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ゴブリン掃討戦(とても小規模)

 巣穴の洞窟の奥に進むと少し先にゴブリンの3匹ぐらいの群れを見つける。


『アレと戦い始めたらこの巣穴のゴブリン達が一斉に襲ってくると思う。

 準備が出来たら一気に攻めるよ』


『了解だよますたぁ。どんどん倒すね!』


 そうして虫取り槍を構える。

 


『よし、ローチ、準備は良い?』


『いつでも大丈夫だよっ!』


 肩に乗っているローチは、カサッと前脚を一本上げて念話で答える。


『よしっ、行きますかっ!!』


 一人と一匹の、小規模なゴブリン掃討戦がここに始まった。


 ローチを肩に乗せたまま、三匹居るゴブリンに向かって一直線に駆けだしたエド。


「『火球(ファイアボール)』!」


 槍の先にぐるぐると火が集まって行き、直径80センチ程になったソレはゴブリンへと向けて凄まじいスピードで飛んでいく。


「ゴブ!?ゴブゴブゴブ!??」


「ゴブゥゥゥゥ!!!」


「ゴッ!?ブギャッッ!」


 火の玉は、一匹に直撃して火だるまにする。

 仲間を殺された二匹のゴブリンは一瞬目の前で起きたことに動揺し、固まったがすぐに此方への敵意を剥き出しにして襲いかかってきた。

 だが、


『土遁・獄』


 ズズズズッと地面から何本もの柱がせり上がり、ゴブリン達を閉じこめる。

 頑丈な檻になった土を、ゴブリン達は破壊することが出来ずに中で暴れ回っている。

 やっぱ、このクロゴキブリ滅茶苦茶強いな.......。


『ナイスだ、ローチ!』


『これぐらい出来て当然なのですっ!むふん!』


 相変わらず可愛い声のクロゴキ。むふん。

 そのままエドは檻の中にいる二匹のゴブリンに向けて虫取り槍を突き刺す。


「疾ッ!破ッ!」


――ドスッ!

――ザシュッ!


 心臓を串刺しにされたゴブリン達はビクンッ、と震えると倒れて血を流し続け、しばらくすると息絶えた。


【ゴブリンの群れを討伐しました】

【経験値を120獲得しました】

【レベルが上昇しました】

【Lv.17→Lv.18】

【槍術スキルLvが1上昇しました】


「ゴブゥッ!?ゴブゴブゥゥッ!!」


「ゴオオオブゥゥゥ!!」


「ローチ!新手だ!」


『了解!風球(ウィンドボール)!!』


 新しく現れた二匹のゴブリンの片方に向かって飛んでいく風の玉は、直撃するとゴブリンの身体をざくざくと刻みまくる。


「ゴブゲェェェェェェ!??」


 ビシャビシャと血を噴き出させながら倒れるゴブリン。

 一方、もう片方のゴブリンは持っていたナイフを構えると、おぞましい形相で襲いかかってくる。


「ゴブウウウウウウウウ!!!」


「セイッ!」


 エドはゴブリンのナイフを虫取り槍の穂先で打ち払うと、一瞬だけ半歩下がってから一気にゴブリンの心臓めがけて打ち込む。

 

――ドスッ


 一撃で絶命するゴブリン。

 エドの現在の強さなら、恐らくゴブリン5匹までは一人でも充分に対応可能だろう。


 町に行くと、『冒険者』なる職業の人々が居る。

 強さ順にF~Sランクまで分かれていて、Fランクであればゴブリン一匹といい勝負。

 Eランクならスライム一匹といい勝負。 

 Dランクならゴブリン三匹は余裕。

 Cランクであればゴブリン10匹以上相手でも普通に勝つことが出来る。

 と、いった具合に強さ分けされている。


 そして、今のエドの力であれば、冒険者ならCランクぐらいの実力はあるだろう。

 神託を受けたばかりの少年とは思えないほどの実力だ。

 もし彼が王都に居たならば、神童としてもてはやされていたことだろう。


 だが、彼は田舎者の虫取り少年である。

 村人達も、彼の強さを知っている人は少ないのでエドはこれぐらいは普通だと思っているのだ。

 

「これで7匹。あと3~5匹は居るだろうね」


『まだ居るのー?沢山居るんだねぇ』


 ローチがパタパタと飛んでまた肩に乗っかってくる、その時。


――ヒュンッ!


「何っっ!?」


 洞窟の奥から弓が飛んできた。

 マズいな、これは上位種だ。


「ゴブウウゥゥゥ」


 弓を構えたゴブリンが離れたところに立って此方を狙っている。


『ゴブリンアーチャー』。

 ゴブリンが一段階進化した種類だ。

 これらの種類では、全体的にステータスが少し延びた『ホブゴブリン』。

 攻撃特化の『ゴブリンソルジャー』。

 守り特化の『ゴブリンシールダー』。

 魔法特化の『ゴブリンシャーマン』。

 そして遠距離戦特化の『ゴブリンアーチャー』だ。


 まさかこんな小さな巣穴に上位種が居るなんて思わなかった。

 思ったよりもこの巣穴は危険だったかもしれない。


「ローチ、飛んでくる矢をお願い。一気に攻めるよ!」


『りょうかぁい!』


 そう言って虫取り槍を構えるとゴブリンアーチャーに向かって飛び出していく。

 ヒュンヒュンと矢が飛んでくるが、肩に乗っているローチによって悉くが撃ち落とされる。


「ゴブッ!?ゴブゥ!??」


 焦るゴブリンアーチャー。

 と、そこにゴブリンアーチャーを守るように、洞窟の陰からゴブリンシールダーが現れた。どうやら一体だけじゃなく沢山居るらしい。

 ゴブリンシールダーは持っている大盾を構えて防御の体勢をとった。


「ゴブウウウウウウウウ!!」


「邪魔だああああああああ!!!」


 ゴブリンアーチャーに休ませる暇を与える訳にはいかない。

 一気に体勢を低くして防御の外から虫取り槍で打ち抜くエド。

 滑り込むように放たれた槍はゴブリンシールダーの盾を避けてその心臓へと突き刺さる。


「ゴブアアアアアア!???」


 盾を構えていたというのに予想外の致命傷。

 ゴブリンシールダーは断末魔の悲鳴を上げると、ぐったりと倒れて動かなくなる。


「ゴ、ゴブウアアアアアア!!」


 怒りのゴブリンアーチャー。

 矢を滅多撃ちしてくるが、ローチの風魔法に防がれてそれは届かない。


 エドは槍に刺さったゴブリンシールダーを槍を思いっきり振ってゴブリンアーチャーへと投げつける。


「ゴブッ!?ゴッゴブブブ!??」


 ゴブリンシールダーの死体の下敷きになったゴブリンアーチャーはそれから逃れようともがくが、


――ザクッ


「ゴブアアアアアア!!!!」


「鈍いよ」


 ゴブリンアーチャーの頭に虫取り槍が突き刺さる。

 ゴブリンは生命力が高い。

 刺したのが心臓なら一撃で死んだだろうが、刺したのは頭である。

 ゴブリンアーチャーを確実に殺るために、二回、三回と槍を捻る。


――ぐちゃっ、ぬちゃっ


「ゴッ、プアア、ブゴッ、ブププブゴォ」


 槍が捻られる度に奇声を上げるゴブリンアーチャー。

 しばらく奇声を上げ続けた後に、ソレは動かなくなった。


【魔物の群れを討伐】

【経験値を480獲得しました】

【レベルが上昇しました】

【Lv.18→Lv.20】


「ふぅ、上位主も割となんとかなったね」


『ますたぁ強いの!凄いの!かっこいいの!』


「そう?結構グロテスクな事してただけだと思うんだけど。ローチは嬉しいこと言ってくれるねぇ」


 肩の上でぴょんぴょん跳ねるローチ。

 いちいち動作が可愛いゴキブリをエドは指先でナデナデする。


「しっかしこの巣穴、なんだか厄介そうだなぁ。一度村に帰って他の大人達に協力を要請しようか」


 まだ巣穴の奥からは「ゴブゴブ」という鳴き声と沢山の足音がせまってきている。

 エドは全力で駆け出して、巣穴を後にした。












 ゴブリンの巣穴の奥深く。

 王の間にて。


「ゴブゴブゴブゥ!(王よ!緊急に御座います!)」


「ゴーブゥ。ゴブゴブゥゴブ(何だ?申してみよ)」


「ゴブッ!ゴブゥゴブゴブブブゴブゴブゴーブゴブゥ(はっ!ニンゲンの男が一人城に侵入し、同胞を9人殺していきました!)」


「ゴブゥゥ!ゴブッゴブゴブゴブゥゥッ!(何だとぉ!?貴様等、今すぐソイツを探して殺してこい!いいな!)」


「「「ゴブゥッ!!(はっ!!)」」」


 そうしてゴブリン達は森へと飛び出していった。

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