! この尊き血筋である帝国伯爵のこの私にこんなことをして、ただで済むと思ってごふはぎゃああ!」


 伯爵と名乗る豚は、メーレムにデコピンされて吹っ飛び、泡を吹いて気絶した。


 僕は城を進み、新たなる支配者として挨拶しようと、広場を見下ろすバルコニーに立った。

 広場には群衆が詰めかけていた。

 浴びせられたのは罵声だった。


「出てけ蛮族! ここはお前みたいにな薄汚れたクズの来るところじゃないぞ!」

「あたしたちは帝国人よ! あんたみたいな野蛮人はまず土下座しなさいよ!」

「そうだ、頭を下げろ! 蛮族は帝国人様の前に、はいつくばっていればいいんだよ! 俺が前に会った蛮族の男は、きちんと土下座したぞ? ま、土下座したところを殺してやったけどな。ぎゃはははは!」


 まったく、帝国人は相変わらずだね。

 とりあえずおしおきしようか。


 そう思って庭作りスキルを使おうとした僕だったが、スキルが発動しないことに気づく。

 ……うん、当たり前だ。

 庭作りスキルは『他人の土地』では使えない。

 ここは、あの伯爵とやらの土地なのだろう。

 オアシス都市でやったみたいに、土地の名義を僕のものに変える必要がある。

 役人を呼びつけ、そうするように指示する。


 が、それはできないと言われた。


「ふん、無知な未開人はこれだから困る。いいか、帝国の土地は帝都から辺境の荒野に到るまで、全て皇帝陛下のもの。伯爵様とはいえ、実態は陛下から土地を貸し与えられているだけで、大元の所有者は全て皇帝陛下にあるのだ。我々が名義をどうこうできるものではないのだよ」


 役人の男は見下すような顔で言った。


 他にも何人かに聞いたけど、反応は同じだった。彼らは口をそろえてこう言った。


『帝国の土地は全て皇帝陛下のもの』


 こんなことで口裏を合わせて嘘をつくとも思えないから、事実なのだろう。


(……あれ、ということは?)


 この時、僕の脳裏にひとつのアイデアが閃いた。


 ああやって、こうやれば、そうやれば……うん、行ける! 行けるぞ!

 上手い作戦を思いつくと、うれしくなって興奮する。

 すぐに実行したくなる。


 よし、さっそく帝都に行こう。

 この都市の連中におしおきをしないで立ち去るのは心残りだけれども、まあ数日後には彼らもおしおきを受けることになるのだ。

 鉄槌を下すのは、その時でいいだろう。


 とはいえ、まったく何もしないで立ち去るのも腹立たしいので、ゴーレム達に命じて、広場の真ん中に深い穴を掘ってもらい、そこに巨大な岩を差し込んだ。ちょっとした庭石というやつだ。

 細長い岩を縦にして差し込んだので、ちょうど広場に20階建てくらいのビルが建ったような格好になる。

 その巨大な岩にでかでかと目立つように、こう刻んだ。


『帝国はザコ』

『皇帝はバカ』


 表と裏にそれぞれ刻んでみた。目立つように赤い染料もたっぷり塗り込めておいた。

 ちょっと子供っぽいかなと思ったけど、反響は予想外に大きかった。


 僕を見下すようにしていた役人は顔を真っ青にして震えながら「ななな、なんてことを! ひ、ひいいいい!」と腰を抜かして失禁していた。

 罵声を浴びせてきた群衆達も、

「ひ、ひひゃああああ!」

「ななな、なんてことするのよ! こ、こんなことをしたら、あたしたち全員皇帝陛下に殺されちゃうじゃない!」

「あ、あ、あわわわわ……」

 などと大パニックだった。


 どうも帝国や皇帝を侮辱する言葉は不敬罪に当たるらしく、破る者は容赦なく死刑になるらしい。

 都市の真ん中にこんな侮辱の言葉を掲げられてしまっては、都市全体の責任になる。

 中央の役人に見つかる前に消さないと最悪町の住民の皆殺しもありうるそうだ。

 だが、侮辱の言葉を刻んだのは岩の高いところであり、簡単には登れない。

 住民としては、いつ見つかるかという恐怖に襲われながら、必死で文字を消そうと悪戦苦闘しなければならないというわけだ。

 うん、なかなかいい仕事をした。


 僕はうんうんとうなずき、町を立ち去ろうとする。


 偵察に出していた庭師ゴーレム達から報告が入ったのは、ちょうどその時だった。

 南に向かわせた一団が、帝国の大軍に襲われたので撃退したと言うのだ。


 当初は適当に閉じ込めて済ませようとした僕だったが、彼らが皇太子たちだとわかると(向こうが勝手に名乗った)、考えを変えた。

 こいつらを使えば、よりスムーズに作戦を進めることができると思ったからだ。

 ゴーレム達に命じて、皇太子を拉致し、炎軍の軍団長達を拉致し、ついでに炎軍全員の鎧もひっぺがえして持ってきた。

 さあ、後は帝都に行って作戦を決行するだけだ。


 僕は飛行船に乗った。

 月の時と同じで、(広いこの星で庭作りの管理をするには、飛行船が必要だ!)と念じたら出て来た。


 一緒に乗るのは、僕から離れようとしないメーレムだけで、皇太子や炎軍の連中は拘束した上で庭師ゴーレム達が生身のままぶらさげて飛ぶ。

 生身のまま連れて行くわけだから、あまりスピードは出せないが、それでも明後日くらいには帝都に着くだろう。


 僕と100万人のゴーレム達は、空を黒く染めながら、西に向かう。


 2日後、僕達は帝都に着いた。

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