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王都到着

新キャラ。






「えと..........どちら様で?」


「酷いな、忘れるなんて。貴方は私の主だろう?」


「いや、しかし.........」


 目が覚めたら二人の美女と一人の美少女に囲まれていた。

 

 ローチと紫苑さんは分かる。

 昨日ちゃんと会ったからな。

 でももう一人がわからない。

 誰だっけこの人?


 青みがかった流れるような黒髪をポニーテールにした美女。

 歳は僕よりも少し年上ぐらいに見える。

 そして何より彼女は人間じゃない。


 凄い美女ではあるのだ。

 胸も大きいし腰のくびれもとてもセクシーな美女ではあるのだけれど背中から透明な羽が生えていたり、腕に甲殻が付いていたりと所々人間じゃない。

 図鑑で見たことのある【クインビー・エンプレス】にそっくりだ。




 【クインビー】.........?

 あれ..................?


「もしかして..........桜花?」


「気付くまで時間がかかったな主殿よ。まぁ無理もない。昨日は心此処に有らずといった雰囲気だったからな」


「ごめん桜花。全然気付かなかった........」


 そう謝ると彼女はニッと笑って『主殿には借りが出来ているからな。そんなに気にするな』と言った。

 いつの間に借りなんて作ったっけ?

 

 それはさておき。

 あれからローチと紫苑さんは朝ご飯の調達に森に入っていった。

 朝出て行くときローチは『朝ご飯はお魚がいい!』と言っていたのだけれど、



「くひっ♡くひひひひひっっ!

 悲鳴を聴かせてぇぇ♡もっとぉ、もっと苦しみなさぁぁぁいぃぃ!

 んんっッ!........はぁはぁ...........」


「紫苑さんなんか変だよー?」


 

 割とキャンプの近くからそんな声が聞こえてくるのでおそらく朝食は魔物肉になることだろう。

 確かああいう人のことを『ドS』って言うんだったよね。あれ?『女王様』だっけ?

 ゴリアテさんの奥さんの一人にそんな風に呼ばれてる人が居たと思うんだけど..........。

 そういえばゴリアテさんのハーレムって何人いるんだっけ?

 なんか元々冒険者だったゴリアテさんが仲間からハブられたのを切っ掛けに冒険者やめてからモテ始めたとか言ってたけど。奥さんの一人が確か『おっさんモノのテンプレなのよ』って言ってたな。

 てんぷれってなんだ?


「おーいどうした主殿ー?難しい顔をしているぞ?」


「...........てんぷれって、何だ?」


「.........さぁ?」


 二人してこてん、と首を傾げる。

 言葉って難しいな。


 そんなことをしていたら森の方から紫苑さんとローチが血塗れのジャイアントボアを引きずって歩いてきた。

 

 あ、やっぱり魔物肉なのね。


 僕と桜花は顔を見合わせると恍惚とした表情の紫苑さんを休ませて朝ご飯の準備を始めることにした。


 王都まであと少し。

 もうすぐアンリに会うことが出来る。

 彼女に言えなかった別れの言葉を今度こそちゃんと言うために。

















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







「着いたぞぉぉぉおおおおおお!!!」


 大声で叫ぶ少年に道行く人々がぎょっとした顔を向ける。

 

 しかし彼はそんなことを気にする様子もなく両拳を天に突き上げてぐっ、と伸びをした。




「あのクズ共が、俺を騙して無理矢理仲を引き裂きやがって。何が『お前は浮気されていた』だよ!

 ()()()()が浮気なんてするわけないだろッッ!」


 俺は怒っていた。

 村のクズ共に、そしてこの世界の神に。


 俺の幼馴染みで婚約者のフィーネがポッと出の勇者に奪われるなんて我慢ならない。


 もし俺が()()()()普通の少年ならば仕方が無いことなんだと我慢していただろう。

 だが俺は違う。

 俺はこの世界の人間であってそうでは無い。


 俺の名前はライル・リーデル。

 俺は俗に言う『転生者』だ。


 友人に勧められて読んだラノベにそういう設定のものがあったのを覚えているのでそれで間違いないだろう。


 記憶があったのは物心ついたころぐらいから。

 たしか三歳のころに自分は転生者だということに気付いていた。

 前世は日本に生まれて平々凡々とした人生を送っていた男で、高校生の時に割と衝撃的な最期を遂げた。

 

 まあ、だからと言ってどうこうすることも何もないのだから今度の人生は幸せかつ長生きにしようと思っていたところだったのだが、この人生で幼馴染みになって更に婚約者にまでなったフィーネがポッと出の勇者に取られた。

 ハイ、勇者ブッ殺~~♪


 しかも周りの村人達全員、俺やフィーネの両親も含む、に『お前はフィーネに浮気されていたんだ。フィーネはお忍びでこの村の近くまで来ていた勇者様と恋に落ちてそのまま王都へと向かった』と騙されてフィーネがいなくなってから四日は無駄に過ごしてしまった。

 よく考えればすぐにわかる話だったのに。


 だいたいフィーネは村からいなくなるその前日まで俺とずっと一緒にいたんだぞ?

 浮気なんてする暇あるかッッ!!

 それにまだつい最近婚約したばっかりなのに他の男をいきなり好きになるようなヤツがあるかっ!

 なんでこんな雑な嘘に騙されてたよ俺ッッ!!!


 結局俺は村の奴らをシメて全部吐かせた訳だが、その内容が酷いものだった。 



 その1

  

 フィーネは『剣聖』の職業を貰ったから俺との婚約を解消して勇者の嫁に行くことになった。


 この時点ではまだ俺の両親やフィーネの両親は『王都に伝えなければ何も問題ない』と反発してくれていた。

 しかし次が酷い。



 その2


 フィーネを大人しく勇者に差し出すなら教会本部から俺たちの村に三億ゼルが与えられ、更に『剣聖』を排出した村としても村の名前が売れるようになる、とウチの村の教会の神父に言われた。  

 ちなみにゼルは日本の円と同じように考えて良い。


 ここで俺の両親とフィーネの両親が寝返る。

 はい、クソ共デストロ~イ♪


 そして更に俺についてのものまであった。



 その3


 フィーネと引き離した後のライルは教会本部の若いシスターの中から見目が良い者を見繕って夫婦にさせる。

 ライルの持っている強力な回復魔法は教会の物として使用するべきである。

 尚、これに成功した場合も報酬として村に一億ゼル。そして俺の両親に五千万ゼルが与えられる。

 

 ファァァァァァッ●!!!!

 

 教会マジで腐ってやがるッッ!

 フィーネと無理矢理引き離されたのも腹が立つが、そうなるようなルールを作った女神を崇めてる教会のクズ共も気に食わんッ!

 ●●●(ピー)だ!あいつ等も勇者も女神も全員●●●(ピー)だクソがッッ!



 そんな訳で完全にキレた俺は村の神父と村長を拘束して、半殺しにしては回復させるを繰り返して奴らの精神をボロッボロにしたあとに村を捨てて出て来た。

 あと村を出る直前にあのクソ神父と浮気してた村人の女共のリストを作ってばらまいてやった。

 あの神父調べてみたらマジでクズだったからな。

 金と酒と女のことしか考えてない阿呆だったからな。

 村から出て街道を歩き始めたときに村の中から村人の男の怒声が沢山聞こえてきたけどあとはシ~ラネ。

 俺はもう知らねーから勝手にしろって感じだ。



「さて、魔導学院は何処にあんのかな」


 そして俺が王都に来た理由は単純明快。

 『フィーネを勇者から取り返す』為にここまで来たのだ!

 

 もしフィーネの心が勇者に傾いてしまっているようなら考えるが、今のところ俺はフィーネを勇者から取り返すと決めて行動している。

 俺が転生したおかげが生まれたときから持っていた強力な『回復能力』があれば学院の試験もパスできるだろう。

 正確にはこの回復能力は魔法の類とは別なのだが、保有魔力もかなりあるのでそこらへんは誤魔化せると思う。

 

 もし勇者がゲス野郎なら...............一応勇者を倒す算段も立てている。

 回復能力をフルに使って無限ゾンビでブッ倒してやる。

 気分はまさに『やっちゃえ!バーサー●ー!』だ。

 対金ぴか戦の時のバー●ーカーみたいにならなきゃ良いけど............。

 あれ?フラグ.........?


 嫌な想像を振り払うように頭をぶんぶん振る。

 周りからの視線が更に突き刺さる。

 痛い痛い。


「............はぁ。とりあえず学院探すかぁ」


 門の前で百面相し続けるのもアレなので学院を探して歩くことにした。

 王都は広いからなぁ、大きいって聞いてる学院探すのも大変そうだ。



「見ろよこれ、魔王からのメッセージだってよ」

「うへぇぇ、怖ぇなぁ魔王」

「あー?でも勇者様が倒してくれるんだろー?」

「その勇者様もあんましいい噂聞かねぇけどなぁ」

「へぇ?学院の方で何か問題が起きてるなんてことは聞かないけどなぁ」

「問題が何一つ起きてねぇってのが不気味なんだよ。あの勇者の交友関係とかの噂聞いてるとな」

「お前どっからそんな情報を..........」


 立て看板の前に二人の男が立って何かを話していた。

 俺も気になったのでその看板を見てみた。

 すると、






『三年間待ってやる!命乞いをしろ!』


                魔王より









「(長ッッ!待ち時間長ッッ!!)」



 思わずずっこけそうになった。

 しかもこの魔王絶対転生者か何かだってこれ。

 だってこいつジ●リネタ知ってるもん、これ完全にムス●だもん。

 魔王討伐とか要らなそうだなこれ~。


 正直もう一つのこの男達が話してた内容の方が気になる。

 そうだな、聞いてみるか。


「あのー」


「ん?どうしたボウズ?」


「勇者について聞きたいんですけど」


「あー!やっぱりか!?お前も気になるよなぁ。

 絶対あの勇者には裏がありそうだもんなぁ!」


 男は上機嫌で話し始めてくれた。 

 出来るだけ勇者(てき)の情報が知りたい俺からすればきっと彼の教えてくれる情報は有用なものになるだろう。

 期待が高まる。


「まずはな、今回の勇者はいつもの勇者よりも強力な『真の勇者』って呼ばれてる勇者らしいんだよ。

 んで、そいつは『聖装展開(モード・イージス)』っていうすげぇ強い能力が使えるらしいんだ。どんなもんかはよくは知らないけどな」


「モード........イージス..........」


「ああ、でもよ、それだけならまだ良かったんだ。勇者が強いってことはそれだけ魔王との戦いでも安心出来るってことだからな。

 だけどあの勇者は何か怪しいんだ。

 噂と行動が矛盾している」


「っ!それはどういう........」


「まあまあ落ち着けボウズ。

 その勇者に関する噂なんだがな、どうやらあの勇者は度を超した『女好き』で今までに何人もの学院の女子生徒や身の回りの世話をしてくれてるメイドに手を出しまくってるらしいんだ。既に三人の婚約者が居るってのにな。

 まあその婚約者ってのも内二人は元々ほかの婚約者がいて残りの一人も他に好きな男が居たって話だけどな。流石に今回の女神様の嫁選びは大失敗もいいとこだよなぁ。

 あっ、俺がこんなこと言ったことは誰にも言うなよ?教会が怖いからな」


「はいっ、それで続きは?」


 頭を縦にブンブン振って先を促す。

 おじさんは呆れたように笑うとすぐに話を続けてくれた。


「へへっ、んでその『女好き』な勇者様なんだがこんな沢山の女の子に手を出してちゃあ王様が黙ってるはず無いだろ?

 普通だったらとっくに異世界に送り返してる所だ。でも王様はそれをしてねぇ。ってことは勇者は噂通りのことはしてないってことになる筈なんだがそれがどうもおかしい。

 教会本部と学院の動きもおかしくなってきてるらしいんだよ。特に上層部がな。

 どうも勇者の良いようになるように各所に圧力をかけてきてるらしい。勇者が何かしたのか疑いたくなるところだけどその勇者が何かしたっていう証拠も無いから何も出来ない。

 ってのが一部で密かに噂されてる勇者様の話だ。

 どうだ?為になったか?」


「はい..........はい!!」


「お、おう、そうか。そりゃ良かったぜ」


 成る程、勇者はクズだという可能性がかなり出て来たぞ。

 実際に勇者を見るまで結果はわからないが、この話でだいぶ勇者の人物像が見えてきた気がする。

 噂通りなら即刻デストロイだな。

 『真の勇者』がどれぐらい強いのかはわからないから勝てるかはわかんないけど。

 

「そういやボウズはそんな大量の荷物持って、学院生希望か?」


「ええ、今学院の場所を探してる所です」


「そんなら町の東側だな。東側の中央に学院がある、っつーか東側の地区は殆ど学院の敷地だから行けばすぐわかるぜ」


「本当ですか、ありがとうございます!」


「おう!試験頑張れよ!」


 俺は気の良いおじさんに別れを告げると学院があると言われた方向に歩いていった。

 

 行くぞ!いざ勇者デストロイだッッ!


「うおおおおおーーーーッッ!」


 婚約者を取られた事でひたすら下がり続けるテンションを無理矢理上げつつ、気合いを入れる為に拳を天に突き出して歩く。

 周りからの視線がまたざくざくと突き刺さった。



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








「おおおお..............でっけぇ.........」


『大きいねぇ........』


『んー、そうかしらぁ?』


「紫苑殿がそう思うのは本来の姿が大きすぎるからだと思うぞ?」


 着いた。

 やっと王都まで着いたのだ。


 今僕たちは王都に入るために門の前に並んで順番を待っている。  

 ローチと紫苑には虫の姿に戻って貰って二人とも肩と頭の上に乗っかっている。

 桜花は僕と二人で荷物持ちだ。

 桜花は『力』がかなり高かったからね。


「よし、次の者前へ!ってうわぁぁ!?」


「あ、どうも」


「な、なんだその隣に入る魔物はぁぁっ!」


「はぁ、ローチ殿の様に人化出来るなら良かったが私は魔物だからなぁ。

 ほれ、門番殿()()を見ろ」


 危険な魔物である桜花を目にして落ち着きを失ってしまっている門番に桜花は首に巻かれたチョーカーを見せる。

 お手製ではあるけれど、一応これで使役魔物だということはわかってくれるだろう。


「え?へ、あ..........し、使役魔物なのですか?」


「ええ、僕の職業は『召喚士』ですので」


「な、成る程。理解いたしました。これほどの魔物を連れているとなるとやはり学院の試験を受けに来たといったところですか.......................。

 ああ、申し訳ありません。気を取り直して、まずは犯罪歴のチェックを致しますので此方の水晶球に手を」


 コホン、と咳払いをして落ち着きをなんとか取り戻した門番さん。

 言われたとおりに水晶球に手を当てるが、犯罪歴など有るわけもないのですんなりOKが出る。

 身分証明も村の教会で貰ったものがあるので問題ない。

 あの人神父なのに村の庶務とかも色々こなしてくれてるからな。田舎過ぎて教会の仕事が殆ど無いってのもあるけど。


「はい、確認できましたので中へどうぞ!」


 門番さんがニッコリと笑うと彼の後ろで槍を交差させていた二人の門番さんが道をあける。

 

 遂に、僕たちは王都に到着した。

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